特 集
こころの領域
1990年代の韓国美術(2)
■ペー・ビョンウ
松の写真によるインスタレーションの連作。作品と作者とのイメージが合致しているように思う。当展覧会の作者の中で最年長者45才、都会的というより純朴な人柄を感じる地方出身者という印象だ。モノクロ写真の松の木立群に囲まれた会場に足を踏み入れると一瞬、時が止まっているかのような静かな安堵感を覚える。隣の展示室で見られるホン・スンドの作品のような明るく躍動感あふれた表現とは違う。
ペー・ビョンウ「<出会いと離別>(松シリーズ)より」1985-95年 撮影:安齋重男(c)
しかし、次の瞬間、松を見続けているうちにその見慣れた形態が消失し、霊的な妖気が漂う存在物として迫ってくるようで、非常に緊張してしまう。なぜだろう。単に松を盆栽のように形式的な美しさとして見るのではなく、その松に内在する力強い生命感とかに圧倒されてしまうからなのか。私にとって松と言えば、これまで松並木の風景とかゴルフプレイをさえぎる障害物程度の感じだった。写真とはいえ、これほど松を見続けた経験はなかった。
彼は、松を、天と人間を結ぶ媒介であると言っている。天上的な超越の存在と地上的ともいえる人間に近い存在としての両面を持つ松を見せてくれている。作品には人間は出てこないけれど、自然物を通して現代社会における私達人間の存在について深く考えさせてくれる展示ではないか。そんなことを作品の松が無言で私に迫るように問いかけているのかもしれない。(奥野)
*本ページの内容は、1995年11月1日発行当時のものです。
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