水戸芸術館―新しい芸術の空間
水戸芸術館長 吉田秀和
水戸市の市制100周年と芸術館のシンボルとして空に向かって伸びてゆく
塔は、私たちの生活に根ざしながら人間のさまざまな理想、望み、憧れ、夢に
形を与え、それを通して人生をますます豊かで高いものにするという芸術の在
り方を象徴するものです。はじめて模型を見た時、私はこの塔の形が示唆して
いる無限に伸びてゆく可能性に魅力を感じ、建物全体を「芸術の塔」として総
括する考えを持ちました。
建物が完成したのち広場から出発して、ちょっとした高低差の繰り返される
調子、三角や丸、またいろいろな線の力強い組み合わせ、そしてタイルの壁面
が日に照らされて織りなす微妙な陰影、正面中央の水の戯れ、こういったもの
を一歩一歩たしかめてゆくうちに私はヴァレリ−の「完成された建築物は人間
の生存が内に含むさまざまな意図や創造や知識の和を一望のもとに示してくれ
ます。それは人間の意と知と力との合作を白日下に照らしだす。」という言葉
を思い出しました。
エントランスホール
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建物の内部に入ると、まずエントランスホ−ルがあります。ここには、天井
からの明かりとりから入ってくるほのかな光、下が四角で上が丸い柱の列があ
って、そこにパイプオルガンが加わって、気品ある落ちついた空間を作ってい
ます。劇場は入った瞬間から強い緊張感が伝わるような造りで、芸術総監督鈴
木忠志氏の好みとコンセプトが感じられます。
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また、コンサ−トホ−ルは、う
れしいことに、とても響きの良い会場になりました。ここに座って音楽を聴く
と、強い音も弱い音も適度なふくらみをもって響きながら自然に流れるのをき
くことができます。そしてギャラリ−はそれぞれ違った幅と長さと高さとをも
った区画の組み合わせの巧妙さ、それから考え抜かれた自然と人工の光のコン
トロ−ルによって、いろいろな美術作品の展示に最適の場となっています。
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コンサートホール
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磯崎氏の天才的な設計によって建てられた
この建物 は、尽きせぬ魅力と可能
性を持っているように思われます。芸術館はこのすばらしい施設を十分に生か
しながら、様々な事業の運営を行っていこうと思っています。
芸術館は
水戸市長佐川一信氏の卓越した発想と実行力があってはじめて生ま
れたものです。日本では、この種の施設は建物ができてもその後の事業の運営
という点で必ずしも満足できないものがなくはないといわれておりますが、こ
の施設が、今後水戸市民の皆さん、ひいては日本全体の人たちが芸術を鑑賞し
たり、あるいは自分で音楽や演劇や美術の創造活動をくり広げるような場所と
なったならば、どんなにいいことでしょう。私たち芸術館で働くもの一同とし
ては、この方向に向かって懸命に努力したいと思っています。
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