館長挨拶

水戸芸術館 館長 吉田 秀和

東日本大震災の被災に寄せて

 東日本大震災により被災された皆様方に心よりお見舞い申し上げます。
 今度の災害の全体として、僕が持った印象は、皆が、あんなに大きな津波がきて、あんな巨大な地震が来るっていうのは想定外だって言ったけど、僕はもちろんそうなんだけど、でも日本にも何人か学者もいるでしょうしね、それから想定外って言ったって、あれだけの危険なエネルギーの源泉を、日本のこの狭い国土に、やたらと建てることについては、やっぱり国民の生命と財産の安全について責任を持った上でした仕事だろうに、想定外っていうことで間に合わせるような気風を見ていると、その人たちを責めるっていうよりも、やっぱり僕たち日本人全体として、想像力が、貧弱だったのかなと思います。
 僕は、芸術の仕事の1つは、目の前に見えているものを契機として、あるいは目に見えないものを契機として、ものごとを想像する力、そしてそこに、今までなかったものをこしらえることだと思う。それは明日になったら無くなるかもしれないけど、誰も夢見たことのないようなものを作って、一瞬間でもいいから出現させる、それが芸術の根本的な仕事の重大な1つだと思うんですね。だから、原子力発電所の仕事について想定外だって言われること、それは芸術に関する仕事をしている僕たちにとっても、本当はひとごとじゃないんです。
 今までの20年間に、水戸芸術館が果たした仕事っていうのは、僕はそれなりに評価すべきものがあったと思う。けれども、もう少し先へ行くには、こういうことがあり得るんじゃないかなということを想像する。つまり、さっきの、想定外の貧しさっていうのを、人の欠点としてだけつかまえるのではなくて、これからは、もっと豊かなものを培うための仕事をしなければならない。
そして、まずは近いところから、水戸の市民に、芸術館は何をやってあげられるだろうか、そのことについても、考えていかなくてはならない。そしてその実現に向かって進んでいかなくてはならないと思うのです。

※これは、2011年4月1日に会議場で行われた水戸芸術館職員に向けた話からまとめたものです。