流れる水はにごらない


森脇裕之 (アーティスト)

 


エレクトロニクスの働きは、水の流れにおきかえて考えることができるという。

今回の「Geo-Sphere」の構想では、実はその「水」のことについて考えていた。

雲から雨になり、川をへて海に流れついた後にまた雲になる。大きな循環の中で、

絶えず「水」はめぐっている。「水」は地球上でのいわゆるメディアなのである。

一方、現在話題になっているインターネット通信の網の目が地球全体をおおうように接

続され、日夜さまざまな情報がかけめぐっているさまをてらしあわせて想像してみたと

き、そこにはまた情報の循環する架空上のもう一つの地球の姿を意識することができる

かもしれない。しかし、われわれは実際に手に触れてみることのできる水の流れにたた

ずみながら、地球の大地を感じ取れるように、電子世界の情報のWebをかんじることが

できるであろうか。

そのように情報をリアルな体験として実感できるモデルをつくってみたかった。

「Geo-Sphere」の場合、多数配置されたプリント基板上のスイッチは情報の発信を意味

する。スイッチが押されたら、その刺激を周囲の基板で受け止め、さらに連鎖反応式に

次々と伝えてゆく。全く同種のプリント基板が多数集まって全体を形づくっている。ひ

とつひとつの細胞はとりたてて意味を持たないが、それらがつながりあう中で成立する

構造体が見えてくる。

われわれがそこに「情報体」の存在を認識したとき、手にとってみることのできない

「 何か」を手に入れた気分になるはずである。ドーム内の6000個のまたたく光の流れに

よって電気信号が視覚化され、光の情報空間(Sphere)につつまれるのである。

そして「何か」とは関係性を示すものである以上、機能していなければ消え去るものに

ちがいない。生きている情報が「情報体」を形成するとき、そこに立ち現れてくる、リ

アルとバーチャルを縦断した「何か」を手に入れたいと思うのである。

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