写真に寄せて

もう昨年のことになってしまいましたが、9月の初めにヴェネチアビエンナーレを見て来ました。

今回のビエンナーレでは、水戸芸術館現代美術ギャラリー芸術監督の逢坂さんが日本館のコミッショナーをなさっています。 5月には、友の会でビエンナーレの開幕を見学に行くツアーが企画されました。 私も、ぜひそのツアーに参加して、逢坂さんを応援しに行きたかったのですが、 仕事の都合で、どうしても日程が合いません。 残念に思っていたところ、8月末にルーマニアへ学会発表に行く事になりましたので、帰りにヴェネチアへ寄って、ビエンナーレを見に行くことに決めました。

行ってみると、ヴェネチアではあちこちにビエンナーレの広告があり、街全体を挙げてサポートしていることを改めて感じました。 この広告が、なかなかヴェネチアの古い建物にマッチしています。 中でも、有名なリアルト橋から下がる幕、これは絵になっていますよね。 写真はヴァポレット(水上バス)の船尾から撮りました。

ヴェネチアは初めてですから、街を観光しながら、ビエンナーレには半日の予定を組んで出かけました。
(でも、これでは全然足りず、メインのジャルディーノ会場を見ただけで、 もう一つの大きな会場アルセナールは見ずじまい。 面白い作品をたくさん見逃して、残念でした)。 会場へは、水上バスのヴァポレットで。 停留所「ジャルディーノ」のすぐ目の前がジャルディーノ公園で、その中がビエンナーレのメイン会場です。 ここはヴェネチア本島の南東の端にあたり、この公園だけは木が茂っています。

ご存知のようにヴェネチアは海に浮かぶ人工の島で、 街には緑が全然ありませんが、サンマルコ広場の鐘楼から眺めると、ここだけ緑なのがはっきりと判ります。 入場券を買って会場に入ると、正面と右手とにL字型に通りがのびて、それに沿ってパビリオンが建っています。

なにはともあれ、逢坂コミッショナーの日本館へ。
日本館は右手の道の中程、少し段差があるところにあるグレーの建物で、コンクリートの板によるコンポジション、といった感じでしょうか。
二階建てに見えますが、下は本来部屋でも何でもないところで、例年苦労してふさぐ上の床の中央の穴を、逆に明かり取りに使うという、うまいアイディアで展示をしていたとのこと。
でも、言われるまではずっと二階建てだと思っていました。 全く違和感がありませんでしたから。

入ると写真の作品。大阪球場住宅展示場、これは横から見ると 球場のスタンド越しに、ニョキニョキ屋根が生えているように見えたのを思い出して笑ってしまいました。
上の部屋は、写真でも紹介されていた大きなMのオブジェが建ち、透明で小さなMが周囲にぐるりとならんでキラキラしているのが印象的でした。

それから他の館を色々見て回りましたが、個人的には、ヴェネチアの船着き場の周りの風景を使ったビデオ作品が一つ記憶に残りました。 風景と言っても細いすき間からローアングルで撮ったような、何が映っているのかよく分からない画面が続きます。 いい加減飽きてきた頃に、画面が水面に移動して、みるみる内に不思議な縞のまだら模様が画面をおおったかと思うと、自分の視界から、やがて頭の中まで模様で埋め尽くされた感じになりました。 どうも、集中して考え事をすることが多いせいか、こういった頭の中まで埋め尽くされるようなものを見ると、リフレッシュされる気がします。 シャワーを浴びている感じ、といったところでしょうか。 その後、注意して運河の水面を眺めると時折ふっと縞模様が見えて、ああ、これだったのか、と思いました。

現代美術の作品を見ると、作家の発想、見る目に驚き、感心します。 それを、作品を通して形にする力、エネルギーにも感嘆します。
展覧会で面白い作品に出会うと、見て感じて、立止まって考えて、驚き感心し共感する。 そして、見終わるとエネルギーをもらったような感じがする。
これが私にとっての、現代美術を見る楽しみでしょうか。
しかし、こんな楽しみ方が出来るようになったのも、水戸芸術館のギャラリーで展覧会を見るようになってからです。 だから現代美術ギャラリーの展覧会をいつも楽しみにしていますし、目を開いてくれた芸術館には、本当に感謝しています。 これからも、逢坂さんを始めとする学芸員の方々の企画を楽しみに、ずっと応援していきたいと思っています。

2002年 1月

下村 勝孝(茨城大学理学部助教授・解析学)




la Biennale di Venezia
ファースト&スロウ
日本館コミッショナー:逢坂恵理子(水戸芸術館現代美術センター芸術監督)
第49回ヴェネチア・ビエンナーレ 日本館 2001概要




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