現代美術ギャラリー/現代美術センター(水戸芸術館美術部門)
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「日本ゼロ年」展
11月20日(土)〜2000年1月23日(日)

「日本ゼロ年」に向けて -- 椹木 野衣(さわらぎ のい、美術評論家)

「日本ゼロ年」の〈ゼロ〉は、既成の枠組みをリセットすることを意味しています。 単刀直入にいって、ここでの「既成の枠組み」とは、 日本における「現代美術」(ないしは「現代アート」)のことです。 いまでも、「現代美術の…」といった展覧会は頻繁に目につきます。 しかし、そこで使われている「現代美術」という名称がいったいなにを指し、 そもそもいつごろから使われるようになったかについては、さまざまな解釈こそあれ、 あらためて問われることはありません。もちろん、本展が開かれる場所も、 「現代美術センター」であることにはかわりません。にもかかわらずここで、 あえて、この「枠組み」そのものを問おうとしていることには、わけがあります。 ひとつには、「現代美術」という枠組みが今日なお、本当に有効でありうるのかどうか、 ということ。そしてまた、もし有効でないとしたら、それはなぜなのか。 また、そうだとして、それでは「現代美術」にかわって、どのような考え方を採用するべきなのか?

これらのことを考えるために、ここでは、戦後の日本の美術を考えるにあたって、 いくつかの仮説を採用します。まず第一に、「戦後」という時間軸の中で、 1955年と1968年、それから1990年に大きな切断面があるということです。 1955年は、俗に言う「55年体制」が確立された年にあたり、 それは、敗戦国であった日本が国際社会への復帰を完了すると同時に、 冷戦構造における「西側」の「世界」に組み込まれたことを意味します。 「現代美術」という言葉が「世界」や「国際性」といった言葉と入り交じりながら、 人々の口にのぼり始めたのも、このころのことだと思われます。 つまり、「現代美術」という枠組みを支えているのは、ひとつには、 戦後の国際社会における冷戦のイデオロギーであることが考えられます。 こうした意味での「現代美術」は、1968年前後に起こった新左翼運動の敗退を期に決定的なものとなり、 社会的地平から自立した領域に閉じこもることによって、今日に至るまで数々の制度に支えられながら、 「既成の枠組み」をかたちづくりました。

けれども、冷戦は、1990年前後に起こったベルリンの壁の崩壊やソ連邦の消滅を受けて、 短期間のうちに解体してしまいました。そしてそれにともない、 政治や経済をはじめとする国際社会の再編成の中で、日本の社会は大きく揺らいでおり、 それにともない、美術を語る道具立てや作品をめぐる風景もまた、大きく変化しています。 本展は、すでに示した理由から、そうした変化をなお、 「現代美術」の一動向ないしは歴史的段階として括ることはしません。 それは、より大きな構造変化に伴う、「現代美術」なき世界へと、わたしたちが突入しつつあることを意味するのではないでしょうか。

以上のような観点にたって、「日本ゼロ年」では、 「現代美術」が暗黙のうちに採用してきたいくつかの前提をリセットすることを提案します。 ひとつには、「現代美術」の自立性や、それを支えてきた既成の美術史、 作品が発表されるコンテキストや受容層といったものをあらかじめ前提とせず、 あらゆるジャンルで全方位的に活動してきた(しうる)作家に焦点を当てる、 ということ。もうひとつには、ジャンル固有の歴史的発展や現代美術の純粋性を前提としない以上、 そこでは、美術とデザインとサブカルチャーとを問わず、 あらゆる様式はたがいに等価なものとみなされ、「様々なる意匠」として自由にサンプリングされ、 リミックスされる、ということ。また、こうしたことを可能とする「構造変化」があったとして、 こうした変化に下部構造的に規定されるだけでなく、そのような変化をあらかじめ先取りし、 それにともなう混乱に、今後とも、あるモデルを提示しうる、ということ。

こうしたことを通じて、既成概念化した「現代美術」への拘泥とも、 冷戦崩壊以後の安易なグローバリズムへの参入とも異なる可能性を、 「日本」という言葉をキーに探ってみようというのが、本展のねらいです。

横尾忠則「宇宙蛍」1997年 ヤノベケンジ キリンプラザ大阪での個展風景 1998年


開館時間: 9:30〜18:30(入場は18:00まで)
休館日: 毎週月曜日(ただし1月10日は開館)、年末年始(12月27日〜1月3日)、1月11日(火)
入場料: 一般¥800 前売・団体20名以上¥600 中学生以下、65才以上、心身障害者の方は無料
企画: 椹木野衣(美術評論家)
出品作家: 会田 誠飴屋法水大竹伸朗岡本太郎小谷元彦できやよい東松照明成田 亨村上 隆
ヤノベケンジ横尾忠則

主催:財団法人水戸市芸術振興財団
助成: 財団法人花王芸術・科学財団
協賛: キリンビール株式会社トヨタ自動車株式会社
協力:井上兄弟社、 クツワ株式会社セイコーエプソン株式会社株式会社創夢
武松幸治 + E.P.A.、光平鉄工株式会社、有限会社モリタ鉄工


出品作品

第1室 岡本太郎

最晩年の彫刻「哄笑」(1994年、左画像、 岡本太郎記念館蔵)と、絵画「原始」(1958年)、「雷人」(未完)、他を展示します。 土壁製の「哄笑」は穴の開いたトンネルの形をしており、 観客が中をくぐることを想定して制作されました(残念ながら今回は、 保存上の理由で中に入ることはできません)。

小谷元彦 日本の近代木彫にも想を得た、新作の木彫作品を複数点、発表します。びっしりと文様に覆われた人物の横で、3メートルを超す高さから木の滝が音もなく流れます。
第2室 成田亨 60年代に始まった特撮テレビ番組「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の怪獣デザイン原画約100点を展示します。 作家の手により保管されてきた「レッドキング」「バルタン星人」「ジャミラ」など不滅の怪獣たちの貴重な原画が、公立の施設では初めて展示されます。
第3室 大竹伸朗

天井高の高い3室の空間を生かしたインスタレーションです。 拾い集めたゴミで表面を覆い尽くされた「網膜」(1991-93年)が上方でゆっくりと回転し、 そのまわりを新作が取り囲みます。屋外では、芸術館の建物の正面に、ネオン管が夜空に光る「宇和島駅」(1997年)の看板を掲げます。
*左画像は「イチローと2つの太陽 / 別府」1996年
第4室 できやよい フィンガー・プリントと細筆でびっしりと描き込まれた明るくポップな細密画と、 「まっさん」とよばれる紙粘土のオブジェで、空間を埋め尽くすインスタレーションを発表します。
第5室 会田誠 戦争画を取り上げ、さまざまなスタイルを援用して屏風絵に仕立てた既発表の「戦争画RETURNS」シリーズ5点(1995-6年)に、 新作を加えて、同シリーズの全貌を紹介します。

横尾忠則 コレクションしている滝のポストカード数千枚が、天井から流れ落ちる滝のように展示され、 異空間をつくり出します。裏見の滝を思わせる回廊には、滝をモチーフにしたテクナメーション作品と、 赤い色の絵画のシリーズから「星の子」(1996年)、「宇宙蛍」(1997年)などが並びます。
ワークショップ ヤノベケンジ 巨大シェルター「ブンカーブンカー」(1998年)を新ヴァージョンで見せる他、 史上最後の自販機「サヴァイヴァル・ガチャポン」(1998年)、 ガイガーカウンター付き「アトム・カー」(1998年)、 写真作品「アトムスーツ・プロジェクト」(1997-8年)を展示します。
第6室 東松照明 海岸にコンピュータ・チップのキャラクターを置いて撮影した「キャラクターP・終の住処」シリーズ(1998年)に撮り下ろしの新作を加え、 60点弱を展示します。すべてインクジェットによるプリントで、 長い廊下状の空間を生かした写真と音とのコラボレーションとなります。
第7室 村上隆 シャッターが開くとナイター用照明が目も眩むような強烈な光を放つ「シーブリーズ」(1992年)を、壁面のペインティングを含む新たなセッティングで見せるインスタレーションです。
ギャラリー内外 飴屋法水 新作を発表する予定です。



「日本ゼロ年」展展覧会カタログは、1月16日より、水戸芸術館内 ミュージアムショップ“コントルポアン” で販売開始、1月22日完売いたしましたが、皆様の強いご要望に支えられておかげさまで増刷がなりました。 多数のご要望をお寄せくださりありがとうございました。
増刷分のショップ販売を2月23日に開始いたしましたのでご利用ください。


価格 2,290円(税込)


*通信販売をご希望の方は、カタログ代金2,290円(税込)に、 送料310円を加えた2,600円と、「ゼロ年カタログ希望」のメモを、 下記ショップ宛に現金書留でお送りください。
〒310-0063 水戸市五軒町1-6-8 水戸芸術館コントルポアン 宛


増刷分もすべて完売いたしました。ありがとうございました。


関連企画

アーティスト・トーク
日時:11月21日(日)13:00〜17:00(12:30開場)
場所:水戸芸術館会議場
出演:大竹伸朗(13:00〜14:00)
東松照明(14:30〜15:30)
ヤノベケンジ(16:00〜17:00)
定員:80名(先着順、10月20日より電話予約受付Tel. 029-225-3555)
料金:一般500円、H.T.P.300円

村上隆&HIROPON FACTORY「最終回−ガチンコゼロ年−」
日時:11月28日(日)14:00〜16:30(13:30開場)
場所:水戸芸術館会議場
出演:村上隆、ミスター、真下義之(以上HIROPON FACTORY)、本橋康治(名古屋パルコギャラリー)
定員:80名(先着順、10月20日より電話予約受付Tel. 029-225-3555)
料金:一般500円、H.T.P.300円

水戸芸術館友の会第16回講演会「芸術と人生」
日時:12月4日(土)14:00〜15:30(13:30開場)
場所:水戸芸術館会議場
主催:水戸芸術館友の会
講師:横尾忠則
定員:80名(当日先着順)
料金:友の会会員無料、一般1000円

シンポジウム「日本・現代・美術」
日時:2000年1月16日(日)14:00〜17:00(13:30開場)
場所:水戸芸術館会議場
パネリスト:倉林靖(評論家)、白川昌生(美術家)、千葉成夫(美術評論家)、椹木野衣(美術評論家、「日本ゼロ年」企画者)
司会:水谷みつる(水戸芸術館現代美術センター学芸員)
定員:80名(先着順、10月20日より電話予約受付Tel. 029-225-3555)
料金:一般500円、H.T.P.300円

ヤノベケンジ・サヴァイヴァル・ガチャポン・プロジェクト
ヤノベケンジの出品作品「サヴァイヴァル・ガチャポン」は、200円を投入してサヴァイヴァル・グッズを購入できる自販機型作品です。本プロジェクトではこの販売用グッズを一般からも募集します。参加方法は、a. グッズを制作、持参して売り込みをする公開プレゼンテーション参加と、b. アイディアのみの参加、の2種類です。
参加・応募方法
a. 公開プレゼンテーション参加
参加者は自作のグッズを持参し、プレゼンテーションします。他の参加者も交えたディスカッションののち、ヤノベ氏との価格交渉が成立した場合には、グッズはその場でヤノベ氏に買い取られます。買い取られたグッズは、「サヴァイヴァル・ガチャポン」に投入され、やがてカプセルを購入する一般来館者の手に渡っていきます。
日時:12月11日(土)13:00〜16:30
場所:水戸芸術館現代美術ギャラリー・ホワイエ
ナビゲーター&バイヤー:ヤノベケンジ
参加者募集人数:15名程度(応募者多数の場合は選考になる可能性があります)
参加費:無料(ただし、展覧会入場料が必要になります)
応募方法:ガチャポン・プロジェクト募集チラシ裏面の応募欄に、グッズのアイディアを含む必要事項を記入の上、ファックスあるいは郵送でご応募ください。水戸芸術館エントランスホールでも受け付けます。
応募締め切り:11月28日(日)午後5時必着
選考通知:11月30日(月)に公開プレゼンテーション参加希望者全員に選考結果を発送します。
*公開プレゼンテーションは一般来館者も聴講できます(ただし、展覧会入場料が必要です)。
b. アイディア参加
キラリと光るアイディアは、上記の公開プレゼンテーションで紹介し、「日本ゼロ年」会場に掲示します。
応募方法:上記の公開プレゼンテーション応募方法と同じです。
応募締め切り:12月9日(木)
サヴァイヴァル・グッズ
直径6.5cmの球型カプセルに入る大きさの、自販機で販売可能なものに限ります。
カプセルは市販の200円硬貨用ガシャポン・カプセルと同じものを使用します。現物が必要な方には、10月20日(水)より、水戸芸術館エントランスホール・チケットカウンターで1個10円で販売します。


ギャラリー・トーク

ウィークエンド・ギャラリー・トーク
11月27日から、会期中の土曜・日曜の14:30より、ボランティアによるギャラリー・トークをおこないます。参加ご希望の方はギャラリー入口にお集まりください。 *都合により、中止となる場合があります。

子どものためのギャラリー・トーク
子どものためのギャラリー・トークをおこないます。日時についてはお問い合わせください。


クリテリオム41 小林秀雄 11月20日(土)〜12月19日(日)

クリテリオム42 高橋信行 12月25日(土)〜2000年1月23日(日)



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