水戸芸術館ACM劇場 (水戸芸術館演劇部門)
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平成17年度文化庁芸術拠点形成事業
ACM劇場プロデュース <現代劇作家の新作>
『La Cucaracha ラ・クカラチャ―ゴキブリの歌』 (作・演出:
長谷川裕久)
「稽古場から」 1 -- 水戸芸術館演劇部門学芸員 桜井 琢郎
6月3日の
日本の劇作家たち3『北京の幽霊』の初日に、ダンス・パートの稽古からスタートした今回の『ラ・クカラチャ』は、通常行なわれる「顔合わせ」をせずにスタートしました。
『北京の幽霊』に出演していた
紺谷昌充君が、全公演終了後に参加。
劇中で展開されるダンス・パートの稽古を、長谷川裕久が振り付けながら、台本を書きつつ、芝居の内容を説明しつつ、唐組の
鳥山昌克さん、
稲荷卓央さんの合流を待つ、
こんな感じの稽古が6月中旬まで。
唐組『鉛の兵隊』が 6月19日に楽日を迎えて・・・
6月27日の月曜日、ついに唐組の鳥山昌克さん、稲荷卓央さんが、『ラ・クカラチャ』の稽古に参加しました。
台本は、三分の二ほど渡されていて、「読み合わせ」が始まりました(その模様は
ホームページに写真が掲載されています)。
すでに戯曲化されている作品の稽古を、たとえばシェイクスピアやモリエールなどの古典や現代演劇の再演のための稽古をするのと違って、書き下ろしの新作を稽古する場合、入念な「読み合わせ」と「話し合い」が必要になってきます。
少なくとも長谷川裕久の現場では、この「話し合い」が非常に重要であって、立ち稽古に入る前には必ず、相当の時間をとって行なわれます。
というのも、今回の『ラ・クカラチャ』でもそうですが、長谷川裕久が自身の作品の背景に、必ずといっていいほど日本の歴史、とりわけ幕末から明治、そして戦後にかけて起こった事象をモチーフにとっていることがあげられます。
このへんの歴史認識や、考え方、そしてそこから何を舞台で見てもらいたいのか、それを役者と共有するための時間と考えてもらっていいと思います。
そこへ、その歴史に登場する人物たち、芝居の登場人物たちですが、彼らのキャラクターを、シーンごとに形象化していく作業を行なって、ようやく立ち稽古となるのです。
この間、約一週間。
途中で
宣伝写真(ホームページに掲載されています)の撮影を入れて・・・
7月4日、ついに残り三分の一の台本が渡され、本格的に立ち稽古がスタート。
6月の上旬に、すでに、舞台スタッフと話しあっていた舞台イメージを、今度は具体的に、その仕様について明確にしていき、本格的な準備にとりかかりました。
役者たちは、台詞を覚えつつ、立ち、そして悩み、時には再び話し合い、そんな時間が過ぎてゆく・・・
7月11日の朝、稽古は休みの日。私と長谷川は、東京の劇団唐組アトリエに向かっていました。カメラマンの佐川氏と一緒に。
公演パンフレットに掲載する、唐十郎氏と長谷川裕久の対談を収録するために。
この日は午後2時の約束でアトリエへ。8月の試演会のための稽古をやっていました。
唐十郎さんは、長谷川が本格的に劇作をするようになった96年頃からの作品をすべて観ていただいています。
この対談では、
『美貌の流星』から今回の『ラ・クカラチャ』にいたるまでの長谷川裕久の劇作法について、演出法、劇作家と演出家との関係、
そして俳優と観客についてなど、自身の作品の創作過程を振り返りながら、語っていただけました。
劇作家どうしの、貴重な対談を収録することができ、たいへん感激しております。
以下、その対談の一部を掲載します。
これまでの長谷川作品について喋ってきた唐さんが、今回の『ラ・クカラチャ』について言及してきて・・・
唐:でも、今度はメキシコでしょう。新選組の残党でしょう。
長谷川:ええ。土方が亡くなった後に相馬主計っていう最後の隊長がいまして、水戸の隣の笠間藩出身なんだそうですけど。
土方が亡くなって五稜郭がもうこれまでという時に、戦後処理のために頭になった人間、そんな人物です。
唐:その男は五稜郭にも参加してるの?
長谷川:参加してます。
唐:残党ですね。
長谷川:生き残り組ですね。
唐:その男が北海道のもっと奥地まで逃げ延びたってんじゃなくて・・・・・・、
長谷川:戦争が終わって政府軍に捕らえられて、新島に流されたらしいんです。
そこで寺子屋かなんかやって子供を教えて、それで二年ぐらいで赦免され東京に戻ってきたところで、切腹してしまうんです。ちょっと不思議な人なんですけど。
唐:その男を誰が演じるの?
長谷川:
稲荷さん。
唐:稲荷が演じるの! あの網走の男が。楽しみだね。
僕は、稲荷は先祖辿っていくと、新選組の残党じゃないかと思ってるの。相馬主計、その男の頭のなかのいろんな想念のゆらめきみたいなものが、窓口になるわけね、お客としては。
長谷川:それと鳥山さんの演じる外交官の役がそうですね。
自分が、榎本武揚以来ずっと外国を見てきた日本人なんだ、というような妄想の男ですね。
設定としては、相馬主計の息子が新選組の残党と一緒にアメリカに渡って、メキシコ革命に巻き込まれたらどうなるのか、そんな感じです。
唐:その息子が出てくるわけですね。
長谷川:その相馬主計と息子を稲荷さんが一人二役でや演ります。
辿っていくと自分が親になるというね。
唐:そういう役は初めてだね、稲荷は。
長谷川:外交官の鳥山さんも自分の記憶を辿っていくと、榎本武揚になって、五稜郭で二人で話をするというような。書くまで、メキシコ、メキシコと思ってたんですけど、
実際書いてみると、メキシコというよりは、やっぱり日本が舞台になっていく。
日本というものを際立たせる装置として、メキシコを選んでいたのかと思ったりして・・・・・。
メキシコを完全に描ききるということはできないですよね。
日本を描くバックグラウンドがメキシコだったりすると、違うものが見えてくる気はしました。
以上。ほんの一部です。
この対談は、公演当日、入場するお客様に、無料で配布させていただく公演パンフレットに、すべて掲載されます。
400字詰め原稿用紙約25枚分の対談です。ぜひ読んでください。
次回は、『ラ・クカラチャ』の物語と登場人物について、
「稽古場から」ご報告させていただきます。
本番まで、もう少し。ぜひ、観に来てくださいね。
それでは、また・・・
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2005年 7月17日に送信した内容を再編集して掲載しました。
「稽古場から」2
「稽古場から」3
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