水戸芸術館ACM劇場 (水戸芸術館演劇部門)
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平成17年度文化庁芸術拠点形成事業
ACM劇場プロデュース <現代劇作家の新作>
『La Cucaracha ラ・クカラチャ―ゴキブリの歌』 (作・演出:
長谷川裕久)
「稽古場から」 3 -- 水戸芸術館演劇部門学芸員 桜井 琢郎
撮影:佐川 智伯(Photo Style)
7月21日。衣裳が一部を除いてすべて完成しました。
前回の「稽古場から」で、舞台がメキシコと日本を渡ること数回、とお伝えしました。
しかも、それが一瞬のうちに、日本の人がメキシコの人に変わったりするのですが、そんな時に、一番大変なのが、衣裳なのかと。
音響、照明は、場面を変える際にイメージで変化させることは可能ですが、衣裳は基本的に「物」なので、かなり大変です。
今回は、同一の人物が、時間と空間によって変わっていくこともあり、単に役者の演技の補助的な役割だけではなくて、観客の視覚にダイレクトに訴えかけていくものが必要となってきます。
さらに、台本上の仕掛けと、演出が入ってからの仕掛けの部分を、実際に装置が入った舞台稽古で、本番用の衣裳を着て、練り上げていきます。
『ラ・クカラチャ』は、時間的に幕末から戦後までを扱った芝居ですが、単純に時代劇にあるようなコスチューム・プレイ物と言い切れない部分があります。
プランを立てる際には詳細な時代考証をした上で、観客が混乱をおこさないように、いい意味で、崩しています。
ここで、もう一度、物語をおさらいすると・・・
1874年に榎本武揚が青年エリート・メキシカンと「榎本殖民団」の密約を交わした後、GHQ占領下の1947年の戦後日本から物語がスタート。
劇中、五稜郭での戦争、西南戦争の抜刀隊のエピソードが入り、謎解きの1913年10月のメキシコでの出来事へ舞台は移行します。
映画で、これだけのシーンを撮るとなると、とんでもないバジェットとスケジュール管理が・・・。
様々な演出的な効果があるにせよ、演劇では、基本的に役者が、これらの時間や空間を舞台上で造形していくことになります。
自らがカメラマン、フィルム・エディターとなって、観客との臨場感を得るために、時間をかけて稽古し、創り上げていく。
ハリウッドの映画スターが、どんなに有名になっても、ほとんど自分のライフワークのように、必ず舞台をやりたがる理由はここにあると思います。
つまり、演劇は映画以上に、役者が作品の主体になりうるということです。
映画より演劇が優れているということではありませんよ。
そういった意味で、今回の作品は、まさに舞台、演劇の醍醐味。
役者のヤリどころ満載なのです。
装置、衣裳とそろってきて、稽古も午後 1時から午後10時まで、念入りに行なわれるのがこの時期。
台本の始めから終わりまでを、シーンごとに作っていって、ちょっとラフな通し稽古を目指します。
一方、この作品は、ダンスの稽古を先行してスタートしたと報告しましたが、そのダンス・パートも徐々に仕上がりを見せはじめました。
非常にシンプルな振付ですが、物語の所々に花を添える感じで、長谷川裕久扮する「死のマリアッチ」のダンサーとして、登場してきます。
お楽しみに・・・
7月23日、ついに通し稽古。
これまでに決定して、準備できているものはすべて揃えて、スタッフ総見のなか、やってみました。
書き下ろしの新作の場合、最初の通し稽古でのイメージを決めつけすぎると、本のなかにある様々な要素が見えなくなってしまいます。
あくまでも、この時点での結果と考えて、その後の稽古での飛躍や、変化を期待するように心掛けています。
7月24日。もう一度、通し稽古。いろんなことが見えてきました。
榎本武揚が仕掛けた殖民団の話がひとつの窓口になっていますが、見ていて、随分といろんなことが問われている気がします。これは、本番を見ていただいて・・・
「稽古場から」から「劇場で」
稽古を毎日客席側から見ている者として、この作品について、いろいろと報告してきました。
一番初めに長谷川から「メキシコの話を書きたい」と言われたのが、多分、2年前だったと思います。
本人のなかでは、マカロニ・ウエスタンや西部劇が大好きで、ずっとあたためていた話なのかもしれませんが、その時僕がすぐに頭に浮かんだのが、イーグルスの「ならず者」というアルバムです。
メキシコ=ならず者という安直な発想だったと思いますが、最近、平井堅がカバーした「デスペラード」という曲が入っているイーグルスのセカンド・アルバムです。
このアルバムは、彼らが自分たちの原点回帰というか、アメリカという国あるいはアメリカ人とはいかなるものなのか、という問いをたてて、コンセプト・アルバムのかたちで制作されたレコードです。
内容は、オクラホマのドゥーリン=ドルトン・ギャングのアウトロー伝説をベースに、アメリカ西部の歴史を辿って、一大ドラマが展開される構成で成り立っています。
すばらしい曲の目白押しで、「ホテル・カリフォルニア」にいたる前の彼らの代表作です。
このなかで、イーグルスのメンバーが、かつてのならず者の生き様や壮大なロマンを描くことで、現代という時代を逆照射することを狙ったのは明らかだと思います。
今という時代を描くために、自分たちの歴史を辿る。
しかし、なぜメキシコ? そんな疑問がずっとあったのですが、今回の『ラ・クカラチャ』の台本を渡されて、読んで、稽古を見て、ようやく、なんとなく理解できました。
劇作家として、今という時代に、日本という国、日本人を考えてみたかったのではないか。
メキシコという、日本にとって、ある意味ニュートラルな存在である国(日本が初めて平等条約を結んだ国は、メキシコである)を通して、客観的に描きたかったのではないでしょうか・・・。
「ラ・クカラチャ」の歌と一緒に、本番の「劇場で」お会いできることを楽しみにしています。
「稽古場から」1
「稽古場から」2
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