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ミニ・レクチャー
ピアノのための公開セミナー 講師:園田高弘
第7回 ペダルの使い方について 2000年1月15日(土)

こんばんは。今日は、ペダル奏法についてお話しすると言ったんですけれども、実際には一人ひとりその曲によっていろいろやっぱり使い分けがあるわけで、それは実践で会得するより方法ないんです。こうやって聞いたからってわかるもんでは決してないんです。

一番普通に考えると、音を持続させるためにペダルを踏むわけですね。どうして持続するかと言うと、ダンパー(ピアノ線の押さえ)が上がって、ポォーンと聞こえるわけですね。(ピアノで和音を弾く。)音だけを弾くと、この3つの音しか鳴らないんだけれども、そこでピアノ全体が響くというのは、倍音 があるからです。例えば、 (低いドを弾き、その音をおさえながら他の音を何個か弾いていく)―こうゆう音がみんな鳴っているいるはずなんですね。

昔ね、ドイツで犬を飼っていたんです。ダルマティーナ(=ダルメシアン)って、白いところにポツポツポツポツのらくろみたいに黒い点のあるのがいるでしょ?で、ピアノの下のところがどういう具合か気持ちいいらしくって、よく昼寝するんですよ。ピアノを弾きだすともちろんうるさいから、目を覚ますんだけれど、すぐ奇妙きてれつなウォーっていうような声を上げてね、一緒に歌いだすんです。犬は耳がすごく鋭敏ですからね、犬の耳っていうのはだいたい2万サイクル以上聞こえる。弾いている倍音が全部、聞こえるらしいんですね。で、やかましっくってしょうがないから、ヒィーヒィー言いだすわけ。そしてそのうちにゾロゾロゾロっと逃げちゃうんだけれども。つまり、ポォーンと一つの音を鳴らしただけでも、倍音の音がずうっと上に(重なって)聞こえているわけなんですね。人間の耳では、それほど鋭敏でないから、なかなか全部は聞こえません。

例えば、(上のドの音を静かにおさえて、下のドの音をポッと弾く。)これは聞こえるんですね。倍音の上の音を無音で押さえて、下の音をたたくとそれが共鳴している。で、ペダルを使うことによって、すべての倍音の音が豊かに聞こえるわけだ。だから、音を持続させるなんていうのはまったく初歩的な問題で、要するにペダルは音色の問題なわけです。

普通の人は音を持続するためだけにペダルを踏むんだって思っているでしょう。ところが、音を切る場合にも踏むんですよね。ポォーンと切るために。人間では、声ではね、ポォーンなんて簡単に言うけれど、ピアノでもってポォーンていう風に切るってことは、なかなか難しい。で、それを、音を切るときにも使う。

それから、簡単に踏むと言いましたけれどね、やっぱり踏み方があってですね、fのペダル、pのペダル、あるいはppのペダル、あるいはmfのペダル、つまり加減がある。これは、今こうやって話ししてたって、みなさんには絶対わからない。こうやって話すことは出来ても、やっぱり実際にやった人しかわからない。そのペダルのふみ方にも簡単に言って、f、p、mp、mf、それからpp、ff、まあ6つぐらいある。だから、それによって踏み方が違う。それと、ペダルはバネですからね、そーっ、と踏むのと、パッと踏むのでは、えらく違うっていうのはわかりますね。

上げる時もそうで、バタンっていって、音がパシッっと切れるみたいに上げるのは、これはもう一番下手な上げ方で、上げるときにすうーっと上げると、僕がよく説明するんですけれど、ドアがギーッっていうでしょ?そうゆう風に上げてごらんなさい、和音の終わりのところをそうゆう風に上げてごらんなさいって言うんだけれど。そうゆう踏み方、上げ方だけでも、いろいろ、はじめにパッと強く踏んでそれから強くする上げ方と、こうゆう風にだんだんに力をかけて、すっーと上げるというようにいろいろなやり方がありますね。

それから、拍の強調ですね、頭を強調する。あるいは、アーティキュレーションという、その文節って言うんでしょうかね、フレーズがあって一つ一ついろいろつながっていく、ペダルによって文節の頭を強調するやり方と、それから、簡単に言えば、スフォルツァンド、「バン」というのを強調するやり方と。それと、日本の人はみんな下手だけれども、バイブレーションみたいにターッと細かに、震わしていくやり方。いろいろな方法があるわけです。

で、これは聞いた話だけれども、リスト先生がね、ヨーロッパのピアニスト達を集めて、ワイマールだとかローマだとかブタベストだとか、いろいろ講座をしていて、あるピアニストがその講座を聞きに入っていったら、その時に、ペダルの23番目の使い方っていうのを説明してたって言うわけ。つまりその前に二十いくつのペダルの踏み方を彼は説明して、そして、その23番目からまた延々とやったんだそうです。

で、先生のは勘定しても、まあそんなにないから、半分ぐらいだっと思うんだけれど、これはみんな、曲に当てはめて、そうやって講座をすれば、一つの立派な講座になるでしょう。そしてそれを見たからって、盗み見たからといって、ピアニストがうまくなるわけでは、決してないけれども、一つのヒントを与えることはできる。

それと、倍音の効用というのはですね、一つの音を、低音を鳴らすとそれだけこう聞こえるわけでしょ?じゃあ低音を鳴らさないで、真ん中の音を押して、ペダルを踏んだ時には、さらにその音からの倍音が出るし、その下の倍音も聞こえるわけなんですね。人間の耳にはなかなか聞こえないですよ。だけど全体の響きとしては、そうやって音色が変わるわけです。

しかも、単音ではわからないけど、和声の構成音を同じ強さで押した時と、あるいは上の音を強く、真ん中の音を強くし、あるいは下の音を強く弾いた時、そういう和声の際立たせによって、響きがまったく変わるわけで、だからペダルは難しいんです。

どこからどこまでペダルを踏めっていうのは、記号で記すのは難しいので楽譜には書いていなですよね。ベートーヴェンでも、これはずっと踏みっぱなしにしてくれっていうところは書いてあるけれど、今の言った企業秘密みたいなことは絶対書いていない。フランスの楽譜にいたっては、ドビッシーなんてのは絶対書いていないですよ。「ああ、適当にやってくれ、もうそれができないのは音楽家じゃない」という形で、「ああ、もうどうでもいいよ」っていうような形で。だけど、それがどうでもいいんじゃなくてですね、それをどうやって踏んでいるのかなっていうのをみんなものすごく研究するわけです。

で、日本はね、こうゆうこともそうだけれども、はい、何かいいことしゃべれっていうんで、みんな待ち構えている。それではね、なかなか会得できない。やっぱり実際に、モーツァルトでもバッハでも、ベートーヴェンでもシューマンでも、ドビッシーでも演奏してみて、なるほどそうゆう風に、やっぱり使い分けなければいけないんだなってことを会得しなければだめです。



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