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ミニ・レクチャー
ピアノのための公開セミナー 講師:園田高弘
第9回 指使いについて 2000年2月12日(土)

今日出掛けに、原稿を持ってこなくちゃいけないと思って、靴を履きながら、わきへ置いて、まったくその通りで、そのまま忘れてきました(笑)。

今日は、指使いっていうことについて少しお話しようと思ったんです。ピアノを弾くからには、鍵盤を押すのに、指使いはいろいろ書いてあって、それで苦労するわけですね。で、考えてみれば、ピアノを弾くからにはある程度、手の大きさが必要なわけで。昔、先生はワイマールのリストの館に行った時に、2階のところに、リストの石膏の手が置いてあって。ものすごく大きいんですよね、ものすごく指が長いんです。先生もそんなに手が小さいほうじゃないんだけれども、先生よりも、少なくとも3センチぐらいはみんな、指が長いです。そして、大きいですね。だから、十度どころじゃなくて、十一度、十二度、もうとにかくドからファまで届いたっていうか、そんな話を聞いてる。作品から類推してもですね、十度の、(ピアノを弾いて説明する)これが全部弾けているんですね。だから、神様から与えられた、素晴らしい手だった。それ両手なんですね。タ〜ンタタタタタっていうのが、十度が全部、イ長調の十度ってのは一番、広くて大変、それが全部できた。まぁ、それはいい。

ショパンの手っていうのも見ましたけれど、ショパンの手も、非常に細い、華奢なんだけれど長いんですね。で、特に5の指が非常に長い。だから、例えば10の1なんていうのは楽だったんですね。ショパンのエチュードの10の1っていうのは、我々なかなか苦労して手首を横に移動させて弾くんだけれど、あんなことしなくてもスゥーッと弾けた。で、このごろは、二十歳ぐらいでソ連の男性とか、それからハンガリーの男性なんていうのは、みんなやっぱり手が大きくてですね、もう労せずしてダーッて弾くんですね、そういう人達にとっては指使いなんてのはどうでもよかった。私の先生のレオ・シロタも、指使いなんてどうでもいい、あぁそれも弾ける、あぁこれも弾ける、あぁそれでも弾ける、これでも弾けるって言うんですよ。それじゃあどれがいいんでしょうって言ったら、まぁお前は手が小さいからこのぐらいはいいんだろうなって書いてくれました。

で、そういう風にして、まぁ、あたしもだんだん大きくなっていったわけだけれども、今度は物心ついて、いろいろ楽曲を見るとですね、昔の人の曲には、指使いなんてまったく書かれてないですね、バロックもね。例えば、バッハにいたっても、 演奏上の指示が一つも書いていない。ダイナミックの表示もない。なんの指で弾こうと勝手だ。で、それを、現在のピアノで弾くために、いろいろな注釈本で、偉い先生達が、こうだ、あぁだって言って書いているわけです。ですから、本当はですね、あるところまではしょうがないんだけれど、それから先はどんな指使いで弾いたって、いいんですよ。

それとね、驚くことには、文献を見たら、初めは、親指使っていないんですね。それから小指もね、必要なオクターブはしょうがないから使うんだけれど、全部この、真ん中の2、3、4という指で、あるいは、5がたまに端の時に入る程度で。その指使いっていうのは、親指を使うっていうのは、下品だと思ったらしいのね。そして、しかも、指が他の指の上をくぐるとか、指と指を交わすとか、下をくぐらせるっていうのをやりだしたのは、だいぶ後の話。まぁ、さすがに、ショパンとかリストとかいうのは難しい曲だから、注釈本によってやっぱり指使いは、このほうがいい、あたしは、こういう特殊な指使いだって書いてありますけれどね。ベートーヴェンにいたったって、指使いなんて、ほとんど書いてないですよ。だから今やかましく言って、生徒がみんな苦労しているのは、その後の先生達のなになに流、なになに流って言うんで、指使いを書かれたことによるんだと思えばいい。

それと、音楽を弾く場合にアーティキュレーションっていうのが問題になりますね。音楽上の区切りですね。区切りっていうのは、どうも指使いと関係があったと考えていいんですね。つまり、バッハの場合なんかは、親指使ってないから、その2、3、4、あるいは5までいってもですね、こういう形で弾いたんだろうと思うんですよ。(ピアノを弾いて説明する)あるいは(ピアノを弾いて説明する)だから、スラーがポォーンとあって、タララって弦楽器みたいに、あの、普通親指使えばレガートに全部いきますね、(ピアノを弾いて説明する)あるいは(ピアノを弾いて説明せる)という形で。じゃあ、アーティキュレーションっていうのも指使いと関係あるんだなってことがこれでわかるわけですね。だからオクターブで連続してスラーになっているっていうのと、ポォンポンって弾くのと、あるいは上から、ド、ソラシド、ラシドレ、シドレミ、(ピアノを弾いて説明する)ってメロディーが、あるいはバスが動いているとすると、それも指使いと関係がある。つまり、アーティキュレーションっていうのは、指使いと関係がある。

で、そういう風にわかってくるとですね、これが面白いんですね。だから、バッハを弾くその喜びっていうのは、そういう専門的な喜びがあると、先生は思っているわけ。思ってない人もいるでしょう。だけど、そういう風にして解読するとですね、そのアーティキュレーションの問題っていうのも、解決がつく。しかしまぁ、学習の途中ですからね、我々は親指も使うし、小指も使う、そしてしかもくぐらす、上をかぶる、いろいろありますね。だから、指使いをいろんな形で、これでなければだめだっていうのは嘘なんですね。なかった、なんでもよかった。なんでもよかったっていっても2.2.2.2.3.3.3.3.と、こうやって弾くわけにはいかないから、こう、並べて弾いていたんだけれど、2.3.4.4、2.3.4.4、2.3.4.4、って、あるいは2、2.3.4、2、2.3.4、2、2.3.4ってやったかも知れない。そういうことをお話しようと思いました。



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