高校生による 「夏への扉 -- マイクロポップの時代」 作品紹介文


08:落合多武

  一枚一枚の作品を見る前に、まずは空間全体の雰囲気を味わってみたい。とても開放的で、すっきりと澄んでいる。この静かな展示室に、どこからともなくせせらぎが聞こえてきそうな感覚を覚えるのは私だけだろうか。ここで、リフレッシュ空間などという言葉を使ってしまってはあまりに軽々しいかもしれないが、それでも心休まる穏やかさが感じられるのは事実であろう。この空間を効果的に利用して、数多くの描画が展示されている。

 白い壁に近づいて絵と向き合ってみると、そこにはまさしく「せせらぎ」のように繊細な線で描かれたドローイングを見ることができる。それらの作品は、いわゆる美術作品にありがちな近寄り難い雰囲気など微塵も感じさせずに、すっと入り込むことを「求めている」ような親近感を持っており、思わず守ってあげたくなるような子供っぽい一面も持っている。この子供っぽさは、見る者の子供時代の記憶とシンクロしながら、美化された風景を呼び起こすきっかけになり得る。あるいは、記憶の中にある描画体験を刺激して、「このくらいなら自分にも描けるよ」などと思わせるのかもしれない。どちらにしても、鍵を無くしかけていた頭の中の引き出しをもう一度開けるチャンスを与えてくれる貴重な体験になる可能性は十分に秘めていると言えるだろう。

 このように、繊細でありながらも(むしろ、繊細であるからこそ)「ノスタルジーを刺激する」力を持ったこれらの作品には、「弱々しさ」が強みになるような興味深い反転現象が感じられる。澄んだ空間にピンと張ったピンクの糸に感じる緊張感には、繊細さに見出す芯の強さを思い起こす。

(市川寛也)


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