水戸芸術館現代美術ギャラリー/現代美術センター(水戸芸術館美術部門)

財団法人水戸市芸術振興財団
310-0063 茨城県水戸市五軒町 1-6-8 ●交通のご案内はこちらです
TEL: 029-227-8111 / FAX: 029-227-8130
Mail to: webstaff@arttowermito.or.jp


夏への扉 -- マイクロポップの時代
2007年2月3日(土)〜 5月6日(日)

*休館日:月曜日。ただし 2月12日、4月30日(月・祝)は開館。翌、2月13日、5月1日(火)休館。


大木裕之 映像作品「メイ3+4」上映会
現在展示中の「メイ3プロセス」に、今回、水戸で撮影・編集する「メイ4」をあわせ初上映します。
日時:2007年 5月 5日(土・祝) 13:30 〜14:20 *上映後にアフタートークをおこないます
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー内ワークショップ室
定員:先着80名様 *料金は展覧会入場料に含まれます
協力:FOU Production

クロージング・イベント 落合多武「一生で一回しか上映しないビデオ」上映会
落合多武 x 松井みどり 対談
日時:5月6日(日)14時〜 *13時30分開場
場所:水戸芸術館現代美術ギャラリー内ワークショップ室
定員:先着80名様 *料金は展覧会入場料に含まれます


タイアップ企画!! 「夏への扉」展出品作家・有馬かおるが水戸市内で始動!
有馬かおる「水戸のキワマリ荘」オープニング・イベント






高校生による作品紹介文集を、こちらに、掲載 いたしました。


公開にご同意くださいましたお客さまのご感想を、こちらに、掲載 いたしました。







右: 奈良 美智
Courtesy: Tomio Koyama Gallery/Marianne Boesky Gallery
左: 杉戸 洋
Courtesy: Tomio Koyama Gallery
水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景
「夏への扉−マイクロポップの時代」2007年

落合 多武
水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景
「夏への扉−マイクロポップの時代」2007年
Courtesy: Tomio Koyama Gallery

森 千裕
水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景
「夏への扉−マイクロポップの時代」2007年
Courtesy: Kodama Gallery





泉 太郎
水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景
「夏への扉−マイクロポップの時代」2007年
Courtesy: hiromi yoshii

田中 功起
水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景
「夏への扉−マイクロポップの時代」2007年
Courtesy: Tanaka Koki and Aoyama | Meguro
半田 真規
水戸芸術館現代美術ギャラリーでの展示風景
「夏への扉−マイクロポップの時代」2007年
Courtesy: Kodama Gallery






ご案内のフラッシュ・ヴァージョンはこちらです。


松井みどりは、美術評論家として1995年から2006年に至る約10年間のアートシーンの中に「マイクロポップ」的表現の出現と実践の現場を読み取ってきました。 作家が産み出す新しい表現と美術評論家としての対峙は、それまでにはなかったタイプの作品群が位置する場所を、言説として思索する過程であり、松井は専門とする文学的分析手法から「マイクロポップ」という概念を獲得するに至ります。

本展覧会は、松井みどり「マイクロポップ」なる概念を獲得する過程において、重要な働きかけをした作家の作品と、「マイクロポップ」の視座から未来を見渡した時に、さらなる展開を担うと思われる若手作家の作品とによって構成されるグループ展です。

本展覧会は「マイクロポップ」というコンセプトのもとに15人の日本人作家 -- タブロー・ドローイングを出品する奈良美智、杉戸洋、落合多武、有馬かおる、青木陵子、タカノ綾、森千裕、國方真秀未、写真作品出品する島袋道浩、野口里佳、インスタレーション作品を出品する半田真規、K.K.、ビデオ作品を出品する田中功起、大木裕之、泉太郎 -- を集め、彼らの新旧作品 250余点を通して、独自な創造として発生しながらもひとつの共通性を持つようになったある芸術的創造力の姿を提示し、 その芸術表現と同時代の、若い人々の生き方や感性との共通点や、後の世代への影響力について考えようと試るものです。


*松井みどり(美術評論家)
上智大学、東京大学大学院で英米文学、プリンストン大学大学院博士課程で比較文学を専攻し、 東北大学の助教授として英米文学の分野にて現代詩を研究していたが、同大学を辞した1994-95年頃から美術評論家として、 海外の学術誌、論文集、企画展カタログに同時代の日本の現代美術の潮流や作家について論文を寄稿しはじめ、 日本を代表する美術評論家として日本のアートシーンを精力的に海外に紹介している。


*「マイクロポップ」
仏哲学者ジル・ドゥルーズが著書『カフカ:マイナー文学のために』において明らかにした、新しい時代の芸術のモデル。 メジャーな言語を使って表現することを余儀なくされながら、そのなかで独自の脱線や言い換え、表現コードの組み替えを行い、既存の表現の限界を超えて新しい表現を作っている想像力のありかたを指している。


*「夏への扉」
アメリカのSF作家、ロバート・A・ハインラインの小説のタイトルから取られている。 この作品に流れる楽観的な世界観は、「現実」が限定されたひとつの世界であるとは限らず、むしろそれは、 一瞬一瞬の選択によって変わる無限の可能性と崩壊の危機をはらむ、流動的なものであるという意識に裏打ちされている。



奈良 美智
<The little star dweller>
2006年
Photo: Yoshitaka Uchida,
Nomadic Studio
Courtesy: Tomio Koyama Gallery/
Marianne Boesky Gallery


Nara Yoshitomo
1959 青森県生まれ
1987 愛知県立芸術大学大学院修了
1988-1993 ドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミー在籍
1995 「深い深い水たまり」SCAI THE BATHHOUSE
2001-2002 「I don't mind, if you forget me.」横浜美術館
2006 「A to Z」吉井酒造煉瓦倉庫


杉戸 洋
<the dark, mirror>
2006年
Photo: Yoshitaka Uchida,
Nomadic Studio
所蔵: ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)
Courtesy: Tomio Koyama Gallery
*参考写真


Sugito Hiroshi
1970 愛知県生まれ
1992 愛知県立芸術大学日本画学科卒業
1999 「MOT Annual 1999 - Modest Radicalism」 東京都現代美術館
2003 「under the shadow」 小山登美夫ギャラリー
2006 「April Song」 ヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)


落合 多武
<永遠のスープと突然の明るさ>
1996-2006年
Courtesy: Tomio Koyama Gallery


Ochiai Tam
1967 神奈川県生まれ
1993 ニューヨーク大学大学院芸術学部修了
1995 クリテリオム16 水戸芸術館
1999 「Madeleine」 小山登美夫ギャラリー
2004 「フィクション? - 絵画がひらく世界」 東京都現代美術館


有馬 かおる
<無題>
2002年


Arima Kaoru
1969 愛知県生まれ
1990 名古屋造形芸術短期大学プロダクトデザインコース卒業
1998-99 「to the Living Room」ワタリウム美術館
2004 「54TH CARNEGIE INTERNATIONAL」カーネギー美術館(ピッツバーグ)
2006 「キワマリ荘の住人V 楽描鬼の引っ越し」アートドラッグセンター


青木 陵子
<花数珠>
2001年
Courtesy: Kodama Gallery


Aoki Ryoko
1973 兵庫県生まれ
1999 京都市立芸術大学大学院ビジュアルデザイン科修了
1998 「どないやねん! / 現代日本の想像力」国立美術学校(パリ)
2001 「花屋敷」児玉画廊
2002 クリテリオム51 水戸芸術館
2005 「HAMMER PROJECTS Ryoko Aoki」ハマー美術館(ロサンゼルス)


タカノ 綾
<永劫へ入ろうとする>
2000年
(c)2000 Aya Takano/Kaikai Kiki Co., Ltd.
All Rights Reserved.


Takano Aya
1976 埼玉県生まれ
2000 多摩美術大学芸術学部卒業
2000-2001 「Superflat」ロサンゼルス現代美術館
2006 「都会犬(。v・)/」渋谷パルコ名古屋パルコ
2006 「Aya Takano」リヨン現代美術館(リヨン)
2007 「野犬、鷹、フクロウ、猫、東京ドーム44個半分のゴミの埋立て地、成層圏」エマニュエル・ペロタンギャラリー(マイアミ)


國方 真秀未
<びっくりセーター>
2004年
(c)2004 Mahomi Kunikata/Kaikai Kiki Co., Ltd.
All Rights Reserved.


Kunikata Mahomi
1979 神奈川県生まれ
2000 日本デザイン専門学校グラフィックデザイン科イラストレーション専攻卒業
2000 「芸術道場展」LAPNET SHIP
2002 「東京ガールズブラボー 2」NADiff
2005 「リトルボーイ: 日本の爆発するサブカルチャー・アート」ジャパンソサエティ(ニューヨーク)
2006 「いない友達の行進」リフレックスギャラリー(アムステルダム)


島袋 道浩
<南半球のクリスマス>
1994年
Courtesy: Shimabuku+Shugoarts,
Tokyo+Air de Paris, Paris


SHIMABUKU
1969 兵庫県生まれ
1990 大阪芸術大学付属大阪美術専門学校卒業
1992 サンフランシスコ美術大学卒業
1999 「165mの人魚と旅をしている」ダジバオ(モントリオール)
2003 「川の流れを見ながら」シュウゴアーツ
2006 「どうやって一緒に生きていくのか」第27回サンパウロ・ビエンナーレ


野口 里佳
<太陽>
2005-2006年
Courtesy: Noguchi Rika and
Gallery Koyanagi


Noguchi Rika
1971 埼玉県生まれ
1994 日本大学芸術学部写真学科卒業
1995 同大学大学院中退
1995 「潜る人」ギャラリー楽風
1997 「フジヤマ」P3 art and environment
1999 「プライベートルームII -- 新世代の写真表現」水戸芸術館
2004-2005 「飛ぶ夢を見た」原美術館D'Amelio Terras(ニューヨーク)


半田 真規
<世界境地博覧会入口>
2006年
Courtesy: Kodama Gallery


Handa Masanori
1979 神奈川県生まれ
2003 東京芸術大学美術学部卒業
2004 越後妻有アートトリエンナーレ2004
2005 「白浜青松原発瓢箪」児玉画廊|東京
2006 越後妻有アートトリエンナーレ2006


森 千裕
<不眠症のニオイ(透けた街)>
2006年
Courtesy: Kodama Gallery


Mori Chihiro
1978 大阪府生まれ
2003 京都市立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業
2005 京都市立芸術大学大学院修士課程美術研究科油画専攻修了
2003 「EXHIBITION!!!"」 appel
2004 Kodama Gallery Project 6「左心室はワンルーム」児玉画廊|東京
2006 「フィンガーピクルス」児玉画廊


田中 功起
<滝でサラダを作る>
2004年
DVD/2min. 26sec.
Courtesy: Tanaka Koki and AOYAMA|MEGURO


Tanaka Koki
1975 栃木県生まれ
2000 東京造形大学造形学部美術科絵画専攻卒業
2005 東京芸術大学大学院美術研究科修士課程修了
2002 「スクリーン・メモリーズ」水戸芸術館
2004 「特別展示 田中功起 買物袋、ビール、鳩にキャビアほか」群馬県立近代美術館
2005 「原因が結果」NADiffvoid+青山|目黒


K.K.
<ワラッテイイトモ、>
2003年
*参考写真


K.K.
プロフィール未公表
2003 キリン・アート・アワード2003 審査員特別賞受賞


大木 裕之
<メイ>
2004-2006年
DVD/50 min.
(c)2006 Hiroyuki OKI
Produced by FOU production


Oki Hiroyuki
1964 東京都生まれ
1988 東京大学工学部建築学科卒業
1989 イメージフォーラム付属映像研究所卒業
1999 「時代の体温展」世田谷美術館
2004 「六本木クロッシング」森美術館
2005 「FICTION」SCAI THE BATHHOUSE


泉 太郎
<キュロス洞>
2005年
Courtesy: hiromi yoshii


Izumi Taro
1976 奈良県生まれ
2000 多摩美術大学美術学部絵画学科卒業
2002 多摩美術大学院美術研究科修士課程修了
2002 「バーゲン(フィクシシャス)」ペッパーズロフトギャラリー
2005 「ジーニアス・エピソード1&2」ヒロミ・ヨシイ・ファイブ
2006 福武ハウス in 越後妻有アートトリエンナーレ2006



「マイクロポップ」とは、歴史が相対化され、様々な価値のよりどころである精神的言説が権威を失っていく時代に、自らの経験のなかで拾い上げた知識の断片を組み合わせながら、新たな美意識や行動の規範をつくりだしていく、「小さな前衛」的姿勢です。 この姿勢は、人や情報や物がかつてないスピードと規模で世界中を動き、遠くの出来事が自分の生活のベーシックなところまで揺るがしかねないグローバル時代にあって、人それぞれが常に流動する状況に反応しながら自分自身の判断の基盤を作り、 「生きている」という手ごたえを感じるために「小さなサバイバル」を試みているとも言えるでしょう。

本展は、「小さなサバイバル」の試みである個々の作品を一堂に集めることで、時代の様相としての傾向を視覚体験する場とすると同時に、本展覧会を契機として、これまで、ややもすると周辺的にとらえられてきた領域の表現が、新しい価値、新しい芸術観として、広く認知され、同時に議論される場を提供しようとするものです。





松井みどり著「マイクロポップの時代:夏への扉」2007年春発売予定!(パルコ出版)

松井みどりの「マイクロポップの時代」なる新しい概念は、パルコ出版社の協力を得て、書籍として2007年春の刊行を予定で準備を進めている。
これにより、松井が見据える「マイクロポップ」の概念の全貌を紹介する書籍と、それを体現する美術作品の展覧会の二つの企画を並行して進めることで、 本と展覧会の二つのメディアから世に問うことが可能となった。





展覧会概要

展覧会名:「夏への扉 -- マイクロポップの時代」
欧文表記:The Door into Summer: The Age of Micropop
会期: 2007年2月3日(土)〜 5月6日(日)
開館時間:9時30分〜18時 *入場は17時30分まで
休館日:月曜日
*ただし、2月12日、4月30日(月・祝)は開館。翌、2月13日、5月1日(火)休館。
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー
入場料 :一般800円、前売・団体 (20名以上) 600円
中学生以下・65歳以上・各種障害者手帳をお持ちの方は無料。
チケット取扱:水戸芸術館エントランスホールチケットカウンター
*2007年 3月31日までJR東日本みどりの窓口、びゅうプラザにても販売
一年間有効フリーパス
・ハイティーンパス「H.T.P.」1,000円 対象15歳以上20歳未満
・おとなのパス 2,500円 対象20歳以上
取り扱いは、水戸芸術館エントランスホールチケットカウンター

主催: 財団法人水戸市芸術振興財団
協賛: アサヒビール株式会社
株式会社資生堂
株式会社インターナカツ JEANS FACTORY
協力: 株式会社創夢
企画: 松井 みどり(美術評論家)
森 司(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)






「夏への扉 マイクロポップの時代」関連イベント


オープニング・トーク「マイクロポップとは何か」
講師:松井 みどり(美術評論家)
日時:2007年 2月 3日(土)14時〜15時(13時30分開場)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー内ワークショップ室
定員:80名(先着順)
*料金は展覧会入場料に含まれます。

ウィークエンド・ギャラリートーク
CACギャラリートーカーとともに展覧会を鑑賞します。
日時:2007年 2月17日(土)〜 5月 6日(日)毎土・日曜日 各日14時30分〜(約40分)
*料金は展覧会入場料に含まれます。都合により中止になる場合があります。あらかじめご了承ください。


高校生ウィーク2007
詳細はこちらです
高校生ウィーク 2007
会期:2007年 2月21日(水)〜 3月21日(水・祝)
対象:高校生、または15〜18歳の方
*年齢が証明できるものをお持ちください。高校生の場合は年齢を問いません。
毎年恒例の高校生または同年代の方のための展覧会無料招待月間。
期間中はご来館のどなたでもご利用になれるカフェ+交流スペース(15時〜)がギャラリー内に開設され、その運営を高校生・大学生を中心にした世代が担います。

赤ちゃんと一緒に美術館散歩
日時:2007年 3月 2日、16日(いずれも金曜日)各日 9時30分〜/11時〜
募集人数:各回、5組(先着順/要電話申込)
対象:未就学児とその保護者
参加費:無料 *別途、展覧会入場料が必要です。
申込締切:各日、開催日の3日前まで

学芸員によるギャラリートーク
展覧会を企画した学芸員がトークをおこないます。
日時:2007年 3月10日(土)14時〜15時
講師:森 司(水戸芸術館現代美術センター主任学芸員)
*料金は展覧会入場料に含まれます。





マイクロポップ宣言 : マイクロポップとは何か

松井 みどり



マイクロポップとは、制度的な倫理や主要なイデオロギーに頼らず、 様々なところか集めた断片を統合して、 独自の生き方の道筋や美学を作り出す勢を意味している。

それは、主要な文化に対して「マイナー」(周縁的)な位置にある人々の創造性である。 主要な文化のなかで機能することを強いられながら、 そのための十分な道具を持たない人々は、 手に入る物でまにあわせながら、 彼等の物質的欠落や社会的に弱い立場を、 想像力の遊びによって埋め合わせようとする。

マイクロポップは、また、人から忘れられた場所や、 時代遅れの事物に目をつける。 その場所で見つけた小さな事実 --場所の隠れた意味を表すような-- をもとに、人々や物を新たな関係性の連鎖のなかに置き換えながら、 コミュニケーションを促すゲームや集いの場をつくり、 共同体への新たな意識が育つきっかけをつくっていく。

マイクロポップの概念は、フランスの哲学者ジル・ドゥル−ズとフェリックス・ガタリによる「マイナー文学」の定義と、 フランスの歴史学者ミシェル・ド・セルトーが主張した「日常性の実践の戦術」の理論に触発されている。 ふたつとも、移民、子供、消費者など、常に「大きな」組織に従属している周縁者と見なされている人々が、 その一見不利な条件を利用して自分たちに適した環境や新たな言葉を作り、 メジャーな文化を内側から変えていく、 「小さな創造」の革命的な力についての方法論なのだ。

マイクロポップの「ポップ」という言葉も、 ドゥルーズとガタリの言い回しから採られている。 それは、アメリカのポップ・アートとは関係のない小文字のポップだ。 それは、大衆文化のメジャーなスタイルを指すのではなく、 制度にたよらず自分の生き方を決めていく、 普通の人の立ち位置を示している。 知や価値の体系の絶えまない組み替えを現代の状況として受け止めながら、 彼らは日常の出来事の要請にしたがって自らの思考や行動の様式を決めていく。 それは、高等文化と大衆文化の階層にかかわらず、 様々な体験から情報を得、 必要に合わせて知識を採り入れ組み替えることのできる、 大都市の住人やインターネットのユーザーの姿勢と同じだ。

この意味で、「マイクロポップ」は、マイクロポリティカルでもある。 文化の制度的な思考の枠組みやグローバルな資本主義や情報網による物神崇拝に抵抗して、 「いまここ」の実質的な条件や要求に応えながら、 独自の知覚や創造の場を見いだし、確保しようとするその姿勢は、 個人の自発的な決定能力の、つつましいが力強い主張を示すのである。

それは、子供のような想像力によって、 しばしば使い棄てられる日常の安い事物や「とるにたらない」出来事をシンプルな工夫によって再構成し、 忘れられた場所や、時代遅れの物や、 用途が限定されている消費財に新たな使い道を与え、 人を自らの隠れた可能性に目覚めさせる。 マイクロポップな姿勢はこのようにして、 凡庸な事象に潜む美を見い出し、 人と物が新たな関係性を結び意味を得る文脈を作り出していくのである。

マイクロポップな立ち位置とは、 ポストモダン文化の最終段階において、 精神的生存の道を見い出そうとする個人の努力を現わしている。 それは、60年代に始まり、現在その非人間化の極限に達しているかに見える「進歩」の過程への抵抗なのだ。 過度に工業化され、組織化された今日の世界を、 視点の小さなずらしやささやかな行為を通して生の柔軟さやその複雑な多層性をつかまえることで変形しながら、 マイクロポップな人間は、人間の生きる世界の価値の再生の可能性を広げていくのである。




おとなのパス   
© Hiroko Ichihara
20歳以上の方を対象としたパス、好評発売中です。パスのデザインは、ことばのアーティスト、イチハラヒロコ。 「現代美術も楽勝よ」のロゴが入っています。
ご購入の日から1年間、現代美術ギャラリーの企画展に何度でもご入場いただけます。
価格2,500円。水戸芸術館チケットカウンターにて取り扱っております。



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