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ネッタマ 2005年 1&2月号

年末年始はこのCDで!

冬休みだし今回は、年明けの芸術館コンサートに登場するアーティストのCDを紹介しよう。 このところ、童話や映画やマンガなど、テーマをしぼってテンション上げ上げで書いてきたので、こたつに丸くなって蜜柑食べつつ、のんびりいきましょう...。

まず、サクソフォンの須川展也さん。今回は現代作品に焦点が当てられているけれど、8年前のリサイタルをお聴きになられた方なら、須川さんがコレッリにまで遡る膨大なレパートリイを持っていることはご承知だろう。
そんな須川さんの最新盤は『エキシビジョン・オブ・サクソフォン』(EMI TOCE-5521〜3)。 3枚組ですよあなた。3枚組って、ジョージ・ハリスンの『オール・シングス・マスト・パス』か、はたまたクラッシュの『サンディニスタ』か? ともかく大作です。
中身を知ればさらにびっくり。1枚目は <ラプソディ・イン・ブルー> と <展覧会の絵> のサクソフォン&ピアノ編曲版(長生 淳編曲)。 2枚目からはサクソフォンのオリジナル名曲が出るわ出るわ、トマジがドビュッシーがミヨーがジョリヴェがダマーズがデュボアがマルタンがクレストンがデザンクロがデニソフが、いやもう満腹の充実感。 各種サクソフォンを持ち替えてのガーシュウィンとムソルグスキーの超絶演奏で度肝を抜いておいて、あとはじっくり腰を据えてサクソフォンのためのオリジナル作品を聴いていただこう、というわけですな。 サクソフォンのエキシビション(展覧会)でありエンサイクロペディア(大事典)でもあるこのアルバム、須川さんとピアノの小柳美奈子さんの名演を楽しむ聴き手にとってはもちろん、これからサクソフォンのプロを目指す少年少女にとっても必携だろう。 サクソフォンの名曲がこれほどの名演で集成されてしまったのだから(緒方英子さんの解説も勉強になる)。
つまり最高の意味でこれはとても教育的なアルバムでもあるし、同時に「サクソフォンを目指す若者よ、ここまで来れるか!」と聳え立つ巨大な壁のようなアルバムでもある。
がんばれよ吹奏楽部の諸君。にしてもああ、<ブラジレイラ> をこんな風に吹けたらどんなに素敵だろう!

・・・冒頭で「のんびり」とか言っておいて、いきなりテンション上げ上げだよ。 武久源造さんの演奏を聴いて心を静めよう。
武久さんがどんなに音楽を深く見つめている方かは本文記事の通りだが、ともかく彼の演奏を聴いてみたい、という方には以下のCDをおすすめしたい。 まず静かなる衝撃と共に彼の名を人々に知らしめることになった名盤『鍵盤音楽の領域 -- 1』(ALM-ALCD1001)。 ルネサンスからバロックに至る鍵盤音楽で編んだこの1枚を初めて聴いたとき、最初の一音から「これはただごとではない!」と震えた。 「何々時代の誰という作曲家の曲を演奏しています」ではなく、楽曲を通じてその先にある普遍なるものへと静かに歩を進めてゆくような演奏。 <ラ、ミ、レの上で> の驚嘆すべき即興を聴きながら、その衝撃は確信へと変わった。 以後、変奏ごとに心の視界がどんどんクリアになり、覚醒した恍惚感へと導かれる『バッハ:ゴルトベルク変奏曲』(ALM-ALCD1013)といい、痛切に孤独な心の深淵に降りてゆく 『シューベルト:即興曲集』(ALM-ALCD1019)といい、武久さんのアルバムを聴くことは音楽を聴く、という行為の本質と向かい合うことと同義だ、と言って間違いない。 ご自身が書かれる解説がまたすごく読み応えがある。
最近は自ら率いる「コンヴェルスム・ムジクム」というグループと刺激的かつ問題提起的なアルバムを連発しており、最新盤『シューベルト1820:ます』なんて、いやーかつてこんな演奏なかったよ。

・・・やっぱり上げ上げトーンだな。
栗コーダーカルテットで力を抜こう。 「力を抜く」って言い回しは、このグループに対する最高の賛辞のつもり。 なんといっても彼ら自身のアルバムに「脱力の錬金術師集団」という謳い文句が冠されているのだから。 僕は彼らの音楽のビギナーなのだけれど、いやあ、はまります。
リコーダーカルテットといえばアムステルダム・ルッキ・スターダストとかフランダースとか、これは一台のオルガン? と思わんばかりのアンサンブルで勝負するグループの印象が鮮烈なだけに、彼らの演奏を聴くと最初は「の、のどか!」と思ってしまう。 彼らのアンサンブルは決して超絶テクで人を圧倒するという感じではない。 だがそのうち、音色の一体感とか、フレージングの厳格な一致とか、そういうことにとらわれていた自分の肩の力が、微笑と共に抜けて行く。 といってもこれは断じていわゆる「ヒーリング・ミュージック」ではなく、音楽の根源的な喜びのひとつである「解放」をもたらしてくれる体験なんだ。
彼らの本職(?)は作曲家だったりサクソフォン奏者だったり、リコーダーは実は「専門外」なのだけれど、それだけにリコーダー・アンサンブルというメディアを批評的に用いることができる。 「僕たちはリコーダーはそう得意ではないのだけれど」とぽりぽり頭をかいてみせながら、リコーダーの飄然とした味わいの音を武器に、音楽がゼロからできてゆく現場を、それこそ手作りで見せてしまう。 これは、彼らがすごい音楽家だからこそできる、高度な力技なんだと思う。
じっさい、スタジオ・レコーディングされたアルバムの、人なつこい顔をしながら実に洗練された楽曲の数々はどうだろう。 僕が聴いたのはまずサード・アルバムの『鉄道ワルツ』(KICK UP KUP-200104)、ほぼオリジナル楽曲で構成されたこのアルバムは栗Q入門におすすめだろう。 季節ものとして『栗コーダーのクリスマス』(METROTRON compactron-55)があるが、これもいい。13世紀のフランスの古謡から自作まで(ルネサンス中心)選曲がシブい。 アレンジがいい。甘味料まみれのクリスマス・ソング類とは百万光年隔たった、聖歌への純粋な敬意がある。
そして驚愕するのが、『公式 BOOTLEG』(自主盤なのか? 00008B という番号しかないが、担当 Bによるとこの番号に謎が隠されているらしい。 ヒントは「縦にしてみろ」だそうだ。あっ、そうか!)。全51トラック、CM音楽(うまい)からまったくもってブートレグな音質のライヴ音源、「クズ同然のリハーサルテイク」(帯の文句です、念のため)まで収録されたマニアックな盤。 だがこれが、彼らの手作り感を伝える点でも、ルネサンスからバロックからロマン派からポピュラーからロックからボザノヴァからアリランから、何でも消化する彼らの音楽のおそるべき雑食性を感じさせる点でも、この上ない。
レッド・ツェッペリンの <移民の歌> には悶絶だよ! 松田聖子の <ガラスの林檎> には感涙だよ!
実は芸術館の栗Qコンサート、芸術館のワークショップ関連コンサート史上もっとも売れているのだが、実際こいつはお子様たちに独占させておくテはないぜ! 大人も栗Qに行くべし!

というわけで結局最後までテンション上がりっぱなしだが、これは僕の性格だからしょうがないんだよ!
よいお年を!





ネッタマ 2004年12月

*2004年10&11月では「ネッタマ」は休ませていただきました。

ネッタマ 2004年8&9月

ネッタマ 2004年6&7月

ネッタマ 2004年5月

ネッタマ 2004年4月

ネッタマ 2004年3月

ネッタマ 2004年1&2月

ネッタマ 2003年12月号

ネッタマ 2003年11月号

ネッタマ 2003年10月号

ネッタマ 2003年9月号

ネッタマ 2003年7&8月号

ネッタマ 2003年6月号

ネッタマ 2003年4月&5月号

ネッタマ 2003年2月&3月号

ネッタマ 2002年12月&2003年1月号

ネッタマ 2002年11月号

ネッタマ 2002年10月号

ネッタマ 2002年 9月号

ネッタマ 2002年 7&8月号

ネッタマ 2002年 6月号

ネッタマ 2002年 5月号

ネッタマ 2002年 4月号 (スタッフ紹介を含む号はこちらです)





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