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1999年2月17日

水戸芸術館ACM百人劇場について

水戸芸術館ACM劇場芸術監督 松本小四郎

百人劇場 (撮影:田澤 純)
百人劇場は、ACM劇場の土間部分の客席を内壁で3方から囲むような形になっています。百人という数は、劇場の規模を最小限にした場合の数と考えていただいて結構です。ただ、これまでの小劇場との大きな違いは、舞台の大きさが客席のそれとほぼ同じであるという点です。小劇場はステージも比例して小さいというのが、これまでの小劇場でした。ですから、百人劇場は、上演される作品によって、舞台の大きさや形が自由に変えることができるという特徴をそなえています。4月にスタートします「百人劇場シリーズ」でチェーホフの『かもめ』を演出します演出家の蜷川幸雄さんが先日劇場の下見に来られ、「いろいろなことができる劇場だ」と評価していただきました。
ACM劇場の特徴は、石の建物のなかに舞台と客席が一体となってあるような、従来の額縁舞台の劇場とは異なる空間構成にあります。そのなかで、演劇部門はこの9年間さまざな公演活動を行ってきました。演劇、舞踊、古典芸能が上演可能な劇場として演劇界からも高い評価を受けてきました。 そうしたなかで、今回、百人劇場をオープンしようと考えましたのは、90年代後半に入って、演劇界に大きな変化が生じつつあることがあげられます。ご存じの通り、東京を始めとして全国各地に演劇専用の施設が多く建設され、公演活動が活発に行われています。ACM劇場も、「水戸発信の演劇」を創造することを目標に公演活動を行ってきました。

しかし、この数年来の厳しい経済状況と私たち日本人の生活感や価値観の変化によって、それまでのような形での劇場運営が困難になりつつあります。ACM劇場が地域社会にとって必要不可欠な施設であるためには、さらには新しい世紀の現代演劇を創造する場所であり続けるためには、何をすればいいのか、それが私たちがこの数年来考えてきた問題でした。 この問題はバブル経済の時代と無関係ではありません。バブル経済の時代とは、私たちが等身大を過大評価した時代といっていいでしょう。そして、バブル経済が破綻したいま、私たちが考えるべきことは、私たちがいかなる等身大であるか、それにつきると思います。ACM劇場は、私たちの理想的な等身大を表現できる劇場ですが、その空間的な魅力をさらに活かすには、その魅力を凝縮したさらに小さな空間がぜひとも必要であると考えて、百人劇場をつくったわけです。壁ひとつで大きな空間にもなれば、小さな空間にもなるような「劇場のなかの劇場」は百人劇場です。 そこで、さらに具体的に百人劇場の特徴を列挙しますと、まず第1に、演劇は何と何がなければ成立しないかを考えさせる劇場であるという点です。中劇場や大劇場では、まず舞台を装置、照明などによって飾り込まなければなりません。俳優も上演台本も、大きな空間を埋めるための要素にならざるをえません。ところが、小劇場の場合は、何がなければならないかといえば、俳優と上演台本があれば充分なのです。観客に観てもらうのは俳優とその演技であり、聴いてもらうのは台本の言葉であるからです。俳優の魅力や台本の魅力を等身大で見つけることのできる劇場が小劇場なのです。もちろん、必要とあれば、装置や照明あるいは音楽を使うこともできます。しかし、基本となるものは俳優と上演台本には変わりありません。 第2は、それによって上演の経費がかなり抑えられるという点です。上演台本が素晴らしければ、そして、その素晴らしさを俳優がきちんと観客に伝えられれば、小劇場の演劇は成功したも同然です。 第3は、1つの作品を1週間、2週間上演が可能であるという点です。これまでの地方都市での演劇の公演は例外的なものを除いて、せいぜい2公演が限度であったと思います。これでは真の意味での演劇の定着化は望めません。百人劇場は、1つの作品をある程度の期間連続上演することによって、観劇の日常化をめざすと同時に、地域から有望な演劇人を育成することをめざしています。

イプセン、チェーホフといった優れた劇作家を生み出した近代劇は小劇場から始まりました。また60年代後半に登場しました日本の現代演劇である「小劇場演劇」も、寺山修司、別役実、唐十郎、清水邦夫、鈴木忠志、蜷川幸雄、太田省吾、つかこうへい、野田秀樹といった世界的な評価を受けた劇作家、演出家を生みだしました。21世紀に向かって「水戸発信の演劇」を創造していくためには、こうした小劇場の歴史的な意義にあらためて立ち戻る必要があると考えています。 百人劇場は新しい世紀の演劇を担う演劇人の活動の場となると同時に、地域の演劇、ダンスといった舞台芸術の活動をさらに活発にするための場となるものと確信しています。


ACM百人劇場シリ−ズ・4
木冬社特別公演 『戯曲冒険小説』

舞台は日本海ぞいのある町。市立図書館に勤める男は年上の妻と二人で暮らしている。「半年後には死ぬ」と言い続ける妻の最後の望みは、 前の夫である“偉大なる彼”の伝記を完成させることであった。
妻は男に伝記完成のためには「ハイヒールを盗めなければ感じをつかめない」と迫る。 冒険家であった前夫は、実はハイヒールを盗むという“冒険”もしていたのだ。 何度も試しては失敗を繰り返す男は、ある日ハイヒールを片方だけ手に入れる。
盗んだ靴屋の主人、そして外套を着た男......ハイヒールによって引き寄せられた 3人の男たちは、 やがて不思議な冒険の世界へと入っていくのだが...。
*清水邦夫はこの作品で昭和54年度(1979年)第30回芸術選奨演劇部門新人賞を受賞。

作: 清水邦夫
演出:清水邦夫、松本典子
出演:深野良純(男)、黒木里美(妻)、吉田敬一(外套)、高橋秀城(べーさん)、越前屋加代(べーさんの妻)ほか

劇作家清水邦夫は、これまで演劇のみならず作家として、映画やラジオ、小説の分野でも活躍し、様々な演出家と創作を共にしてきました。 なかでもデビュ−以来、蜷川幸雄との関係は深く、近年では村上龍原作『昭和歌謡大全集』を蜷川の演出で劇化しています。 現在は木冬社を主宰し、自ら演出も手がけております。
その清水邦夫作・演出による作品が水戸で初めて上演されます。どうぞご期待下さい。

2000年1月18日(火)〜23日(日)、25日(火)〜30日(日)
火〜土:午後 7時開演、日:午後4時開演
一般3,000円、団体(10名様以上)2,700円、学生1,500円 (全席自由)
* 団体、学生券は水戸芸術館のみの取り扱いです。


ACM百人劇場シリ−ズ・3
『マッチ売りの少女』/『新東京ローズ』


この秋、水戸芸術館ACM劇場は本年4月よりスタ−トいたしました百人劇場シリ−ズの三回目の公演を予定しております。 ACM劇場内に客席数100席という小劇場をつくりだし、その小空間に合った演目と演出で上演する企画シリ−ズです。 演劇史上に残る傑作と言われながらもなかなか上演の機会の少ない作品や、初演された際の条件が現在の劇場のスケ−ルに合わずに上演を見送られている作品にスポットをあてること、 そして若手劇作家に新作の上演の機会をあたえることを目指しております。

さて、今回のシリ−ズ3では、いよいよ別役実作『マッチ売りの少女』の登場です。 アンデルセンの童話から着想を得て書かれたこの作品は、マッチ売りの少女の悲劇を抒情的なやさしさと透明感で包みこんだ別役実初期の傑作であり、 第13回岸田國士戯曲賞(主催:白水社)を受賞しております。今回の注目は、女性を含む4人の登場人物が全て男優のみで演じられる点であり、 別役作品に新たな解釈が生まれることとなります。 演出を担当する長谷川裕久は、ここ数年唐十郎、太田省吾、つかこうへい、竹内銃一郎のそれぞれの作品を独特の切り口で演出し、 戯曲に新たな世界観を与える演出家として定評があります。

一方、『新東京ロ−ズ』は長谷川裕久が劇作家として初めて女性のために、そして百人劇場という小空間を想定して書き下ろした最新作です。 第二次大戦中、太平洋にいるアメリカ軍GIたちへ向けて放送された日本の謀略放送「ゼロアワ−」。 その女性DJたちを、GIたちは敬慕の念をこめて<東京ロ−ズ>と呼んでいました。 しかし戦後、このことが原因でGIたちのアイドル<東京ロ−ズ>は終戦直後の異常社会での悲劇へと巻き込まれていきます。 『新東京ロ−ズ』は、この<東京ロ−ズ>の悲劇をモチ−フに、薔薇の秘密が次々と掘り起こされるスリリングなミステリ−の構造をとった作品といえます。 これまで男優が演じて創りだしてきた長谷川裕久の世界でしたが、今回は女性の登場人物たちが物語を豊饒な世界へと紡いでいきます。 出演はオ−ディションを通過した女性を中心とする22名の市民です。

水戸芸術館ACM劇場
芸術監督 松本小四郎

\2,000(全席自由)9月25日(土)発売。友の会会員様先行ご予約受付9月22日(水)開始。
*友の会会員様の先行ご予約は、お電話でのみ承ります。TEL (029)225-3555
*2演目のセット券を\3,600で発売します。セット券は芸術館のみの扱いです。

『マッチ売りの少女』
[作]別役 実 [演出]長谷川裕久
[出演] 塩谷 亮佐藤信郎子安 真名取 哲 (ACM)
遠い昔、少女は雪の降る寒い夜にマッチを売っていた。 しかしその日は誰もマッチを買ってくれず、めぐんでもくれなかった。翌朝、路上に凍え死んでいる少女を見て、 人々は少女に憐れみの言葉を投げかけた。 数十年後、平穏で幸福な生活をおくっているある老夫婦の前に、かつての<マッチ売りの少女>が突然あらわれた。 そして、その女の問いかけに、老夫婦は忘却の淵に沈められた過去をしだいに思い出し始めた。
公演 : 1999年11月10日(水)〜14日(日)、水・木・金19時開演、土14時と19時開演の2回公演、日16時開演
会場 : 水戸芸術館ACM劇場
料金 : 全席自由 2,000円

『新東京ローズ』
[作]長谷川裕久 [演出]松本小四郎
女流作家美雕(うるわし)はラジオ放送局編成の旗桐からラジオドラマの台本執筆を依頼される。 好きなように書けと言う旗桐だが、「東京ロ−ズ」というタイトルだけはすでに決まっていると言う。 やがてこのタイトルが、美雕の書く台本に大きな影響を及ぼし始める。 物語は、一輪の薔薇の花を挟み向かい合う男と女の叫びの会話で始まる、そして銃声の音。 台本に登場する人物たちは、しだいに現実世界の美雕の前にあらわれだした。 現実と虚構が交じりあう混沌のなかで、薔薇の香りに隠された美雕の過去が徐々に明かされる。
長谷川作品に久方ぶりに女性が登場。
公演 : 1999年11月19日(金)〜28日(日)の金・土・日、金・土19時開演、日16時開演
会場 : 水戸芸術館ACM劇場
料金 : 全席自由 2,000円



ACM百人劇場シリ−ズ・2
『今は昔、栄養映画館』/『東京物語』

本年2月より始まりましたACM百人劇場フェスティヴァルは、 つかこうへい作『郵便屋さんちょっと』で好評のうちに一旦幕を閉じ、 4月からは新たに百人劇場シリ−ズとしてスタ−トしました。 シリ−ズ1では蜷川幸雄演出『かもめ』を上演し数多くのお客様から絶賛をいただきました。

さて、今回の百人劇場シリ−ズ2では、そのタイトルからもわかるように、 竹内銃一郎の映画にまつわる2本の作品を上演いたします。

最初に上演する『今は昔、栄養映画館』は、新作の試写会の準備に奔走する監督と自称する男と助監督と呼ばれる男の慌てぶりを、 ドタバタ喜劇タッチで描き出しております。 歓声のなかで、ヒッチコックの有名なスピ−チが流れ、 男たちは来るかどうかも分からない招待客のために席割りをしながら、じっと何かを待っています。 (演出:松本小四郎、出演:塩谷亮、佐藤信郎)

一方『東京物語』は、劇場に入ると小津安二郎の名作『東京物語』の音声が聞こえてきます。 登場人物は牢獄に閉じ込められている2人の男。彼らはそこから脱走しようと決意します。 そのなかで一人がもう一方に『東京物語』のスト−リ−を語り続けます。一体何のために? (演出:長谷川裕久、出演:子安真、名取哲)

今回は、映画に憧れ夢想した日本人の永遠の夢を描いてみたいと思ってお ります。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

『今は昔、栄養映画館』
公演 : 1999年6月10日(木)〜13日(日)木・金19時開演、土14時開演・19時開演、日16時開演
会場 : 水戸芸術館ACM劇場
料金 : 全席自由 2,000円

『東京物語』
公演 : 1999年6月17日(木)〜20日(日)木・金19時開演、土14時開演・19時開演、日16時開演
会場 : 水戸芸術館ACM劇場
料金 : 全席自由 2,000円


水戸市制施行110周年記念公演

ACM百人劇場シリーズ・1 『かもめ』


写真撮影:青木 司
公演 : 1999年4月7日(水)〜10日(土)水〜金19時開演、土16時開演
会場 : 水戸芸術館ACM劇場
料金 : 全席自由 5,000円
おかげさまで全席完売でした。ありがとうございました。

〔原作〕アントン・チェーホフ
〔訳〕小田島雄志
〔演出〕蜷川幸雄
〔出演〕原田美枝子、筒井康隆、宮本裕子、高橋 洋 ほか




「かもめ」第四幕の舞台写真を、こちらからご覧いただけます。

写真撮影:青木 司
湖のほとりにあるソーリン家の領地。
庭園内の仮設舞台で一つの芝居が始まろうとしている。
その芝居を書いたのは女優アルカージナの息子で作家志望のトレープレフ、演じるのは彼が恋する地主の娘ニーナ。
女優になることを夢見ているニーナは、アルカージナの愛人で高名な小説家トリゴーリンに惹かれていく。
何もかも棄て、女優という新しい生活を始めようとトリゴーリンのもとに走ったニーナは、しかし彼に棄てられ、二人の間にできた子どもにも死なれてしまう。
二年後、精神的にも肉体的にも傷ついたニーナは懐かしい湖のほとりに帰ってきた…。

百人の客席で、空間と現実とを圧倒するほどに展開されるドラマを十二分にお楽しみいただきました。


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