海の最前線に送り込まれた、漁師と兵士の物語
太平洋戦争下の鄙びた小さな漁村。若者は兵隊にとられ、村に残ったのは中高年と女子供ばかりだが、戦時下ながら日本近海で漁にいそしみ、大漁という喜びもまだ噛みしめられる日々だった。14歳の見習いは、吉祥丸に乗り込んで日々、先輩漁師たちから一人前になるべく仕事を学んでいた。しかし、そんな小さい船にも徴用の電報が飛び込んできた。明後日までにすべての乗組員ごと横須賀軍港に来いというのだ。一体どんな仕事をさせられるのか、吉祥丸は不安を抱えたまま、家族との別れもそこそこに、急ぎ指定された横須賀に向かうことになった。