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2015-06-13 更新

ちょっとお昼にクラシック ジルバーマン、フリードリヒ大王、バッハの子

いよいよ来週の開催となった「ちょっとお昼にクラシック 武久源造(フォルテピアノ) ―このピアノを、バッハは弾いた―」。6月17日の演奏会当日にお配りするプログラムのために、こんな「序文」を書きました。
コンサートを先取りして、このスタッフブログで公開します!

 


ジルバーマンとそのピアノ

バッハと同時代に活躍したドイツのオルガン職人ゴットフリート・ジルバーマン(1683~1753)は、現在も残る数々のパイプオルガンの名器を建造したほか、ドイツ最初期のピアノ(フォルテピアノ)を製作した人物として知られています。彼は、ピアノの発明者バルトロメオ・クリストフォリが製作したピアノを手本に、さらなる改良を施して1730年代に独自のピアノを完成させました。バッハは1733年6月17日にライプツィヒにおいて「当地でまだ演奏されたことのない新型のチェンバロ」を使ったコンサートを開催していますが、この「新型のチェンバロ」という言葉がピアノを指していたことは、ほぼ間違いありません。ジルバーマンのピアノはプロイセン国王フリードリヒ2世(フリードリヒ大王)にも気に入られ、1740年代に十数台がポツダムの王宮に備え付けられました。バッハの二男カール・フィリップ・エマーヌエルは、フリードリヒ大王に仕えて王宮のピアノを弾き、父バッハも1747年に国王の御前でピアノの即興演奏を行いました。

水戸芸術館音楽部門 篠田大基


 

今回のチラシの裏面に載せた文章を少し膨らませて書きました。

チラシの裏面では、ゴットフリート・ジルバーマンを、「ドイツで初めてピアノを製作した人物」と紹介しましたが、その後、武久源造さんから、ジルバーマンが本当にドイツで最初のピアノを作ったかどうかは、確定が難しい、とのご指摘をいただきました(ジルバーマンと同時期に、ドイツでピアノを作ろうとした人は、他にもいた可能性があるそうです)。
そこで、「ドイツ最初期のピアノを製作した人物」と、表現を改めさせていただきました。謹んで訂正いたします。 m(__)m

 

さて、上の「序文」に出てくる、フリードリヒ2世(フリードリヒ大王)といえば、学校の世界史の教科書には、啓蒙君主としてその名前が出てきますね。
クラシックがお好きな方でしたら、フルートの演奏が得意であったこと、バッハの最晩年の傑作〈音楽の捧げ物〉 BWV1079 が生まれるきっかけとなった「王の主題」を作った人物としても、ご記憶かもしれません(もっとも、「王の主題」が本当に大王御製であったかについては、諸説ありますが……)。

 

Wikimedia Commons

 

Wikimedia Commons

今回の「ちょっとお昼にクラシック」のチラシに掲載した絵のなかで、フルートを吹いている人物が、フリードリヒ大王です。

こちら→
凛々しいお姿ですね。

チラシに使ったこの絵は、19世紀ドイツの画家アドルフ・フォン・メンツェルの代表作〈サンスーシー宮殿におけるフリードリヒ大王のフルート演奏会〉(ベルリン旧国立美術館所蔵)です。
歴史画なので、メンツェルは実際にフリードリヒ大王の演奏会を見て描いたわけではなく、これはあくまで想像の世界なのですが、それにしても、絵画を見ている自分もタイムスリップして宮殿の中で一緒に演奏を聴いているかのような……、そんな錯覚にとらわれる作品ですね。

Wikimedia Commons

そして、大王を見ながら鍵盤楽器を弾いているこの人物→

彼こそは、大バッハの二男、カール・フィリップ・エマーヌエル・バッハです。

彼の音楽の最大の特徴は、とってもドラマティックな強弱の表現!
ひとつのフレーズのなかで、突然に音が大きくなったり、急に消え入るような音になったり……場所によっては1小節ごとに、細かく強弱の指示が変わります。
専門用語では「感情過多様式」とか「多感様式」と呼ばれますが、このような強弱表現は、チェンバロやオルガンよりも、ピアノでこそ高い効果が発揮されると言えるでしょう。
今回のコンサートで演奏されるエマーヌエル・バッハの〈ロンド イ短調〉も、演奏時間5分強の短い曲ですが、とても素晴らしい作品です。

父バッハの作品だけでなく、今回のコンサートでは、どうぞ、バッハの息子たちの音楽にもご注目いただければ幸いです。
「バッハの息子はこんな曲を作っていたの!?」と驚くくらい、父親のマネでは決してない、それぞれに独特な音楽の世界を作り出して、父バッハからモーツァルトやベートーヴェンといった後の世代へと橋渡しをした人たちです。

演奏曲目のことを語り出すとキリがないのですが……、当日配布のプログラムの曲目解説をお楽しみになさってください! 今回の曲目解説は、武久源造さんご自身がお書きくださいました!