チケット

【重要なお知らせ】

現代美術ギャラリーCONTEMPORARY ART GALLERY

  • 企画展

拡張するファッション

2014年2月22日[土]〜2014年5月18日[日] 9時30分~18時(入場時間は17時30分まで)

COSMIC WONDER 《COSMIC WONDER RESTAURANT》 2013年
撮影:ホンマタカシ

「ファッションは季節ごとに最新の流行情報を与えるシステムだ――これまで多くの人に、ファッションはそう受け止められてきた。新作コレクションや流行情報の量が圧倒的なあまり、人々はそこに自分の思考を挟むことを、機械的に阻止してしまってきたのかもしれない。でも実は、ファッションを入口にして、さまざまなことを語ることができる。」
(林央子著『拡張するファッション』より)

 1990年代は資生堂『花椿』誌の編集者として、2000年以降はインディペンデントな個人雑誌『here and there』の編著者として、長年ファッションやアートの世界を見つめてきた林央子。その林による著作『拡張するファッション』(スペースシャワーネットワーク、2011)は、ファッションを軸に現代的なものづくりや表現の方法を探っている国内外のアーティストたちの仕事を紹介し、多くの反響を呼びました。
 本書を元にした本展では、『拡張するファッション』に登場するアーティストたちに加え、2010年以降の新しい動向を示すアーティストを招き、アートやデザイン、出版といった複数ジャンルが出会う文化の交差点としてのファッションを紹介します。
 オートクチュールからプレタポルテ、ストリートファッションまで、人々の価値観やライフスタイルの変化に合わせて変貌を遂げてきたファッションは、もっとも敏感に時代を写す鏡のようなものと言えるでしょう。しかしその一方、グローバリゼーションのなかで、人々の欲望を常に喚起し、消費行動に導く経済のためのツールとしてのファッションの側面も目立つようになってきました。1990年代にパリコレクションを取材した林は、こうした消費産業としてのファッションのシステムに批判的なデザイナー/アーティストに注目し、従来の服飾デザインとは異なる彼らの創作活動を独自の視点で紹介してきました。
 本展では、ファッションを人々がささやかな日常生活の中で美的感覚を養い、生き方や考え方を他者に対してコミュニケートするための手段と考え、パフォーマンスやワークショップの手法を取り入れているアーティストの活動や、彼らと関わりのあるフォトグラファーや現代美術家の作品を展示します。
 会場では、1990年代にドキュメンタリーとしてのファッション写真を発表したホンマタカシによる当時を再構成する新作展示、『Purple』、『here and there』、Nievesといったインディペンデント出版活動の動向が概観できる服部一成デザインによる展示コーナー、小説家また映画監督としても活躍するミランダ・ジュライの初期の映像作品、青木陵子、長島有里枝、スーザン・チャンチオロ、COSMIC WONDER、BLESS/小金沢健人、神田恵介×浅田政志によるインスタレーションの展示のほか、FORM ON WORDSによる実際に洋服をつくるプロセスを体験するワークショップも開催されます。 
 従来のファッション展とは異なる、洋服を着たマネキンのいない本展は、「ファッション」と人とのオルタナティブな関係を探ります。


開催情報

会場

水戸芸術館現代美術ギャラリー

開催日

2014年2月22日[土]〜2014年5月18日[日]

開催時間

9時30分~18時(入場時間は17時30分まで)

休館日

月曜日 *ただし5月5日(月・祝)は開館

入場料

一般800円、前売り・団体(20名以上)600円
中学生以下、65歳以上・障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料
【一年間有効フリーパス】
「ハイティーンパス」(15歳以上20歳未満 ):1,000円
・「おとなのパス」(20歳以上):2,500円

お知らせ

本展終了後、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館に巡回いたします。
会期:2014年6月14日(土)~9月23日(火・祝)
本展カタログは2014年春、DU BOOKS(株式会社ディスクユニオン)より全国発売予定。

お問合せ

水戸芸術館(代表)TEL:029-227-8111

展示構成ならびに参加アーティスト

ホンマタカシ《ヒステリックグラマー 1997》 1997年

1.越境は写真から始まった ― ストリート、ファッション、ドキュメンタリー

ホンマタカシ
1990年代にドキュメンタリーフォトの手法を用い、従来のファッション写真に新風をもたらしたホンマによる、現在の視点で当時を再構成する展示です。

2.DIYメディア ― 実験的な制作精神


1990年代に普及したパソコンは、グラフィックデザインやインディペンデントな編集の可能性を飛躍的に拡大し、従来のマスコミ主体のメディアのあり方に変革をもたらしました。グラフィックデザイナーの服部一成が構成したこのコーナーでは、初期の『Purple』、『here and there』、Nievesといった個性的なインディペンデント出版活動を紹介します。

ミランダ・ジュライ《アトランタ》
1996年

3.ガーリームーブメント再考 ― 日常への視点、自発性、複数の表現手段

ミランダ・ジュライ、青木陵子、長島有里枝
ライオット・ガール(怒れる少女たち)に代表されるフェミニズムとも関連する文化の一動向であった「ガーリー」は、とりわけ日本ではファッションや音楽の消費促進のために濫用される用語になってしまいました。このセクションでは、ガーリームーブメントの本来的な特徴である「日常への視点」、「自発性」、「複数の表現手段」に焦点をあて、ガーリーという美学とその成熟を考察してみます。

COSMIC WONDER
《COSMIC WONDER RESTAURANT》 2013年
撮影:ホンマタカシ

4.新しい想像力との出会い:ファッション=デザインの枠組みの無効化

スーザン・チャンチオロ、COSMIC WONDER、BLESS/小金沢健人
「服という枠に収まりきらない表現力を持つものが生まれてきている。そこで生まれているのは、ただ着る、それだけのための服ではない。一緒に生きていたい、その美しさを長い時間楽しんでみたい服。日常ではそうそう得られない、ドキドキした感情を引き起こしてくれる、そんな服なのである。もはや、アートかファッションか?そんな区別を問うこと自体、まったく無意味だと思わせてくれる、新しい想像力との出会い。」(『拡張するファッション』より)林央子がかつてCOSMIC WONDERをこのように評したように、ファッション=デザインという枠組みにとどまらず、絵画、あるいはパフォーマンス、インスタレーションとファッションを関連付けている活動を紹介します。

横尾香央留《お直し-karstula-》
2013年 撮影:ホンマタカシ

5.古さ、遅さといった価値観の見直し:服と人との幸福な関係

横尾香央留
流行が目まぐるしく変わるファッションの世界で、古さや遅さといった概念は、肯定的に使われることはあまりないかもしれません。布地が肌になじむ、着古したクタクタのパジャマ、お気に入りでずっと着ていたのに虫に喰われてしまったシャツなど、その人にとっての大切な衣服にじっくりと向き合い、時間をかけて、ささやかな、しかし驚きのあるお直しをほどこし、日々まとう愛着の1枚をこの世にひとつしかないものに変化させる横尾香央留の仕事を展示します。

神田恵介×浅田政志
《東大阪青春白書》2013年

6.ファッションは人生の伴走者:技術、経験、感情の分かち合い

神田恵介×浅田政志、パスカル・ガテン、FORM ON WORDS
「ファッションは私たちの、生きる力が現れるところです。ファッションは私たちの創造性や傷つきやすさを表出させ、他者と自分自身を分かち合う献身的な行為なのです」。出品作家のパスカル・ガテンはこのようにファッションについて語っています。このセクションでは、作り手と受け手の新しいコミュニケーションの方法を実践しているアーティストたちの取り組みが披露されます。

▶パスカルガテンによる水戸芸術館現代美術ギャラリー監視員と行ったワークショップについて、詳細はこちらのブログからご覧いただけます。(※英語のみ)
〈Questioning the Consept of the Uniform(制服のコンセプトについて考える)〉
http://mitoguards.blogspot.jp/

作品図版

スーザン・チャンチオロによるドローイング 2013年 ©Susan Cianciolo

FORM ON WORDS 《ネクスト・マーケット「ジャングルジム市場」》 2012年

BLESS 
《N°45 Soundperfume》 
2011年 Photo by Team Peter Stigter

青木陵子 《ルーツ》2012年 
© Ryoko Aoki
Photo by Kei Okano
Courtesy of Take Ninagawa, Tokyo

パスカル・ガテン《Work Circles》2013年

長島有里枝 Untitled 2013年

小金沢健人
京都、丹後でのパフォーマンス 2014 

関連プログラム