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【重要なお知らせ】

コンサートホール ATMCONCERT HALL ATM

  • 音楽

シュニトケの肖像

2012年9月17日[月] 

©Jüergen Köchel / permitted by Sikorski Musikverlage

シュニトケが夢みた 多元的な世界へ

世界は一つだけではなく、
きらめく星のように無数に存在している。

そう思うことができれば、ただ一つの規範の下に、
自由が奪われるようなことは無くなる。

思想が一つしかない社会が、いかに歪んでいるかを、
歴史は証明してきた。

世界が一つではないからこそ、
自分の歩む道はどこかにあるし、
帰る場所もどこかにある。

現代を代表するロシア出身の前衛作曲家、アルフレート・シュニトケ(1934~1998)。彼は、ロシアに生まれ育ち、ロシアの文化・精神と繋がっている一方で、ユダヤ人の父とドイツ人の母をもち、ロシアの血は一滴も含んではいない。そうしたアイデンティティの問題に苦しみながらも、シュニトケはその出自と同じように、様々な要素や様式を混在させながら、現代芸術の新しい可能性を模索した。シュニトケの音楽には、中世、ルネサンスから現代に至る様々な音楽様式、民族音楽やポピュラー音楽などの要素が混在する。シュニトケの「多様式」の作風は、旧ソヴィエトの単一的・中央集権的な国家体制に対する、リアクションであるとも言えるだろう。

本公演のプログラムは、1960年代の初期作品から1990年代の後期作品まで、シュニトケの創作の軌跡を辿ることができるように構成している。チャイコフスキー・コンクールのために委嘱を受けて作曲した〈即興とフーガ〉。ルネサンス期の作曲家ラッススの宗教曲およびベートーヴェンの〈大フーガ〉の旋律、そしてショウスタコーヴィチの名前に由来する音型が、音楽の中心的な素材となっている〈弦楽四重奏曲 第3番〉。亡くなった母を追悼するために書かれた、悲痛な美しさに彩られた〈ピアノ五重奏曲〉など。また、演奏機会の少ないシュニトケのオルガン作品をプレ公演という形で取り上げる。
 
シュニトケが夢みたのは、時間や空間を超えて、いくつもの世界が調和しながら共存する円融なる境地であった。そんなシュニトケの多元的な世界へ、私達も足を踏み入れてみたい。

◆プレ演奏 13:20開演

【出演】高橋博子(オルガン)、梶原彰人(トロンボーン)

【曲目】
シュニトケ:オルガンのための2つの小品 (1980)
シュニトケ:トロンボーンとオルガンのための〈音響と反響〉 (1983)

【会場】エントランスホール
入場無料 ※事前のご予約は不要です。

◆演奏会 13:30開場 14:00開演

【出演】
アルディッティ弦楽四重奏団
 アーヴィン・アルディッティ(第1ヴァイオリン)
 アショット・サルキシャン(第2ヴァイオリン)
 ラルフ・エーラース(ヴィオラ)
 ルーカス・フェルス(チェロ)
野平一郎(ピアノ、おはなし)

【曲目】
シュニトケ:ピアノのための即興とフーガ (1965)
シュニトケ:弦楽四重奏曲 第2番 (1980)
シュニトケ:ピアノ・ソナタ 第3番 (1992)
シュニトケ:弦楽四重奏曲 第3番 (1983)
シュニトケ:ピアノ五重奏曲 (1972-76)

【会場】コンサートホールATM

公演概要

会場

コンサートホールATM (プレ演奏:エントランスホール)

開催日

2012年9月17日[月] 

チケット情報

料金

【全席指定】一般3,500円 学生1,000円
13:30開場 14:00開演
プレ演奏:13:20開演 (入場無料・事前予約不要)


チケットの取り扱い
水戸芸術館エントランスホール・チケットカウンター
水戸芸術館チケット予約センター 029-231-8000
MUSIC SHOPかわまた 029-226-0351
ヤマハミュージック関東 029-244-6661
CNプレイガイド 0570-08-9990
学生券のご案内
学生券は水戸芸術館のみの取り扱いとなります。

お問合せ

水戸芸術館(代表)TEL:029-227-8111

アルフレート・シュニトケ

©Jüergen Köchel / permitted by Sikorski Musikverlage

Alfred Schnittke (1934~1998)


1934年11月24日、当時のヴォルガ・ドイツ自治共和国の首都・エンゲルスに生まれる。母は、ヴォルガ生まれのドイツ系ロシア人でドイツ語教師をしていた。父は、フランクフルト生まれのユダヤ系ロシア人で、ジャーナリスト、翻訳家であった。1946年から48年まで父の海外勤務に伴い移り住んだウィーンで、ピアノの個人レッスンを受けたのが音楽教育の最初であった。48年に一家でモスクワ近郊のヴァレンチノフカに移り、十月革命音楽学校の合唱指揮科で学ぶ。53年~58年、モスクワ音楽院で、ゴールベフから作曲と対位法を、ラーコフから管弦楽法を学ぶ。また、ウェーベルンの弟子のゲルシュコーヴィチからの影響も受ける。58年~61年、モスクワ音楽院の大学院で学び、多数の作品を作曲する。50年代から60年代にかけて十二音音楽など西欧の前衛音楽の新しい技法を吸収し、やがて歴史的な様式や民族音楽の要素などを取り入れた「多様式主義」の書法を確立する。
62年~72年、モスクワ音楽院で管弦楽法等の非常勤講師を務め、現代音楽に関する研究論文も数多く手がける。75年頃から彼の作品は重要な現代音楽祭で演奏され始め、80年代になると世界中の主要オーケストラの演奏会プログラムに加えられるようになる。その後、モスクワ、ストックホルム、ロンドン、ウィーン、ベルリン、トリノ、ルツェルンなど数多くの都市で、彼の作品を特集する音楽祭や演奏会が開催される。89年、リゲティの後任としてハンブルク音楽大学の作曲科の教授に就任、モスクワを離れドイツへ移住。90年、ドイツのパスポートを取得し、二重国籍となる。92年、「高松宮記念世界文化賞」音楽部門受賞のため日本を訪れる。98年8月3日、ハンブルク大学病院で死去。享年63歳。同年8月10日、モスクワ音楽院で追悼式が行われる。

出演者プロフィール

アルディッティ弦楽四重奏団


1974年に第一ヴァイオリンのアーヴィン・アルディッティがクァルテットを創設、活動を開始。現代作品の深い解釈と卓抜した演奏は、世界各地に広く知られ、高い評価を確立している。この30余年の間に、数百もの弦楽四重奏曲が彼らのために作曲されている。ケージ、カーター、グバイドゥーリナ、細川俊夫、カーゲル、ラッヘンマン、リゲティ、シュトックハウゼン、クセナキスなどの作品の世界初演を行なっている。CDは130枚以上がリリースされている。99年、エルンスト・フォン・シーメンス音楽賞を受賞。2009年1月には、ローマで再演されたシュトックハウゼンの<ヘリコプター・クァルテット>で注目を集めた。水戸芸術館では00年の単独演奏会、04年の「べリオの肖像」、10年の「リゲティの肖像」に出演している。

野平一郎

ピアノ、おはなし
1953年生まれ。東京芸術大学、同大学院修士課程を修了後、フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に学ぶ。ピアニストとしては、1982年から1990年まで、アンサンブル・イティネレールのピアノ奏者をつとめた。ソリストとしてもこれまで、フランス国営放送フィルハーモニック、バーゼル放送交響楽団、アンサンブル・アンテルコンタンポラン、ロンドン・シンフォニエッタ、国内の主要オーケストラなどと共演。作曲家としては、すでに80曲以上の作品を作曲しており、その中にはフランス文化庁、IRCAM、ベルリン・ドイツ交響楽団、パリ及びリヨン国立高等音楽院などからの委嘱作品がある。08年から10年にかけて、水戸芸術館で「モーツァルト:ピアノ・ソナタ全曲演奏会」を行い、ライブ録音のCDをリリースしている。第13回中島健蔵音楽賞(95年)、第44回尾高賞、芸術選奨文部大臣新人賞、第11回京都音楽賞実践部門賞(96年)、第35回サントリー音楽賞(04年)、第55回芸術選奨文部科学大臣賞(05年)を受賞。本年春には紫綬褒章を受章。現在、静岡音楽館AOI芸術監督。東京芸術大学音楽学部作曲科教授。

高橋博子

オルガン
東京芸術大学音楽学部器楽科オルガン専攻卒業、同大学院修士課程修了。安宅賞受賞。ドイツ国立ハンブルク音楽大学の国家演奏家試験コースを最優秀で合格。オルガンを今井奈緒子、ヴォルフガング・ツェラーに師事。1999年ツェレ・ニーダーザクセン国際オルガニスト・コンクール、2000年NHR(北ドイツ放送局)音楽賞国際コンクールともに優勝。新宿文化センター専属オルガニスト、明治学院非常勤オルガニスト。日本オルガニスト協会、日本オルガン研究会各会員。

梶原彰人

トロンボーン
東京芸術大学音楽学部を経て同大学院修士課程を修了。学部在学中に渡仏、フランス国立リヨン地方音楽院(CNR)にて研鑽を積む(ディプロムを取得)。第23回日本管打楽器コンクール2位。ヤマハ新人演奏会出演。小澤征爾音楽塾、東京のオペラの森等にオーケストラメンバーとして参加。2007~11年、東京芸術大学管弦楽研究部にて、芸大フィルハーモニアのトロンボーン奏者を務めた。現在はフリーランサーとしてオーケストラや室内楽での演奏活動のほか、洗足学園音楽大学の非常勤講師として後進の指導にもあたっている。これまでに、永濱幸雄、松田浩、白濱俊宏、伊藤清、イブリズ・ジラール、秋山鴻市に師事。

芸術文化振興基金