庄司紗矢香&ジャンルカ・カシオーリ
2026年3月7日(土) 14:30開場 15:00開演
1999年にパガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールに史上最年少で優勝して以来、ヨーロッパを中心に国際舞台の第一線で活躍している庄司紗矢香。ヴァイオリニストとして最前線に立ち続けている大きな原動力は、新たな創造に向かって歩みを止めないチャレンジ・スピリットにある。庄司紗矢香は次のように語っている。「聞き慣れた演奏やどこかで耳にした演奏を自動的に模倣することだけは成長した演奏家としては避けたいものです。演奏とは常に新たな創造であり、一つ一つの解釈のチョイスと自分に対して誠実であり、その責任を取ること。その上でその瞬間に空気中から生まれたものを尊重する姿勢が大切です。」
そんな庄司紗矢香は、水戸芸術館を日本の活動の重要拠点の一つとして、専属楽団「新ダヴィッド同盟」に軸足を置きながら、イタマール・ゴラン、ジャンルカ・カシオーリ、ヴィキングル・オラフソン、ベンジャミン・グローヴナーといった名ピアニストなどとリサイタルを行ってきた。とりわけジャンルカ・カシオーリは2009年以来のパートナーだ。2人はリサイタル活動に加え、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集を録音している。また、近年では庄司がガット弦を張り、カシオーリがフォルテピアノを用いて、モーツァルトやベートーヴェン作品などによる公演を行い、モーツァルト作品ではCDも鋭意リリース中である。
今回の水戸公演では、現代のピアノが用いられるが、古典派から20世紀作品まで、多様な作品が取り上げられる。演奏会の幕開けを華やかに飾るのが、モーツァルトの〈ソナタ〉K.376(374d)。近年のカシオーリとのピリオド楽器的なアプローチの延長線上で、どのような表現が為されるのかご期待いただきたい。続いて奏されるのは、名ヴァイオリニスト・ヨアヒムのシューマン邸訪問を歓迎して、シューマンと門下生のディートリッヒ、そして若きブラームスが共同で作曲した〈F.A.E.ソナタ〉。そして、カシオーリと同郷イタリアの20世紀の作曲家ダラピッコラの〈タルティニアーナ 第2番〉。バロック期のイタリア人作曲家、ヴァイオリニストのジュゼッペ・タルティーニのヴァイオリン・ソナタの主題をモティーフとした作品で、現代とバロックの音楽語法が融合し、新しい地平を垣間見せてくれる。そして、最後に演奏されるのは、ロマン派のヴァイオリン・ソナタの最高峰の一つであるブラームスの〈ソナタ 第1番〉。その第3楽章に織り込まれた〈雨の歌〉の旋律を聴いたクラーラ・シューマンは、この作品の完成間際に亡くなった末子に想いを寄せながら、「天国に持って行きたい」という言葉を残したと伝えられている。
庄司紗矢香とジャンルカ・カシオーリによる「新たな創造」の現在を、どうぞコンサートホールでお聴きください。
【出演】
庄司紗矢香(ヴァイオリン)、ジャンルカ・カシオーリ(ピアノ)
【曲目】
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第24 番(第32番)ヘ長調 K.376(374d)
ブラームス、ディートリッヒ、シューマン:F.A.E. ソナタ
ダラピッコラ:タルティニアーナ 第2番
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 作品78「雨の歌」