新ダヴィッド同盟について
2010年、水戸芸術館初代館長・吉田秀和の命名により、同館の専属楽団として結成されました。
メンバーは、世界的に活躍する若手ヴァイオリニスト・庄司紗矢香を中心に、庄司の呼びかけで集まった、気心の知れた音楽仲間たち——佐藤俊介(ヴァイオリン)、石坂団十郎(チェロ)、小菅優(ピアノ)。それに、庄司の尊敬する室内楽の名手・磯村和英(ヴィオラ)が加わります。国際的に活躍する5人のメンバーは、世界各地から水戸に集まり、密度の濃いリハーサルを徹底的に行って演奏会に臨みます。
「ダヴィッド同盟」は、ドイツ・ロマン派の大作曲家ローベルト・シューマンが夢想した芸術グループです。異教徒ペリシテ人を知と勇気で撃退した旧約聖書の登場人物ダヴィデ(ダヴィッド)にちなみ、俗物に対抗し、新しい音楽の理想を打ち立てようとする気概がこめられています。
時を経て21世紀、「新ダヴィッド同盟」は次代を担う若い演奏家たちが中心となり、シューマンの音楽的理念に共鳴して結成されました。今、わが国で考えられる最高の顔ぶれの奏者たちによる新時代の理想的な音楽表現に、大きな注目と期待が集まっています。
メンバー紹介
庄司紗矢香Sayaka Shoji
- ヴァイオリン
「絶大なスタミナと何事にもひるまない精神、希有な音楽家」とグラモフォン誌に評された庄司紗矢香は、ユーリ・テミルカーノフ、ズービン・メータ、ジャナンドレア・ノセダ、マリス・ヤンソンス、パーヴォ・ヤルヴィ、ヴラディーミル・アシュケナージなどの指揮者や、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団、マリインスキー劇場管弦楽団、NHK交響楽団、サンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団といった世界を代表するオーケストラと共演を重ねている。
2019/20年シーズンは、エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団との日本ツアーや、クリーヴランド管弦楽団、ユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団などと共演。
その他、ジャンルカ・カシオーリとベートーヴェンのピアノとヴァイオリンのためのソナタ全集を録音。今シーズンはニコラ・アンゲリッシュとモディリアーニ弦楽四重奏団と共に室内楽のコンサートを行う。
1999年にパガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで最年少および日本人として初めて優勝。2010年芸術選奨新人賞、2016年毎日芸術賞を受賞。
使用楽器は、上野製薬株式会社より貸与された1729年製ストラディヴァリウス“レカミエ(Recamier)”である。
庄司紗矢香 メッセージ
今回私の尊敬する室内楽の仲間と水戸で集まれることをとても嬉しく思っています。
参加をお願いすることになった4人とは、それぞれと色々なご縁で出会い、共演をはじめ長いお付き合いですが、5人揃っての共演は初めてです。私の大好きな水戸芸術館と、恩師・原田幸一郎先生から新しい室内楽アンサンブル立ち上げのお話を伺った時、「世界で活躍する日本人演奏家でクインテット」という事で一番に思い付いたのが、この仲間です。それぞれ、パリ、ミュンヘン、ニューヨーク、ベルリン、ザルツブルクを拠点に旅を続けている私達が、水戸に集まれることは、大きな喜びです。なぜなら、いつも慌ただしいスケジュールで動いている私達は、音響、環境共に室内楽に最適なホールの「舞台上」で「思う存分」室内楽のリハーサルをできる機会は、実のところ、なかなかないからです。私個人にとっては、心の通じた仲間と室内楽を学べる稀な機会です。
プログラムは、「古典と現代」を基本に、室内楽の経験が特に豊富な磯村さん、団十郎君に意見をいただきながら、皆で吟味し、話し合って決めました。
そして、新時代の理想を追求する音楽家の象徴として、また、今年シューマンの生誕200周年ということも重なり、私達は吉田秀和先生より「新ダヴィッド同盟」と命名頂きました。
皆さんに楽しんでいただけたら、嬉しいです。
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佐藤俊介Shunsuke Sato
- ヴァイオリン
高い技術と豊かな音楽性を磨き、ニューヨーク、フィラデルフィアを経て、現在ヨーロッパを拠点にキャリアを築く国際派。弱冠9歳でフィラデルフィア管弦楽団の学生コンクールで優勝。NHK交響楽団を含む日本の主要オーケストラに加え、バイエルン放送交響楽団、ハンブルク交響楽団、サンクト・ペテルブルク交響楽団など欧米の名門オーケストラと共演。ヨーロッパ各都市、アメリカ、日本などでリサイタル活動にも積極的に取り組んでいる。
ミュンヘンで古楽奏法を勉強し、現在オランダに在住。コンチェルト・ケルン、オランダ・バッハ協会、スコットランド室内管弦楽団のコンサートマスターを務め、2013年よりアムステルダム音楽院教授としても活動。
CDは「イザイ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ全6曲」、「グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ集」、「パガニーニ:24のカプリース」、「テレマン:無伴奏ヴァイオリンのための12の幻想曲」などをリリース。グリーグのCDは第62回文化庁芸術祭レコード部門で大賞を受賞した。第15回出光音楽賞、06年アメリカ・ワシントン賞、07年度第9回ホテルオークラ音楽賞などを受賞。10年7月にはヨハン・ゼバスティアン・バッハ国際コンクールにて第2位、聴衆賞を受賞。平成22年度(第65回)文化庁芸術祭新人賞を受賞。
佐藤俊介 メッセージ
室内楽をやる事において良いメンバーに恵まれることほど音楽家として幸せなことはありません。今回のような長期的なプロジェクトに参加する事になり、メンバーとは以前から共演した事もあるだけではなく友人達でもあるので、とても楽しみにしています。公演を重ねるごとにアンサンブルとしての絆が深まり、進化していく私たちを皆さまに温かく見守って頂ければ大変嬉しく思います。
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磯村和英Kazuhide Isomura
- ヴィオラ
桐朋学園でヴァイオリンをジャンヌ・イスナール、小林健次、室内楽を齋藤秀雄に学び、1968年よりニューヨークのジュリアード音楽院に於いて、ヴァイオリンをイヴァン・ガラミアン、ヴィオラをウォルター・トランプラー、室内楽をロバート・マン、ラファエル・ヒリヤーに学ぶ。
1969年秋、桐朋、ジュリアードを通じての仲間とともに東京クヮルテットを結成。1970年、ミュンヘン国際音楽コンクール弦楽四重奏部門で1位となり、国際的な注目を集めた。同年秋に、ニューヨークでデビューリサイタルを行う。以後、クヮルテットと共に44年にわたり、ニューヨークを拠点に世界各地で演奏活動を続けた。
室内楽の指導には長年積極的に取り組み、イエール大学で教鞭をとる他、アメリカ、ヨーロッパ、日本で数多くの室内楽講座を行う。
東京クヮルテットのレコーディングは、グラモフォン年間最優秀室内楽賞等受賞した録音も数多く、グラミー賞には7回ノミネート。磯村個人としても、ヴィオラ・ソロとソナタのCDをリリースしている。
2013年外務大臣表彰、2014年アメリカン・ヴィオラ・ソサエティーよりキャリア・アチーヴメント賞を授与された。現在、桐朋学園特命教授、サントリーホール室内楽アカデミーのファカルティを務める。
磯村和英 メッセージ
私共は、「新ダヴィッド同盟」という立派な名前を頂いて、今年のクリスマス前に、新しい室内楽のグループをスタートします。
他のメンバーの方は、皆若く、大変な才能の持ち主です。彼等は、日本人と言うより、日本に愛着を持つ地球人という感じで、多くはヨーロッパに住み、世界中で演奏活動に励んでいます。そんな仲間が一年に一度、水戸芸術館に集い、室内楽のユートピア(理想郷)を築こうと企んでいます。
室内楽の魅力は、やはりレパートリーの豊富さ、奥の深さではないでしょうか。そしてもう一つは、演奏者間の音楽を通しての、緊密な対話にあると思います。
音楽愛好家の皆様、もしコンサートに来てくださったら、居間にいるような感じで、その対話に加わり、室内楽に浸る歓びを我々と一緒に体感してください。そして、「新ダヴィッド同盟」を育ててください。
ハロウィーンを間近に控えたニューヨークにて
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石坂団十郎Danjulo Ishizaka
- チェロ
ドイツ人と日本人の両親を持つチェリスト石坂団十郎は、ミュンヘン国際音楽コンクール、ルトスワフスキ国際チェロコンクール、エマニュエル・フォイアマンコンクールなど数多くの国際コンクールで優勝、ヨーロッパ・ドイツを拠点に世界各国で演奏活動を繰り広げる。
クリストフ・エッシェンバッハ、ロジャー・ノリントン、パーヴォ・ヤルヴィらの指揮者と共演し、近年ではバイエルン放送交響楽団、ウィーン交響楽団、シンガポール交響楽団、香港フィルハーモニー管弦楽団、NHK交響楽団、読売日本交響楽団などよりソリストとして招かれる他、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭、BBCプロムス、香港室内楽音楽祭など世界各国での音楽祭にも出演。デビューCD「チェロ・ソナタ」は「エコー・クラシックアワード」を受賞。公益財団法人ソニー音楽財団「齋藤秀雄メモリアル基金賞」、グラモフォン・アワード2014室内楽部門受賞。
ドイツ・ベルリン芸術大学及びスイス・バーゼル音楽院教授として後進の指導に積極的に取り組む一方、世界各国での演奏活動はオーケストラとの共演、ソロ活動の他、室内楽の分野など多岐に渡る。
石坂団十郎 メッセージ
私たちのアンサンブルは「新ダヴィッド同盟」と命名されました。これは作曲家シューマンが新しい音楽の理念を実現しようと名付けた「ダヴィッド同盟」から来たものです。
私たちのアンサンブルはこの精神を受け継ぎ、音楽演奏の新しい方向を考えようということで実現しました。ですからシューマンの作品だけを演奏するのではなく、「ダヴィッド同盟」に属したといわれるベートーヴェンの作品も演奏いたします。
そして「ダヴィッド同盟」の中心に、理念の異なる人物、フロレスタンとオイゼビウスがいたように、コンサート・プログラムをご覧になればお分かりのように、私たちも「ダヴィッド同盟」が受け入れた異なる理念の作品も紹介していくつもりです。
とくに「新ダヴィッド同盟」は、新しい事象に対して開かれた純な心、芸術と向き合う純な心、しかしながら音楽への果敢さ、音楽との連帯感等も失わないつもりです。
私は「ダヴィッド同盟」メンバーの精神を、すばらしい音楽の演奏で生かせればと、とても楽しみにしています。
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小菅 優Yu Kosuge
- ピアノ
高度なテクニックと美しい音色、若々しい感性と深い楽曲理解で最も注目を浴びている若手ピアニストの一人。9歳より演奏活動を開始、2005年カーネギーホールで、翌2006年にはザルツブルク音楽祭でそれぞれリサイタル・デビュー。ドミトリエフ、デュトワ、小澤征爾等の指揮でベルリン響、フランクフルト放送響、シュトゥットガルト放送響、サンクトペテルブルク響、フィンランド放送響と共演。最近ではノット指揮スイスロマンド管と共演。
2010年から15年にはベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会を東京、大阪で行い各方面から絶賛を博した。さらに現在はソロだけでなく室内楽や歌曲伴奏を含む、ベートーヴェンのすべてのピアノ付き作品を徐々に取り上げる新企画「ベートーヴェン詣」に取り組んでいる。2017年からは4つの元素「水・火・風・大地」をテーマにした新リサイタル・シリーズ『Four Elements』に取り組み2020年秋に最終回を迎えた。
録音はソニーからの「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集」、小澤征爾指揮水戸室内管弦楽団との「メンデルスゾーン:ピアノ協奏曲第1番他」を含む15枚のCDをリリースしている。
第13回新日鉄音楽賞、2004年アメリカ・ワシントン賞、第8回ホテルオークラ音楽賞、第17回出光音楽賞を受賞。2014年第64回芸術選奨音楽部門文部科学大臣新人賞、2017年第48回サントリー音楽賞受賞。
小菅 優 メッセージ
私のとても尊敬している音楽家の庄司紗矢香さんに声をかけていただき感謝です。こんなに素晴らしいメンバーと毎年共演できるなんて夢のようで、楽しみでなりません。
水戸芸術館にはこれまで何回もお世話になっておりますが、室内楽をするのに最高の環境、音響、知的なスタッフの方々に囲まれ、水戸を第2の故郷にしたいくらい大好きなホールです。
紗矢香さんと俊介君とは何回か共演させていただいていますが、二人ともとてもユーモアがあってユニークなので舞台上でも舞台裏でも一緒にいて楽しい仲間です。磯村先生と団十郎さんとは初顔合わせです。新しい音楽作り、アイディアを吸収して勉強させていただけることをとても楽しみにしています。
私たちの新たな冒険が始まります!皆様、是非お見逃しなく!
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