チケット

【重要なお知らせ】

  • コラム
  • 音楽
  • 公演

2022-09-08 更新

【茨城新聞・ATM便り】9月8日付の記事を掲載しました~ディスクとともに語る吉田秀和初代館長の思い出~

茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。9月8日掲載の記事を転載します。今回は9月17日に開催する講座「ディスクとともに語る吉田秀和初代館長の思い出」に関する記事です。


没後10年を振り返る


鎌倉の自宅で執筆中の吉田秀和初代館長(2006年撮影)

吉田秀和・水戸芸術館初代館長がこの世を去り、10年が経過しました。水戸芸術館では、講座「ディスクとともに語る吉田秀和初代館長の思い出」を9月17日に開催します。お話は20年以上にわたり吉田初代館長の仕事を支え続けた大津良夫・水戸芸術館副館長が務め、ゲストに雑誌「レコード芸術」の編集者で、吉田初代館長の原稿を担当していた田中基裕さんをお招きします。

この10年の間に、AIの発達、SNSの爆発的な普及、SDGsへの意識の高まりなど、私たちを取り巻く環境やテクノロジーは大きく変化しました。

音楽を聴くことに関してはどうでしょうか。1990年代後半から、いわゆる「CD不況」に突入し、インターネットを通じた音楽販売の影響も重なって、CDの販売枚数は減少の傾向が続いていますが、それでも音質やブックレットの資料性が重視されるクラシック音楽においてはCDが優勢でした。しかし、この10年の間に、CDを上回る情報量を持つハイレゾファイルの販売や、CDと同等の音質で提供される定額制のストリーミング配信が急速に進み、クラシック愛好家の聴取方法も少しずつ変わってきているようです。

そこに世界的なパンデミックという緊急事態が重なりました。様々なコンテンツがネット上に公開され、クラシック音楽もクリック一つで、驚くほど簡単に楽しめる時代になりました。

たくさんのLPやCDに耳を傾け、気に入った音盤を心の友として愛した一方で、「生演奏を聴かなければ本当のことはわからない」としばしば語っていた吉田初代館長。私たちが生きている2022年という時代を、天国からどのように眺めているのでしょうか。

9月17日の講座では、吉田初代館長の鎌倉の自宅を仕事でたびたび訪問した二人が、思い出深い音源やエピソードなどとともに当時を振り返ります。何事も便利になった時代に忘れかけている大切なことを、思い出す機会になるかも知れません。
 
水戸芸術館音楽部門主任学芸員・関根哲也