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2024-01-17 更新
ちょっとお昼にクラシックちょっとお昼にクラシック 高橋敦さん(トランペット)・呉信一さん(トロンボーン)・竹島悟史さん(打楽器&ピアノ) インタビューどこにどんな出会いがあるか――
1月26日の「ちょっとお昼にクラシック」は、このコンサートと時期を合わせて開催する「中学生のための音楽鑑賞会」(水戸市内の中学1年生2,350人が来場予定)と同じ出演者、同じプログラムで開催します。今回は、水戸室内管弦楽団(MCO)に出演を重ね、そしてサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)ブラス・アンサンブルのメンバーでもある、高橋敦さん(トランペット)、呉信一さん(トロンボーン)、竹島悟史さん(打楽器、ピアノ)のトリオでお送りします。
コンサートに向けて、高橋さんにzoomでお話をうかがいました。
――MCOやSKOブラス・アンサンブルでおなじみの方々がご出演くださるので楽しみです。今までにこの3人で演奏されたことはありますか?
高橋:今回初めてです。でもトランペット、トロンボーン、ピアノという編成は珍しくなくて、この編成のために作られた曲も実際にあるんですよ。金管楽器は吹き続けることが困難な楽器なので、ピアノが加わることでその負担が軽くなるし、音色の変化や表現の幅も広がるんです。今回は水戸でのコンサートなので、MCOにゆかりのある方とできたらと思って、トランペット、トロンボーン、ピアノという編成を考えたときに、呉さんと竹島君というイメージが浮かんだんです。
――今回の曲目のなかで、バッハの〈トッカータとフーガ ニ短調〉、バーンスタインの〈ウエスト・サイド・ストーリー〉の“マリア”と“トゥナイト”、それから最後のガーシュウィンの〈ラプソディ・イン・ブルー〉が、トリオで演奏されると聞きました。パイプオルガンの曲やオーケストラの曲を編曲して演奏するわけですね。
高橋:3人でプログラムを考えていたときに、せっかくだから既存の曲ではなくて、オリジナルをやろうという話になって、SKOブラス・アンサンブルでも僕と竹島君で曲をアレンジしているんですけど、今回も同じように、今回のためのスペシャル・アレンジでいこう!ということになりました。
――楽しみです! 編曲はできあがっていますか?
高橋:〈トッカータとフーガ〉と〈ウエスト・サイド・ストーリー〉が僕の担当で、もうできています。〈ラプソディ・イン・ブルー〉は竹島君が今取り組んでくれています。〈トッカータとフーガ〉はパイプオルガンの曲ですけど、パイプオルガンっておもに金属のパイプに風を送って音を出すので、金管楽器の響きとよく似ているんです。だからバッハのオルガン曲は金管アンサンブルでもよく演奏されるんですけど、複雑な動きがあって、すごく大変なんです。一方で〈トッカータとフーガ〉にはピアノのアレンジもありますよね。両方の楽器、両方のアレンジの特性をミックスさせたら面白いかなと考えました。〈ウエスト・サイド・ストーリー〉は、ピアノを伴奏にして、トランペットとトロンボーンがデュエットするようにアレンジしてみました。
――バーンスタインやガーシュウィンなど、アメリカの音楽が多いですね。
高橋:たまたまですね。でも金管楽器のいろいろな特色を聴かせようと思うと、クラシックだけに頼れないという面はあります。どうしても近代の曲やミュージカルやジャズのナンバーが多くなりやすいんです。トランペットのソロで有名な曲を、と考えたのが、やっぱりアメリカの作曲家のアンダーソンの〈トランペット吹きの子守唄〉でしたし。
今回はトリオでの演奏に加えて3人それぞれのソロの演奏も予定しています。高橋さんが〈トランペットの子守唄〉、呉さんが〈誰も寝てはならぬ〉。竹島さんは検討中とのこと。呉さんと竹島さんが10月のMCO第112回定期演奏会で水戸にいらっしゃったときに、お二人にも話をお聞きしました。
竹島:〈誰も寝てはならぬ〉はマリンバで伴奏しようと思っているので、じゃあ自分のソロはどの楽器にしようか、まだ考えているところです。
呉:〈誰も寝てはならぬ〉を竹島さんがマリンバで伴奏してくれること、本当に嬉しく、またすごく楽しみにしています。どのようなアレンジになって曲想を作り上げるか、今からゾクゾクしてきます。ピアノ伴奏よりマリンバ伴奏の方が僕のイメージのサウンドになると思ってます。
――呉さんはなぜ〈誰も寝てはならぬ〉を?
呉:僕の十八番(おはこ)
だと自分で思っています(笑)。昔から歌が好きで、この曲の歌詞の意味、言葉の発音の仕方などを知ることで音の出し方も変わるでしよ?まあ、今回はちょっとパヴァロッティ風になるかも?(大笑) ア〜〜♪(歌う)――コンサートのイメージが膨らみますね。準備は着々と?
竹島:高橋君が編曲したトリオの譜面は送られてきていて、僕の方でも少し調整するつもりです。SKOブラス・アンサンブルでも、高橋君のアイデアで書かれた譜面に僕がさらに手を加えて演奏するんです。僕がアレンジする曲も高橋君に見てもらって、息継ぎとか楽器の特性上できるかどうかを確認してもらう。だから本当に共作ですね。その上できれいな譜面を作ってみんなに配るようにしています。
呉:今まで譜面のトラブルなかったですよ。両者の思いが詰まった素晴らしいアレンジです。毎回毎回非常に楽しみです。
竹島:演奏するお互いのことが分かっているからこそ書ける音符って、あるんですよね。外部のアレンジャーに発注して編曲してもらう選択肢もありますけど、そうして出てくる音は、僕らがたとえば呉さんのために書く音とは絶対に違います。呉さんならたぶんここで息を吸うとか、あそこで楽器の持ち替えにはこのくらいの時間がかかるとか、そこまで分かっているから。
呉:プレーヤーの顔を思い出しながら書いてるところが多分にあると思うね。編曲を楽しんでるよね。
竹島:そういう意味では、今度の〈ラプソディ・イン・ブルー〉でも、何か「ならでは感」を出せたらいいなと思っています。
――〈ラプソディ・イン・ブルー〉のピアノ・ソロは竹島さんが弾くわけですね。
竹島:ピアノを前面に出すつもりはなくて、ピアノは伴奏主体にソロも少しあるというくらいにしようと思っています。トリオなので、ピアノ・コンチェルトのようにするつもりはまったくないですね。
最後に、コンサートに来る中学生やお客様へのメッセージをお願いしました。
高橋:今回のコンサートを通じて金管楽器の魅力を楽しんでもらえたらと思います。学校には吹奏楽部があるし、金管楽器の音は身近なところでも聴けるし、親しみやすい楽器だと思うんですよね。コンサートのなかではトランペットやトロンボーンの話もできたらいいなと思っています。それから、竹島君がピアノを弾いたり、いろんな打楽器を演奏するのにも注目してもらえたらと思います。固定観念にとらわれずに、いろんなことにチャレンジして、いろんなことができるようになることの素晴らさも、感じてもらえたらと思います。
呉:僕、中学の時は美術部だったんですよ。高校生になって初めてトロンボーンと出会ったのです。その高校は吹奏楽部が有名で中学からの吹奏楽経験者が多く入部希望で来てました。私はトランペットを吹きたいと言いましたが、すでにトランペットを上手く演奏出来る生徒がいて断念!それでオーボエを吹きたいと言いました、当時オーボエ、ファゴットなどの楽器を特殊楽器と言いクラブにはありませんでした。部室の隅っこにある楽器を指差しその楽器をしなさいと言われました。それがトロンボーンでした。僕はトロンボーンを選んだのでなく、先輩に決められた楽器なのですよ。でもトロンボーンが大好きになり、出会って1週間ぐらいの時にトロンボーンと一緒にお風呂に入ったのです。楽器を洗ってあげたんだ(爆笑)。
竹島:どこにどんな出会いがあるか、分からないですからね。音楽をやるのに、たとえばレッスンが嫌になったり、練習が面倒くさくなったりするのは、やらなきゃいけないって思っちゃうからですよね。でも、音楽って自由なもので、やりたくなかったらやらなきゃいいし、一方で楽しむためには頑張らなきゃいけないこともある。音楽を演奏したり、聴いたりしているときに、苦痛になっていたら、とても良くないと思う。だから、折角コンサートに来てくれたのに、寝ちゃだめだ、咳しちゃだめだって、ルールに縛られて固まっているよりかは、リラックスして、寝てくれても全然構わないと思う。こちらは気持ち良いから寝てるんだって思うから。今回、いろいろな曲、いろいろな楽器が入っているプログラムなので、曲だったり、楽器だったり、何か出会いがあるかもしれないので、そういうところを楽しみに来ていただけたら嬉しいですね。
2023年10月15日、zoomにて
10月21日、水戸にて
(水戸芸術館音楽紙『vivo』2023年12月号より)