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2026-09-17 更新
【茨城新聞・ATM便り】9月17日付の記事を掲載しました~武満徹没後30年記念企画~
茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。9月17日掲載の記事を転載します。
今回は、武満徹没後30年記念企画の2つのコンサートに関する記事です。
「武満徹の肖像」
日時:9月26日(土)16:00開演
出演:波多野睦美(メゾ・ソプラノ)、高木綾子(フルート)、成田達輝(ヴァイオリン)、山澤 慧(チェロ)、北村朋幹(ピアノ)、片山杜秀(ナビゲーター/水戸芸術館館長)
「今昔雅楽集 四、秋庭歌一具」
日時:10月4日(日)16:00開演
出演:伶楽舎、荒木奏美(オーボエ)、宮田まゆみ(笙)、片山杜秀(ナビゲーター/水戸芸術館館長)
チケットはどちらもの公演も【全席指定】一般 4,500円 U-25(25歳以下)1,500円、
2公演セット券は7,000円での販売となっております。
皆さまのご来場をお待ちしております。
庭園のような音楽を

難しいと言われがちな現代音楽は、どう聴けば楽しめるでしょうか。作曲家の芥川也寸志は、著書『音楽の基礎』で、京都の古い庭園を歩く体験になぞらえました。
「まがりくねった道の一つの角をまがりきると、あるいは、ふと一本の木を通りすぎると、その瞬間に、まるで今までとは違う景観が眼にとびこんできて、驚かされることがある。〔中略〕歩くほどに、一つの庭がいろいろな異なった庭に見えてくる」。
庭を散策して、ふとした出来事や景観の変化を楽しむように、「みずから創造的な感性をもって、音楽のなかへ立ち入って」いくこと。そのように、芥川は勧めました。
芥川がこの文章を書いたとき、ある作曲家の音楽が、もしかすると念頭にあったのかもしれません。彼と親交の深かった作曲家、武満徹(1930~1996)です。
武満は自作品について、日本の回遊式庭園から示唆を得たと、しばしば語りました。庭の中に木や草花、岩、砂、土などの異なる要素が同時に存在し、そのどれか一つに焦点が当たるのではなく、全体として調和し、刻々と変化してゆく一つの世界。武満は、そんな音楽を目指しました。

9月26日のコンサート「武満徹の肖像」で演奏される室内楽作品〈ビトゥイーン・タイズ〉(1993)について、彼は「音楽的庭園」と呼び、同作品の曲目解説において、「この曲の〔中略〕なかに配置された音楽的客体は、ちょうど、日本の古い庭に按配された、石や植物のように、庭内を散策する人間の視点の変化によって少しずつ貌を変える」と説明しました。
あるいは10月4日のコンサート「今昔雅楽集 四」で演奏される雅楽〈秋庭歌一具〉(1979)について、彼は「かなり具体的な庭のイメージに基いて作曲された」と明かしています(作品〈夢窓〉の曲目解説より)。
武満は自らを「時間の園丁」でありたいと語りました。「無限の時間に連なるような、音楽の庭をひとつだけ造りたい。自然には充分の敬意をはらって、しかも、謎と暗喩に充ちた、時間の庭園を築く」(著書『遠い呼び声の彼方へ』より)。それが、作曲家、武満徹の願いでした。
武満は今年没後30年を迎えました。この秋、武満の音楽の庭を、歩いてみませんか。
水戸芸術館音楽部門・篠田大基