日比野克彦 ひとり橋の上に立ってから、だれかと舟で繰り出すまで
2025年7月19日(土)~10月5日(日) 10:00〜18:00(入場は17:30まで)
日比野克彦《種は船・金沢丸》(2007)
2011年、水戸芸術館広場での展示風景 撮影:加藤健
日比野克彦は幼い頃、予期せず一人ぼっちになった時、橋の上で「ひとり」を実感したと言います。そして、絵を描くのは「だれかと」会いたい、コミュニケーションしたいからだと語ります。本展は「ひとり」から「だれかと」へ、つながりを求めていく日比野による活動の変遷を生立ちから現在まで辿ります。
1980年代前半、東京藝術大学大学院デザイン専攻に在籍していた日比野は、ダンボールを素材にした作品でイラストレーションの概念を拡張し、立て続けに公募展の大賞を受賞して一躍時代の寵児となりました。しかし、日比野の活動を俯瞰する時、80年代はアーティストとしてのキャリアの一段階にすぎません。90年代には自らと向き合い、形のないものの表現を模索し、2000年代には関係性を探求するアートプロジェクトへと大きく舵を切りました。2010年代以降は美術館の館長あるいは大学の学長という役割を担いながら、美術をスポーツ、ケア、医療などと掛け合わせ、時に行政や企業とも連携しながら社会に結びつける実践を精力的に行っています。本展はそれらすべてをアーティスト日比野による「表現」と捉える観点から編まれたものです。
本展ではいくつものフィールドを横断しながら縦横無尽に活躍する日比野を、アーティストとして形成された過程を起点に、関わる人びとの視点を通して深掘りし、絵本や漫画を取り入れてエピソードを織り交ぜながら紹介します。手つきや振る舞い、姿勢に着目することで、必ずしも形や物として残らない2000年代以降の活動も含め、日比野の拡張してやまない芸術実践に通底するものを探ります。
日比野克彦
プロフィール
1958年岐阜市生まれ。東京藝術大学大学院在学中にダンボール作品で注目を浴び、1982年に日本グラフィック展大賞を受賞。以来、国内外で多数の個展・グループ展に出品する他、舞台美術や芸術祭のプロデュースなど、多岐にわたる分野で活動。近年は、各地で地域の参加者とその地域の特性や関係性、人びとの個性を生かしたアートプロジェクトやワークショップを数多く行っている。2015年からは障害の有無、世代、性、国籍などの背景や習慣の違いを超えた多様な人々の出会いによる相互作用を表現として生み出すアートプロジェクト「TURN」を監修。2017年から「アート×福祉」をテーマに「多様な人々が共生できる社会」を支える人材を育成するプロジェクト「Diversity on the Arts Projects(通称:DOOR)」を監修。現在、東京藝術大学長、岐阜県美術館館長、熊本市現代美術館館長。日本サッカー協会参与。
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