湯浅譲二の肖像企画・構成:湯浅譲二
2022年7月9日(土) 15:30開場・16:00開演
7月9日、水戸芸術館で私の肖像と題したコンサートが開かれることになりました。この公演日から、あと1ヶ月と3日で93歳を迎えるのを前にして、私の作品に慣れ親しんでくれている高橋アキさん、木ノ脇道元さん、山澤慧さんをはじめ力のある素晴らしい演奏家の皆さんが美しい響きの水戸芸術館に集結してどんな演奏を聴かせてもらえるか、とても楽しみにしています。 湯浅譲二
コスモロジーの反映としての音楽
「音楽とは何か?」
「その音楽を作っている人間とは何か?」
「その人間が生命を授かり、そして還る宇宙とは何か?」
湯浅譲二の音楽には、そうした根源的な問いが宿っている。そして、湯浅は「コスモロジー(宇宙観)の表現こそが音楽である」と語る。人間の内なる自然=宇宙、外なる自然=宇宙に支えられながら存在する自己を、音楽のなかでとらえて一気に浮かび上がらせようとしているのだ。
本公演は、湯浅譲二自身の企画・構成により、その創作の軌跡を辿る。「無限に広がる音の地平線」のイメージの下に作曲された〈ホワイト・ノイズによるイコン〉。西洋の二元論から離れ、両者が対立することなく融合し、境界が無くなる禅の思想を注入した〈相即相入〉。外的な観察によらず、内的な感覚、体細胞的な感覚によってフォルムを描きとっていく芸術表現をタイトルにもつ〈内触覚的宇宙II〉。盟友・武満徹に捧げられた〈ソリテュード・イン・メモリアム T. T.〉。音楽が自由に存在し、何にも制約されない文明以前の時代を想像し、人間の根本的な起源に触れる音楽的な始原を反映させたいと願った〈UPICによる始原への眼差〉。雅楽の舞楽に端を発する日本美学の3部構造を室内楽に採り入れて作曲された〈序破急〉。イギリスの精神科医レインの詩とも、劇とも、対話とも読める新しい詩に付曲した〈「Do you love me?」から〉。
科学の進歩により、人間はそれまで認識できなかった多くの事象を観察できるようになった。それに伴って人間の世界認識、宇宙認識も深化しなくてはならない。湯浅譲二の音楽は、その果てしない探求の道を照らす恒星のようだ。
【出演】
湯浅譲二(企画・構成・おはなし)
高橋アキ(ピアノ)
工藤あかね(ソプラノ)
木ノ脇道元(フルート)
内山貴博(フルート)
尾池亜美(ヴァイオリン)
山澤 慧(チェロ)
安江佐和子(パーカッション)
磯部英彬(エレクトロニクス)
片山杜秀(ナビゲーター)
【曲目】
〈ホワイト・ノイズによるイコン〉電子音楽 (1967)
〈相即相入〉2つのフルートのための(1963)
〈内触覚的宇宙Ⅱ-トランスフィギュレーション-〉ピアノのための (1986)
〈ソリテュード・イン・メモリアム T. T.〉ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための (1997)
〈UPICによる始源への眼差〉テープ音楽(1991)
〈序破急〉5人の奏者のための(フルート、ヴァイオリン、チェロ、打楽器、ピアノ)(1994-96)
〈「Do you love me?」から〉ソプラノのための (2002)
Ⅰ 私は夢を見た
Ⅱ.愛は似る 降りくる雪の…