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2015-07-09 更新

【公演に向けて】 【Interview】フィリップ・トーンドゥルさん(オーボエ) 待望の日本初リサイタル!

水戸室内管弦楽団(MCO)のオーボエ奏者として、小澤征爾総監督やメンバーから絶大な信頼を得ているフィリップ・トーンドゥルさん(1989~)。そのオーボエは、MCOでの数々の“名場面”(例えば第79回定期演奏会で聴かせたベートーヴェン〈英雄交響曲〉第2楽章でのソロや、第90回定期演奏会で披露したモーツァルト〈オーボエ協奏曲〉での名人芸)、あるいは茨城の学生を対象に定期的に行っているセミナーでのミニ・コンサートで、多くの聴衆を魅了してきました。

そのフィリップさんが挑む待望の日本初リサイタルまで、あと1か月となりました!
5月の第93回定期演奏会のリハーサル後、意気込みや聴きどころについて伺いましたので、ぜひご覧ください。

このインタビューは、近日中に動画でも公開します。そちらもどうぞお楽しみに!

Philippe Tondre

フィリップトーンドゥルインタビュー

 ―8月11日、フィリップ・トーンドゥルさんによる日本初のソロ・リサイタルを開催することになり、嬉しく思います。今は、小澤征爾総監督と水戸室内管弦楽団(MCO)第93回定期演奏会のリハーサルを終えたところですが、調子はいかがですか?

とてもうまくいっていると思います。ベートーヴェンの〈交響曲第2番〉は、とても挑戦しがいのある曲で、緻密な室内楽のようです。この作品の精神性を表現するためには、独特の明るくて輝きをはなつような音が求められます。マエストロオザワも言っていましたが、パパン、パパンというリズムがこの曲の主な流れを作っているので、それを表現する必要があるのです。

今日まで充実した練習ができたので、今夜の演奏会もうまくいくと思います!マエストロオザワとの共演はいつも新鮮ですし、とても光栄です。私たちはみな、一緒に演奏できることを楽しんでいます。

―MCOではこれまで、小澤総監督の指揮のもとベートーヴェンの交響曲第4、7、8番を取り上げ、今回は第2番です。小澤総監督の魅力をどう感じていらっしゃいますか?

マエストロは全てが特別です!舞台上に彼がいるだけで、その全てが意味を持っています。彼にはカリスマ性と音楽への深い敬意があります。求める音のために見せる身体の動きも本当に自然です。全てが音楽への敬意に満ちている。それが、彼の理想とする姿なのだと思います。だから彼の音楽はとても強い印象を与えるのだと思います。

舞台上のマエストロはリラックスして、完全に音楽に入り込んでいます。MCOでベートーヴェンの交響曲をやるのは、本当に素晴らしいアイディアだと思います。音楽創りはとてもうまくいっています。マエストロはもちろん、私たちにとって特別な存在です。彼の音楽はドラマティックで、ベートーヴェンが作品にこめた愛情や極端さも含まれていて。相反する音楽の特徴も表現できますし、とにかく彼のエネルギーは格別です。彼と共演できてとても嬉しいです。彼の音楽は緻密で、集中力など多くのことを要求されます。けれど不思議と演奏しやすいのです。メンバーはみな彼との共演を心地よく感じています。今夜の演奏をお楽しみに。

2015年5月_水戸室内管弦楽団第93回定期演奏会の様子


―小澤総監督はあなたに大きな信頼を寄せていますね。フィリップさんは、2009年に第9回国際オーボエコンクール・軽井沢で第2位受賞後、MCOにも参加してくださるようになりました。それから2010年に第65回ジュネーヴ国際音楽コンクール第3位、翌年には第60回ミュンヘン国際音楽コンクールで優勝、そのほかソロや室内楽、各地のオーケストラでの活動、セミナーでの教育活動など、素晴らしいご活躍です。この5年間のご自身の変化をどう感じていらっしゃいますか?

人は誰でも変化していますし、日々学んでいます。私が演奏活動を始めた時は、まだ少年のようなものでした。少年は言い過ぎかもしれませんが、とにかく若かった。そういう自分にとって、MCOにいるような素晴らしい演奏家や指揮者と、要求度の高い音楽を演奏するのはとてもやりがいのあることでした。同時に、駈け出しの演奏家としては、これから何が起きるのか見えずに、驚きも困難も経験します。そして若さゆえの自信から、何でもできると思ったりします。しかし時がたつにつれ、自分がどんな経験をして、音楽について多くのことを学べたことに気付くのです。

この5年は私にとって、とても面白いものでした。オーケストラの演奏についてたくさんのことを学びました。首席で演奏する際、そのポジションが何を意味するのか、どんな態度であるべきか、そしてどう責任を果たすべきか。セミナーでは「教えること」を学びました。ここに来るまで講師の経験がなかったので、どう進めたらよいかわかりませんでしたが、それも勉強になりました。

2015年5月_高校生のための吹奏楽セミナーの様子

ソロで演奏する際は、音楽のとらえ方がまったく変わります。オーケストラでの独奏は、オーボエという楽器をもっと主張する必要があります。また他の演奏家とどうコミュニケーションをとるべきかも学びました。昨年、MCOと指揮者なしでモーツァルトの〈オーボエ協奏曲〉を演奏しましたが、挑戦しがいのある大きな経験でした。緊張度も高かったです。もちろん人には見せませんが(笑)、プレッシャーも大きかったです。

2014年5月_水戸室内管弦楽団第90回定期演奏会での様子

この5年で学んだ一番大事なことは、落ち着いて忍耐強くあることです。もっと若い時はそういうことは考えず、とにかくやりたいことを全部やろうとして、それをするだけのエネルギーもありました。でも今は時の流れを尊重するようにしています。ここ数年の自分の成長にとって、これはカギとなるポイントでした。今はとても幸せです。人生が続くかぎり、これからも日々学び続けるつもりです。私はまだ25歳ですし、学ぶべきことはたくさんありますから。全ては流れのままに。その中で学び続けていけたら素晴らしいと思います。

―水戸には去年のあなたのソロを聴いてファンになった方がたくさんいます。またセミナーでの教育活動を通してファンになった学生も多いことでしょう。8月のリサイタルが本当に楽しみです。今回のプログラムはどのような考えで作られましたか?

一つのプログラムで、様々な音楽のスタイルを見せたいと思いました。ここ数年は、テーマを絞ったプログラムを組もうとしていました。例えばシューマンを中心にとか、フランス音楽にとか。今回は、いろいろな時代の音楽を組み合わせるようにしています。その方がバランスがとれていますし、聴衆が自由に、多彩な音楽を楽しめますから。これはオーボエにとって大事なことです。ハインツ・ホリガー氏いわく、オーボエには多くのレパートリーがあるので、それを知ってもらえるよう心がけるべきなのです。本当に多くの可能性があるので、それを念頭において今回のプログラムを選びました。

シューマンの〈アダージョとアレグロ〉は美しく、要求されるものも多く、人を惹きつける力のある音楽です。演奏会の冒頭で演奏することで、聴衆は音楽に集中し、感情移入してくれるはずです。ラヴェルの〈ソナチネ〉はとてもきれいで色彩に富み、心の琴線にふれるような作品です。元はピアノ曲ですが、オーボエとピアノの編曲を演奏します。まるで新しい作品のように楽しんでいただけると思います。ポンキエッリの〈カプリッチョ〉は超絶技巧的で、ロマンティックかつ詩的な曲です。第1部の締めくくりにふさわしいと思います。

第2部は少し趣向を変えます。ニールセンやケクランの作品を選びました。パスクッリ〈ドニゼッティの歌劇“ラ・ファヴォリータ”の主題による協奏曲〉は、ポンキエッリの作品と同じように、オーボエの超絶技巧をお楽しみいただけます。演奏会の最後にはぴったりの、盛り上がる曲です。プーランクの〈オーボエ・ソナタ〉は第2部の幕開けに最適だと思いました。とても神秘的で複雑に書かれているので、様々なキャラクターを演じるように吹く必要があります。このように一つのプログラムからオーボエの可能性を感じてもらえたらと願っています。その様々な音色、スタイル、キャラクターですね。

―オーボエの多彩な可能性や、あなたの新たな一面が見られそうですね。ケクラン作曲〈ティテュロスの休息〉では、オーボエ・ダモーレを独奏しますね。

はい、今回初めて演奏する曲です。ケクランはフランスのアルザス出身です。私も出身地が同じなので、自分のルーツを表すような曲を入れようと思いました。オーボエ・ダモーレの音色も大好きです。この曲はとても叙情的で哀愁をおびていて、とても神秘的な曲ですよね。時間や現実から人の心を解き放ってくれる曲です。そういうところが好きですね。名人芸を楽しむ曲ではありませんが、人間が持っている美が表現されています。メロディはとても雄弁で、しなやかで、情感にあふれています。人の声から生まれたような音楽だと思います。

―ピアノの加藤洋之さんとは何度か水戸で共演されています。彼との共演をどう感じていますか?

加藤さんとの共演はとても楽しいです。これまで素晴らしいひとときを過ごしました。学生向け吹奏楽セミナーでの講師ミニコンサートでは、カリヴォダ、ラヴェル、ポンキエッリの作品を演奏しました。私たちは演奏のスタイルやフレージング、音楽の感じ方を合わせるよう努めてきました。それが最高の結果を聴衆に届けることにつながるからです。セミナーでの演奏は、お互いのことをよく知る良い機会でした。

2015年5月_高校生のための吹奏楽セミナー 講師によるミニコンサートの様子

今回のように、ピアノと演奏するプログラムは、いつも大きな挑戦です。細部に磨きをかけなければなりませんからね。細部をいかに表現するかが、大きな違いを生むのです。今回のプログラムでは多彩な特徴、スタイル、見せ方があるので、細部の表現まで追求していきたいと思います。本番がうまくいくことを願っています!

―今後のますますのご活躍をお祈りしています!これからも日本でたくさん演奏を聴かせてくださいね。

ありがとうございます!リサイタルに招いていただき本当に感謝しています。ベストを尽くします。

―最後に、お客様へのメッセージをお願いできますか?

みなさん、8月11日に行う私のソロ・リサイタルにぜひいらしてください。とても多彩なプログラムを用意しています。オーボエの様々なスタイル、レパートリーをお届けします。会場で皆さんと一緒に音楽を楽しみたいと思っています!

2015年5月15日(金)
聞き手:高巣真樹(水戸芸術館音楽部門)