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2015-03-25 更新

【公演に向けて】 【Interview】ローランド・アルトマン(ティンパニ) ソリストとして水戸室内管弦楽団の仲間たちと待望の協演

皆さまこんにちは!

1月に大盛況のうちに終演した定期演奏会に続き、小澤征爾館長が指揮者として登場する、水戸室内管弦楽団(MCO)第93回定期演奏会。

第1部は指揮者なしで、ローランド・アルトマン(ティンパニ)、竹澤恭子(ヴァイオリン)とMCOによる待望の初共演を。そして第2部は、マエストロ小澤とMCOが近年集中的に取り組んでいる、ベートーヴェンの交響曲をお届けします。

演奏会に先駆けて、今回第1部でソリストとして登場するMCOのティンパニ奏者、ローランド・アルトマンへのインタビューを掲載します。
アルトマンは、元ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のソロ・ティンパニ奏者で、2012年からはMCOの楽団員として活躍しています。カルロス・クライバーやレナード・バーンスタインなど数々の名匠の信頼も厚く、とりわけウィーン国立歌劇場音楽監督を務めていたマエストロ小澤とは格別の友情が育まれ、現在MCOで活躍中です。

アルトマン氏は以前、「オーケストラのティンパニ奏者は“第二の指揮者”だと思うことがある」と語っていました。
楽曲とオーケストラの特性を熟知した上で奏でられる絶妙なティンパニの演奏は、まさにその言葉にふさわしい存在感があり、今やMCOになくてはならない存在です。ゲルスター作曲〈ティンパニと弦楽のためのカプリチェット〉では、勇壮で聴きどころが盛りだくさんのソロをたっぷりお楽しみいただきます。

演奏会に向けて、さまざなお話を伺いましたので、どうぞお読みください♪

 

ローランド・アルトマン インタビュー

アルトマンさんが初めてこの曲を演奏されたのは、ウィーンの楽友協会だったそうですね。

ええ、40年ほど前、テオドール・グシュルバウアー指揮のウィーン・バロック・アンサンブルと共演した時で、オーストリアでは初演だったと思います。弦楽器との演奏はこれで2度目ですが、今回はカデンツァ付きで演奏します。元々この作品で必要なティンパニは4つですが、今回はカデンツァのためにも5つ使って、高音や新しい音色を駆使した独奏をお届けします。

〈ティンパニと弦楽のためのカプリチェット〉を書いた作曲家オットマール・ゲルスターについてご紹介いただけますか?

ゲルスター(1897~1969年)はドイツの作曲家で、この作品は1932年に作曲されました。彼は第二次世界大戦後、東ドイツで重要な作曲家の一人とされていました。彼は調性のある音楽を書き、オペラや交響曲、室内楽など様々な作品が残されています。
当時、打楽器奏者がソロを演奏する作品は限られていて、ミヨーの〈打楽器と小管弦楽のための協奏曲〉、ジョリヴェの〈打楽器と管弦楽のための協奏曲〉、バルトークの〈2台のピアノと打楽器のためのソナタ〉、そしてこの曲など小規模な作品が少しあるくらいでした。でも今日では、日本の安倍圭子(マリンバ)、アメリカのゲイリー・バートン(ヴィブラフォン)、オーストリアのマーティン・グルビンガー(パーカッション)など、素晴らしいソリストがたくさんいて、その存在が作曲家に刺激を与え、打楽器のための作品が数多く生み出されています。

この作品のどのようなところに魅力を感じていらっしゃいますか?

ゲルスターは、ティンパニがやっていることを聴衆に伝えたかったのだと思います。大オーケストラで全員が演奏する時、ティンパニがどんな演奏をしているか気付きにくいですよね。この曲では、響きの土台は弦楽器が作りますが、それ以外に聴こえるのはティンパニだけ。そこに魅力を感じます。
具体的に作品を紹介しましょう。最初の8小節は、イントラーダ〔注:16,17世紀の舞台作品などで重要人物の登場の際、演奏された器楽曲〕のように始まります。その後、マーチのように厳格でリズミカルな音楽が続き、その後、ティンパニと弦楽の間でピンポンのようなやりとりがあり、静かで穏やかなソロがあります。民謡のような4小節からなるメロディで、嵐が訪れる前の静けさを思わせます。それから弦楽器がどんどん早くなり、嵐が訪れます!その後弦楽器だけの部分が続き、新しくミステリアスな音色で、ティンパニのソロ。そして次のアッチェレランド〔注:だんだん速くという意味〕が来て、荒れ狂うようなアレグロの部分が現れます。そのとき、私がカデンツァを演奏します。その後は最初に登場したマーチのような音楽が再び現れて終わりを迎えます。

アルトマンさんはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でのご活躍の他、現代音楽のスペシャリストとしても活躍されていたそうですね。

私は「ディ・ライエ」という現代音楽のグループに25年間参加し、当時活躍していたほぼ全ての作曲家の作品を演奏しました。難しかったのは、どう演奏したらよいか見当もつかない異文化の楽器の演奏を求められた時です。当時の作曲家はアフリカやアジア、カリブ海諸国など様々な国を訪れ、未知の楽器の音色に惹かれ、作品に取り入れていました。打楽器奏者は意識せずに多くのことができますが、文化が違うと、自分のテクニックが通用しないこともあるわけです。その楽器本来の音色を引き出したいなら、やはり現地の人が実際にどう演奏しているか観察し、真似してみるなど、探究する時間と機会が持てると望ましいですね。

水戸室内管弦楽団(MCO)では運営委員もお願いしておりますが、演奏会の曲目を検討する際、より現代的な作品のご提案もしてくださっていますね。

最近のMCOではドビュッシーやバルトークを演奏しましたが、1920~70年代にはもっといろいろな作品が作曲されています。室内オーケストラで演奏できる作品も多く、ミヨーやプーランク、オネゲル、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、ヒンデミットなど素晴らしい作曲家の音楽はまだまだありますから。

幅広い音楽活動をされる中で、どのようなことを大切にされていましたか?

音楽や絵画といった芸術に携わるのならば、自分を取り巻く時代に目を向けることが不可欠です。特に打楽器の世界では次々と新鮮で興味深い音楽が生まれていますので、どんどんやってみるべきです。私は同時代の音楽を演奏するグループに参加し、新しい可能性に挑戦することができて、本当に幸せでした。その一方でもちろん、古典派やロマン派の作品も演奏してきました。そうした経験はいわば、美術館を巡るようなものです。時にルーベンスやミケランジェロの絵画を見て、時に現代のアーティストの作品を見て…私はどちらも好きです。特に現代の作品にはいつも驚きと興味深さを感じます。好き嫌いはその人の自由ですが、まず作品を見てみようという好奇心は大切だと思います。

聴衆の皆様へメッセージをお願いできますか?

私が演奏中にスティックを落とさないよう、祈っていてください!もし落としたとしたら、少し大目に見てもらえると嬉しいです(笑)。冗談はさておき、皆さんには、この素晴らしいMCOの演奏会をぜひ楽しんでいただければと思います。

2015年2月
聞き手:高巣真樹

※2012年10月に行ったアルトマンさんへのインタビュー「新楽団員を訪ねて」では、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団でのこれまでの活動についてもお伺いしています。ぜひそちらもお読みください!