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  • 音楽

2016-10-13 更新

ナタリー・シュトゥッツマン 水戸について、MCOについて大いに語る

2008年 第74回定期演奏会

―――シュトゥッツマンさん、これまでにあなたは水戸室内管弦楽団(MCO)の独唱者として3回、リサイタル(冬の旅)で1回、そしてMCOの指揮者として1回、水戸芸術館に登場しています。まず初めに、これまでの水戸の印象をお聞かせいただけますか?

初めてお招きいただいて以来、私はずっと水戸芸術館を愛してきました。コンサートホールはすばらしい音響で、ステージと客席がとても近いので、大変心地よく感じます。水戸のお客様はとても教養があり、とても反応がよく、またあたたかいです。

これは、水戸市およびそこに住む人々の印象でもあります。水戸はとても静かで、穏やかな街だと思いますが、さまざまな芸術に対して偉大な伝統があります。小さなお店やレストランの雰囲気もすばらしく、例えばMCOのメンバーの皆さんとよく行く家族経営のレストランなどは、心のこもったおもてなしがあり、飾り気はありませんがあたたかく、料理はお見事の一言です!

――これまでのMCOとの共演で、あなたはオーケストラのメンバーと大変親密な関係を築き上げてきました。あなたにとって、MCOはどのようなオーケストラですか?

2014年 第89回定期演奏会終演後

MCOはまったく特別なオーケストラであり、そこには極めて高い演奏のクオリティーがあります。これまでの共演を通じ、ほとんどのメンバーと親しい友人になりました。

MCOには日本人の演奏家はもちろん、外国に住む日本人演奏家もいます。また、ヨーロッパやアメリカの演奏家も参加しています。このように、オーケストラの中で様々な文化が混ざり合っていることが魅力的です。

例えば、故ローランド・アルトマン氏はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の元ティンパニ奏者で、クライバー、カラヤン、バーンスタインといった指揮者のもとで演奏していた映像を、私が10代の頃から見ていたという方なのです。それ故、私が今回指揮者として、このような演奏家たちが集うオーケストラとともに音楽を作るということは、まったく特別な事態と言えます。

2014年 第89回定期演奏会(公開ゲネプロの様子)

―あなたは指揮者として活動を始めるにあたって、2009年に「オルフェオ55」という室内管弦楽団を組織しました。室内管弦楽団という小さいサイズのオーケストラに、なにか特別の愛着を持っていますか?

「オルフェオ55」を創設した時、私はユニークな試みとして、歌うことと指揮することという2つの活動をひとつに結びつけてみたいと思いました。このようなサイズの室内管弦楽団では、特有の個人的な関係がそれぞれの音楽家たちと結べるという共通点があります。100人からなるオーケストラを目の前にしたら、それはより難しいことになりますよね。実は、私が小さいサイズのオーケストラを指揮することはあまりなく、ほとんどは大きな編成の交響作品を指揮していますが、年に何回かでも小さいオーケストラの指揮に戻ることは良いことと考えています。大きなオーケストラを指揮する時とは別のレパートリーに取り組む機会となりますし、異なるクオリティーや着眼点が求められる、とても優美で洗練されたレパートリーに取り組むことになりますので、とても面白いです。あらゆるサイズのオーケストラを指揮することで、より完璧な芸術性に近づけると思います。

――リハーサル時、指揮台であなたが口ずさむフレーズは大変美しく、多くのメンバーを魅了しています。あなたにとって、「歌える」ことは指揮する時の「武器」になり得ますか?

2014年 第89回定期演奏会

ええ、指揮する時に歌手になれることは、音楽づくりを進めていくうえで武器になると思っています。なぜなら、私はしゃべり過ぎることが好きではないからです。オーケストラのメンバーは、いつでも何かを表現したいと望んでいます。音楽はある種本能的なものだと考えていますので、言葉を使って説明するより、私の声でフレーズを示すほうが好きです。演奏家の皆さんにとっても、私がこうありたいと願うフレーズを歌で聴いた方が、はるかにわかりやすいし愉快でしょう。私にとってもいい声のトレーニングになりますしね。(笑)


――前回のMCO
との共演以降、あなたは日本でサイトウ・キネン・オーケストラ、新日本フィルハーモニー交響楽団、小澤征爾音楽塾オーケストラなどを指揮していますが、あなたの師であるマエストロ小澤から何か言葉などはありましたか?

2014年 第89回定期演奏会リハーサル

はい。私はいつもマエストロにどうやったらいいかを尋ねます。彼は細かい点を見つけ、私を助けようとし、彼のすばらしい経験をシェアしてくれます。

また、彼はとても実践的ですね。「オーケストラにとってこの振り方はわかりやすいかしら?」などと自問するような小さなポイントを、彼は正確に拾い上げるのです。

彼は常に指揮のジェスチャーをより簡素に、よりクリアにしようとしていて、私は毎回多くを学んでいます。マエストロとともに行っているすべてのプロジェクトに深く感謝していますし、彼のサポートはとても光栄で、人生のかけがえのない経験となっています。

――今回のプログラムには18世紀、19世紀、20世紀にそれぞれ書かれた交響曲が3曲並んでいます。その意図をお聞かせください。

まさに3つの世紀の3つの交響曲を取り上げることが私の意図で、音楽の進化とともに、世紀を越えてつながっている関係性を明らかにしたいと思います。

例えば、モーツァルトのすぐ後にプロコフィエフを聴くことはとても面白いはずです。プロコフィエフは古典的な音楽の構造に惹かれていましたし、モーツァルトやハイドンのオーケストレーションから着想を得ていましたからね。そして、進化したように聴こえるビゼーの交響曲も、その構造は依然として古典派時代の作品ととても近いのです。

一晩で交響曲を3曲も聴くことなど滅多にないことでしょうから、とても特別なプログラムだと思いますよ。このクレイジーなアイデアをオーケストラとスタッフの皆さんが受け入れてくださって、とても嬉しいです。

――最後に、聴衆の皆様に何かメッセージをお願いいたします。

2014年 第89回定期演奏会

 私が言えるのはこれだけです。「水戸に戻って、オーケストラの皆さんと会い、水戸のお客様のために音楽を作ることが待ちきれない!」。水戸へ行くことは我が家に帰るようなもの。日本の“家族”が私を待っているのと同じだけ、私も彼らとの再会を心待ちにしています。

2016年8月 Eメールにて
聞き手:関根哲也

(協力:ヒラサ・オフィス)


水戸室内管弦楽団 第97回定期演奏会
10.29[土]18:30開演、10.30[日]14:00開演
料金(全席指定)S¥6,000 A¥5,000 B¥4,000 ユース(25歳以下)¥2,000
指揮:ナタリー・シュトゥッツマン
曲目:
モーツァルト:交響曲 第25番 ト短調 K.183
プロコフィエフ:交響曲 第1番 ニ長調 作品25〈古典的〉
ビゼー:交響曲 ハ長調
チケットのお取り扱い
水戸芸術館チケット予約センター TEL 029-231-8000
ウェブ予約 http://arttowermito.or.jp/tickets/ticket.html(要登録)
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