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2019-10-17 更新

茨城新聞 ATM便り(2019年10月13日付)「水戸室内管弦楽団第104回定期演奏会」

 水戸室内管弦楽団(MCO)第104回定期演奏会では「当代最高のホルン奏者」として名高いラデク・バボラークがホルン・ソロを披露します。バボラークは弱冠24歳で世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席ホルン奏者に就任。そのポストを離れた後は、ソリストやMCOなどのオーケストラのメンバーとして、そして近年は指揮者としても八面六臂の活躍を繰り広げています。

 ホルンという楽器は角笛が起源とされ、16世紀ごろには狩猟の際、馬上で肩に掛けて吹ける形になりました。その名残で現在もベル(音が出る部分)が後ろを向いています。現在のホルンはヴァルブが付けられ簡単に音を変えることが出来ますが、それ以前はベルに手を入れて音程を変えていました。今でも同様に細かな音程や音質を調整している点は、他の楽器にはないホルンならではの特徴です。

 改良が重ねられ、輝かしく神秘的な音をもたらす楽器としてオーケストラに欠かせない存在となったホルン。実は演奏するのがとても難しく、ギネス・ワールド・レコーズで「最も演奏が難しい楽器」の1つとして紹介されているほどです。その理由の1つは「音域の広さ」にあります。トランペットの音域がおよそ2オクターブ半であるのに対して、ホルンはおよそ4オクターブに及びます。直径1.7cmほどの円錐形のマウスピースに唇を振動させながら息を吹き入れて音を出すわけですが、最低音は1秒間に90回程度、最高音は600回以上唇を振動させています。他の金管楽器をはるかに上回るこの振動数の幅を、適切にコントロールして演奏すること自体が至難の業。それに加えて1つの指使いで出る音が多く、その間隔も狭いため、プロの奏者ですら音を外すことがあるほど難しい楽器なのです。

 今回の演奏会で、バボラークは難曲として知られるロゼッティの〈ホルン協奏曲 ニ短調〉を前半で披露し、後半は指揮者として登場。気心知れたMCOメンバーたちと共に色彩感豊かなロマン派の名曲をお届けします。(水戸芸術館音楽部門学芸員・鴻巣俊博)