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2019-10-25 更新

水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン&ミニコンサート 曲目解説

◎講習曲

ボザ:夏山の一日

 ウジェーヌ・ボザ(1905~1991)は管楽器による室内楽作品を得意としたフランスの作曲家。夏のバカンスで目にした風景を音楽で描いた〈夏山の一日〉(1953)は、親しみやすい曲想で近代フルート四重奏の名曲となっています。ここでは全4楽章のうち3つの楽章を取り上げます。
第1楽章 パストラール(牧歌) 朝もやの中に牧人たちの歌が聞こえてきます。やがて朝陽が上ると鳥たちが囀り始めます。
第2楽章 急流の淵にて 軽やかに流れ、岩にぶつかり渦を巻く渓流。遠くに響く鐘の音はドビュッシーの〈雪は踊る〉の旋律。
第4楽章 ロンド 村人たちの楽しげな輪舞。踊りの旋律が繰り返されながら徐々に盛り上がってゆきます。
 

阿部勇一:超絶技巧練習曲 第9番 〈ブルレスカ〉

 阿部勇一(1968~)は、吹奏楽のための〈フューチュリスム〉と行進曲〈ラメセスⅡ世〉で、1992年度と95年度の2回、作品が吹奏楽コンクール課題曲に選ばれている作曲家。フランツ・リストのピアノの傑作〈超絶技巧練習曲〉をタイトルに冠したこのシリーズは、すべてクラリネット四重奏のための作品で、この第9番(2018)が最新作です。副題の「ブルレスカ Burlesca」とは、「ふざけた」「いたずらっぽい」という意味に由来する滑稽な音楽のこと。作曲者は「まるでサーカスのピエロがステージでおどけているようなイメージ」で作曲したと述べています。演奏にも曲芸的なテクニックが要求されることは言うまでもありません。
 

デ・ロレンツォ:トリオ・ロマンティコ 作品78

 レオナルド・デ・ロレンツォ(1875~1962)はイタリア出身でアメリカに渡り、ニューヨーク・フィルハーモニックのフルート奏者として活躍しました。また名門イーストマン音楽学校でフルートの演奏法の改良に取り組んだ教育者でもありました。作曲家としてはフルートの音楽を中心に約300曲があり、自分や生徒のための演奏難易度の高い作品が多く見られます。1960年に楽譜が出版された〈トリオ・ロマンティコ〉もその一つ。様々な書法の音楽が物語の場面のように次々に交代し、その間に時折冒頭の主題が回帰します。テンポが細かく揺れ、多くの部分で3つのパートが別々に動く、アンサンブルの難しい作品です。
 

プレトリウス(水口 透 編曲):テルプシコーレ舞曲集

 ミヒャエル・プレトリウス(1571~1621)はバロック時代初期のドイツを代表する音楽家で理論家。《テレプシコーレ舞曲集》(1612)は当時フランスで踊られていた舞曲をドイツに紹介すべくまとめられた、312曲もの膨大な曲集です。ここでは4曲を取り上げます(括弧内の数字は曲集の番号)。
パッサメッツォ(288) イタリアで発展し、プレトリウスの時代に流行した2拍子の舞曲。
ブーレ(32) フランス中南部起源の速い2拍子の舞曲。求愛の踊りとも言われています。
スパニョレッタ(27) 「スペイン風」という意味で、シチリア島の舞曲「シチリアーナ」とよく似た、ゆったりとした3拍子の舞曲です。
ヴォルタ(201) 「回転」の意。男性が回りながらペアの女性をジャンプさせる南フランスの速い3拍子の舞曲。
 

◎講師によるミニコンサート

ホルスト(スタントン編曲):吹奏楽のための第1組曲 変ホ長調 作品28の1、第2組曲 ヘ長調 作品28の2

 組曲《惑星》で有名なイギリスの作曲家グスターヴ・ホルスト(1874~1934)が軍楽隊(ミリタリー・バンド)のために作曲した2つの組曲は、吹奏楽の古典的名曲として知られています。ホルストの時代のイギリスの吹奏楽団(軍楽隊)は、現代の大規模な編成とは違い、25人程度の小編成が標準でした。ホルストの2つの組曲も小編成バンドでの演奏を想定したシンプルなオーケストレーションになっています。今回はこれをさらに4声部と打楽器に凝縮した編曲版を使い、講師たちの合奏でお聴きいただきます。
 《第1組曲》(1909)は3曲からなり、第1曲冒頭の低音部の主題(es-f-c-b…)が変形されながら全編に登場します。

第1曲 シャコンヌ バロック時代の3拍子の舞曲の形式にもとづいています。低音部でes-f-c-b…の主題が繰り返され、その上に変奏が築かれます。
第2曲 間奏曲 A-B-Aの三部形式。A、Bどちらの旋律にもシャコンヌの主題が巧妙に組み込まれています。
第3曲 行進曲 A-B-Aの三部形式。第2曲と同様、A、Bはどちらもシャコンヌの主題に由来します。最後にAとB両方の旋律が重ねられて、曲は大きく盛り上がります。
 
 《第2組曲》(1911/1922)は全4曲のなかに8曲の民謡が登場します。

第1曲 行進曲 行進曲のテンポにのせて4曲の民謡がメドレーのようにつながります。
第2曲 無言歌〈恋人を愛する〉 恋人と離れ離れになった女性の想いを歌った民謡の旋律が抒情的に奏でられます。
第3曲 鍛冶屋の歌 4/4+3/4の変拍子が特徴的。鍛冶屋の槌音が連想されるリズミカルな楽章です。
第4曲 ダーガソンによる幻想曲 8小節のフレーズの繰り返す〈ダーガソン〉と呼ばれる舞曲に、有名な〈グリーンスリーヴス〉の旋律が重ねられます。
 
水戸芸術館音楽部門 篠田大基