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2022-03-21 更新

【茨城新聞・ATM便り】3月20日掲載の記事をアップしました~5月18日、19日 水戸室内管弦楽団 第109回定期演奏会~

茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。3月20日掲載の記事を転載します。今回は「水戸室内管弦楽団 第109回定期演奏会」にちなんだ記事です。


アルゲリッチと共演

2019年5月、水戸室内管弦楽団 第103回定期演奏会の様子(撮影:大窪道治)
 
 当代随一の伝説的ピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。アルゼンチンが生んだこの偉大なピアニストの演奏は聴く人の心を捕え、音楽を聴くことの純粋な喜びをあらためて感じさせてくれます。水戸芸術館の専属楽団・水戸室内管弦楽団(MCO)は、別府アルゲリッチ音楽祭との共同制作により2017年からアルゲリッチとの共演を重ねてきました。東京や大阪といった大都市ではなく、水戸と大分という地方都市から芸術文化を発信し続けているという面でもこの共演は大きな意義を持つといえるでしょう。

 2017年、MCOとアルゲリッチの初共演の曲として選ばれたベートーヴェンの〈ピアノ協奏曲 第1番〉は、彼女が7歳ですでに演奏していた作品。演奏中に笑顔を見せることは稀だと言われているアルゲリッチですが、第1楽章が終わると「Ah, OK」とつぶやき、指揮を務めた小澤征爾館長とMCOメンバーに満足気な笑顔を向けたのが印象的でした。

 2018年の共演では小澤館長は療養のため指揮をすることが叶わず、指揮者なしの演奏となりました。そこでアルゲリッチが選んだのはショスタコーヴィチの〈ピアノ協奏曲 第1番〉。テンポと曲想が目まぐるしく変わるこの曲を指揮者なしで演奏するのは至難の業ですが、MCOの奏者の能力と自発性の高さを認めての選曲でしょう。トランペット・ソロにはセルゲイ・ナカリャコフが駆け付け、夢の豪華共演となりました。3回目の共演となった2019年にはアルゲリッチが小澤館長との共演を約束していたベートーヴェンの〈ピアノ協奏曲 第2番〉の演奏が実現。これまでの2回よりもさらにリラックスした雰囲気の中、MCOメンバーと会場に集う温かい聴衆への信頼感がにじみ出るような演奏でした。

 そして今年5月、アルゲリッチが最も好きな作曲家だと公言するシューマンの〈ピアノ協奏曲〉で4回目の共演が予定されています。「一生を通じて彼女の音楽的な自画像となる曲」とも称されるこの作品。今回は指揮者なしで、MCOとアルゲリッチが培ってきた信頼関係から導き出される室内楽的な響きを追求します。前半はMCOメンバーであるラデク・バボラークの指揮で、重厚なベートーヴェンと木管の響きに彩られたブラームスの作品をお届けします。こちらもお楽しみに。
 
水戸芸術館音楽部門学芸員・鴻巣俊博