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2022-05-31 更新

【茨城新聞・ATM便り】5月26日掲載の記事をアップしました~新ダヴィッド同盟 第6回演奏会~

茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。5月26日掲載の記事を転載します。今回は水戸芸術館専属楽団「新ダヴィッド同盟」に関する記事です。


大家円熟の「ソナタ」

2017年12月、新ダヴィッド同盟 第5回演奏会の様子
 
 来る6月17日に「新ダヴィッド同盟」の演奏会があります。「水戸室内管弦楽団」と並び音楽部門の活動の柱とも言える「新ダヴィッド同盟」は、国際的に活躍している庄司紗矢香(ヴァイオリン)が中心となり、東京クヮルテットで40年以上活動を続けたベテランの磯村和英(ヴィオラ)、主にドイツで活躍する俊英・石坂団十郎(チェロ/今回は不参加)、ソロに室内楽に意欲的な活動を続ける小菅優(ピアノ)という、日本を代表する演奏家たちが集まった水戸芸術館専属の室内楽グループです。

 プログラムは、モーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第1番」、ブラームスの「ヴィオラ・ソナタ 第1番」、シューマンの「ヴァイオリン・ソナタ 第1番」、モーツァルトの「ケーゲルシュタット・トリオ」の4曲が予定されています。
 この中で、特にご注目いただきたいのがシューマンとブラームスの作品です。

 ロマン派音楽の旗手でもあったシューマンは、当楽団の名称の由来にもなった想像上の芸術グループ「ダヴィッド同盟」を立ち上げ、自らの分身とも言えるフロレスタンやオイゼビウスの名を借りて活発な批評活動を行いました。ショパンやメンデルスゾーンといった同志たちの優れた作品を紹介する一方、俗物的な作曲家に対しては歯に衣着せぬ物言いで痛烈に批判しました。

 ずば抜けた文章力と鋭い批評眼を持っていたシューマンが、その才能をいち早く見抜いたのが20歳以上も年下のブラームスでした。ローマ神話の女神ミネルヴァの誕生に例えるほど、シューマンにとってブラームスの出現は大きな衝撃だったようです。

 ブラームスもまたシューマンを深く尊敬し、その死後も未亡人となったクララほかシューマン一家をあたたかく支えたと伝えられています。
 演奏会では、それぞれの晩年のソナタが取り上げられます。ロマン派の大家が到達した円熟の境地を、「新ダヴィッド同盟」の演奏でご堪能ください。
 
水戸芸術館音楽部門主任学芸員・関根哲也