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2022-07-21 更新

【茨城新聞・ATM便り】7月18日付の記事を掲載しました~ちょっとお昼にクラシック・濱田芳通~

茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。7月18日掲載の記事を転載します。今回は7月28日に開催する「ちょっとお昼にクラシック 濱田芳通(リコーダー)」に関する記事です。


「笛の楽園」名曲披露

濱田芳通さん(リコーダー奏者)


 昼下がりに本格的なクラシックの演奏が楽しめるシリーズとして人気の「ちょっとお昼にクラシック」。来る7月28日には、日本を代表するリコーダー奏者・濱田芳通さんが登場し、トーク付きの1時間のコンサートを行います。

 リコーダーは、教育用の楽器として、第二次世界大戦後、日本でも取り入れられました。私たちがもっとも親しんでいる楽器の一つと言ってもいいでしょう。一方で、リコーダーは、起源は不明であるものの、西洋音楽で使われる楽器の中でもっとも古い歴史を持っている楽器の一つでもあります。せばめられた気道から歌口に息を送る縦笛の一種であるリコーダーは、比較的簡単に音を出すことができるため、中世の時代には歌の伴奏や舞曲の演奏など、民衆の間にもかなり普及していたと言われています。

 16世紀に入ると、リコーダーのための教則本や理論書が書かれ、高度なテクニックを持つリコーダー奏者も現れます。その一人が、コンサートで取り上げられる《笛の楽園》の作曲者ヤコブ・ファン・エイク(1590頃〜1657)です。オランダの貴族であったエイクは、当時流行していた歌の旋律などをリコーダーで吹いて変奏を施し、さらに超絶技巧を織り交ぜて、聴く人を驚かせ、喜ばせていたそうです。

 それらは、曲集《笛の楽園》としてまとめられました。リコーダーのために書かれた曲集としては史上最大と言われ、150曲ほどが収められています。中には、ジョン・ダウランドが作曲し当時のヨーロッパで随一の人気を誇った〈涙のパヴァーヌ〉、ジュリオ・カッチーニが作曲し現代でも多くの声楽家が愛唱している〈アマリッリ麗し〉なども含まれています。

 コンサートでは、リコーダー奏者の濱田芳通さんが曲の由来や楽器についての解説を交えながら、《笛の楽園》に収められている有名曲を演奏します。私たちが知らなかったリコーダーの奥深い世界を見せてくれるに違いありません。
 
水戸芸術館音楽部門主任学芸員・関根哲也