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2022-08-05 更新

【茨城新聞・ATM便り】8月4日付の記事を掲載しました~ちょっとお昼にクラシック・森谷真理~

茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。8月4日掲載の記事を転載します。今回は8月17日に開催する「ちょっとお昼にクラシック 森谷真理(ソプラノ)」に関する記事です。


人気歌手、水戸で初演

森谷真理さん(ソプラノ)
© タクミジュン

平日の昼下がり、手軽な料金で一流の演奏をお楽しみいただける「ちょっとお昼にクラシック」。8月17日には国際的な活躍を続け、日本で最も人気のあるソプラノ歌手の1人、森谷真理さんの歌声をお楽しみいただきます。

森谷さんは栃木県小山市出身。水戸での演奏会は今回が初めてですが、子どもの頃に梅を観に水戸を訪れたことがあるそうです。そんな北関東育ちの森谷さんですが、オペラ歌手としてのキャリアのほとんどは欧米で積み上げられたもの。

名門・マネス音楽院で学ぶなど米国で研鑽を積み、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場〈魔笛〉公演で夜の女王役に抜擢されます。メトロポリタン歌劇場といえば、パリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場等と並ぶ世界五大歌劇場の一つで、約4000席を有する巨大な劇場(他の歌劇場は2000席前後)。オペラではマイクを使用しないので、この劇場の隅々まで声を届かせるためには、声量だけでなく声を力みなく共鳴させる技術が求められます。

ましてや夜の女王は、超高音でヒステリックな母親の叫びを表現するため、確固たるテクニックがなくては歌えない役。森谷さんは「メト」で「夜の女王」という偉業を20代で果たし、聴衆からは大喝采が送られました。

その後、森谷さんはヨーロッパに拠点を移し、オーストリア・リンツ州立劇場の専属歌手を務めます。専属歌手はその劇場で上演される様々な演目に出演するため、例えば午前中は〈椿姫〉の衣装合わせ、午後は〈カルメン〉のリハーサル、夜には〈ばらの騎士〉の舞台に立つ、というような日々を送ります。主役の歌手がゲストの場合にはほぼリハーサルなしで本番に臨む時もあり、歌手、そして役者としての瞬発力が鍛えられる仕事です。

2019年に完全帰国するやいなや、日本のオペラファンの心を掴んで離さない森谷さんの歌声はさらに進化を続け、今では歌曲のレパートリーも広げています。今回のコンサートではあらゆる歌手から絶大な信頼を得ている河原忠之さんのピアノとともに、〈野ばら〉や〈鱒〉などの親しみのある歌曲、そして他ではなかなか聴くことができない森谷さんよるプッチーニ・オペラのアリアの数々をお届けします。

水戸芸術館音楽部門学芸員・鴻巣俊博