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2023-04-06 更新

【茨城新聞・ATM便り】4月6日付の記事を掲載しました~藤村実穂子 メゾ・ソプラノ リサイタル~


茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。4月6日掲載の記事を転載します。今回は4月16日に開催する「藤村実穂子 メゾ・ソプラノ リサイタル」に関する記事です。


世界の歌声を間近で

 大の野球好きである私は、WBCの侍ジャパンを毎試合、食い入るように見ていました。強く印象に残っているのは、やはり大谷翔平選手をはじめとするメジャーリーガーたちの活躍ぶりです。

 彼らのプレーに熱狂しつつ、仕事柄、どうしてもクラシック音楽の世界を思い出します。水戸芸術館の専属楽団である「水戸室内管弦楽団」や「新ダヴィッド同盟」は、現実に海外で活躍している演奏家たちを含む、侍ジャパンのようなグループなのだとあらためて感じました。

 そして、今月16日にリサイタルを行うメゾ・ソプラノの藤村実穂子さんも、まさにメジャーリーガー級の歌手であると思います。

 藤村さんは東京藝術大学大学院を修了後、20世紀の名バリトン歌手、ハンス・ホッター氏の教えを受けたことをきっかけにミュンヘンに留学。2000年にはウィーン国立歌劇場、2002年にはバイロイト音楽祭にデビュー。その後、ミラノ・スカラ座、ニューヨーク・メトロポリタン歌劇場など、歌手であれば誰もが憧れる世界トップの劇場で歌い続けています。

 特筆すべきなのは、《ワルキューレ》のフリッカ役、《パルジファル》のクンドリ役(いずれもワーグナー作曲)など、主役級の重要な役を多く歌っていることです。再び野球に例えるなら、メジャーリーグのチームで打線の中軸を務めるようなものだと言えるでしょう。

 欧米の歌手たちにもまったく引けを取らない強靭な歌声だけでなく、繊細な表現にも長けた藤村さんの活躍は、オペラの世界にとどまりません。2017年10月には小澤征爾指揮水戸室内管弦楽団によるベートーヴェン作曲「第九交響曲」のメゾ・ソプラノ独唱に抜擢されたほか、昨年はソリストとして参加したアルバム(マーラー作曲「千人の交響曲」)が「第64回グラミー賞」に選ばれました。

 世界中で引く手数多の藤村さんが、5年ぶりに水戸芸術館でリサイタルを開き、モーツァルトやマーラーなどの歌曲を聴かせてくれます。世界を熱狂させる歌声に、間近で接することができる貴重な機会です。
 
水戸芸術館音楽部門主任学芸員・関根哲也