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2023-11-18 更新

【茨城新聞・ATM便り】11月16日付の記事を掲載しました~バボラーク・アンサンブル with 吉野直子~



茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。11月16日掲載の記事を転載します。今回は11月26日に開催する「バボラーク・アンサンブル with 吉野直子」に関する記事です。


21世紀のチェコ代表

今月26日に演奏会を行う「バボラーク・アンサンブル」は、チェコが生んだ天才的ホルン奏者であり、水戸室内管弦楽団のメンバーとしてもおなじみのラデク・バボラークが2001年に結成したホルンと弦楽四重奏のグループです。メンバーは、バボラークがプラハ音楽院で勉強していた頃からの仲間で、全員がチェコ生まれです。

チェコと言えば、今年3月に行われたWBCでの日本対チェコの試合を思い出す人も多いでしょう。大谷翔平選手も自身のSNSに「Respect」と綴り、彼らの健闘を称えました。チェコでは、野球はアメリカのスポーツという理由で、共産主義体制下では長く禁止されていましたが、短い間に国際大会に出場できるほど実力を高めたようです。

野球とは対照的に、クラシック音楽の分野ではチェコは長い歴史を持っています。チェコの音楽文化の特徴として、バボラークは「音楽家が国内にとどまらずヨーロッパ各地に分散したこと」を挙げています。例えば、18世紀チェコの作曲家アントニーン・レーズレルは「アントニオ・ロゼッティ」と自らの名前をイタリア風に改名してヨーロッパ中で活躍したと伝えられます。

また、イタリアでオペラ作曲家として成功したミスリヴェチェク、ウィーンを経てフランスでもその名を馳せたレイハなどの活躍を見ても、チェコがクラシック音楽の発展を影で支える重要な役割を果たしてきたことがわかるでしょう。

19世紀後半から20世紀になると、民族主義の高まりとともにチェコの独自性を前面に出す作曲家も現れました。スメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェクらがその代表的存在です。

そのような長い歴史を持つチェコ音楽の21世紀を代表する人物がラデク・バボラークと言えるでしょう。今回の演奏会では、故郷の仲間とともにベートーヴェンやブラームスの室内楽(ホルンと弦楽四重奏への編曲版)を演奏するほか、日本を代表するハープ奏者・吉野直子をゲストに迎えてのマーラー「アダージェット」なども予定されています。現代のチェコの演奏家たちがドイツ・オーストリアの古典的名作をどのように”料理”するのか、ご期待ください。

水戸芸術館音楽部門主任学芸員・関根哲也