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2024-01-16 更新

【茨城新聞・ATM便り】1月14日付の記事を掲載しました~MCOセミナー・ウインズ2024~



茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。1月14日掲載の記事を転載します。今回は1月21日に開催する「MCOセミナー・ウインズ2024」に関する記事です。


140年の歩みに思いをエドヴァルド・グリーグ

ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグ(1843~1907)の組曲《ホルベアの時代から》は、まずピアノ曲として1884年に作曲され、翌年に弦楽合奏に編曲されて、さらに広く知られるようになりました。
水戸室内管弦楽団(MCO)も演奏したことがあり、CD化もされています。1月21日の「MCOセミナー・ウインズ」では、MCOのメンバー4人と、そのレッスンを受けた茨城の管楽器アンサンブル4団体が、合同でこの曲の吹奏楽版を演奏します。

《ホルベアの時代から》が作曲された1884年は、日本では明治17年。鹿鳴館で舞踏会が始まったのがこの年です。日本が欧米に認められる近代国家となるべく奮闘していた時代でした。音楽の分野では少し遅れて1890年代から、近代日本音楽のあり方が議論され始めています。そのなかでグリーグは、同時代の音楽家であり、クラシック音楽とノルウェーの伝統を融合して独自の音楽を生み出した点で、文化人たちに注目されていたようです。作曲家の小松耕輔は「理想的国民楽」という論文で、グリーグを西洋音楽受容の模範と捉えて絶賛しました。

そんな時代から100年後。水戸芸術館とMCOが誕生したのは1990年でした。

「日本で、いわゆる洋楽を容れてからもほぼ百年あまり。ちょうど水戸が市になったのと同じ頃、日本でもドレミファでもって音楽をやり、演奏をしたり、作曲したりする仕事が始まりました。百年間やってきて、どんな意味があっただろうか。(中略)ぼくは、日本で育ち、それから、外国へ行って音楽家として優れた活躍をしている人たちを呼び集め、一団となって演奏してもらったらどうかということを考えました。」

水戸芸術館の開館記念式典で、吉田秀和初代館長はMCOのコンセプトをこのように述べました。

《ホルベアの時代から》が作られた時代から今年で140年。MCOの日本を代表する演奏家たちと彼らの薫陶を受けた茨城の演奏家たちの合奏でこの曲を聴き、近代日本音楽の歩みに思いを馳せてみませんか。


水戸芸術館音楽部門学芸員・篠田大基