チケット

【重要なお知らせ】

  • コラム
  • 音楽
  • 茨城の演奏家による演奏会
  • 公演

2024-06-17 更新

【茨城新聞・ATM便り】6月16日付の記事を掲載しました~セバスチャン・ジャコー(フルート)&吉野直子(ハープ)~

茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。6月16日掲載の記事を転載します。今回は6月22日に開催するセバスチャン・ジャコー(フルート)&吉野直子(ハープ)のデュオ・リサイタルに関する記事です。


小澤さんへの感謝の曲

5月26日に「小澤征爾 水戸芸術館館長・水戸室内管弦楽団総監督 お別れ会」が開催されました。詰めかけた多くの参会者の前で、水戸室内管弦楽団(MCO)はバッハの「G線上のアリア」などを献奏し、2月6日に亡くなった小澤征爾さんを偲びました。偉大な故人を想い、涙する演奏家も多くいました。

6月22日にデュオ・リサイタルを行うフルートのセバスチャン・ジャコー、ハープの吉野直子も、それぞれに小澤さんと深い音楽的関係にありました。

ジャコーは2022年、“世界最高のオーケストラ”とも言われるベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者に就任し、一躍時の人となりました。しかし、小澤さんはその10年以上前から、当時まだ20代前半だったジャコーの実力を認め、サイトウ・キネン・オーケストラに迎え入れていました。彼はその後、MCOのメンバーにも加わります。

吉野直子もデビュー直後の1988年、小澤さんが指揮するベルリン・フィルの定期演奏会にソリストとして抜擢されました。1990年のMCO創立以降、水戸芸術館のステージにも吉野直子は数多く登場していますが、その背後には小澤さんからの変わらぬ厚い信頼があったのです。

今回のデュオ・リサイタルでご注目いただきたい曲のひとつに武満徹の「海へIII」があります。この曲の弦楽合奏付きの版は、1998年のMCO第1回ヨーロッパ・ツアーで取り上げられ、吉野直子はハープ独奏者として、小澤さんの指揮、工藤重典のアルト・フルート独奏と共演しました。ウィーン、フィレンツェ、チューリヒなどヨーロッパ5都市で演奏され、本場の聴衆から大きな注目を集めました。東洋人が西洋音楽に専心する意味を生涯にわたって追求してきた小澤さんの精神が端的に表れた演目であり、その精神はステージに立つすべての演奏家に浸透していました。

同曲は、ツアー直後の第33回定期演奏会で演奏されて以来、25年以上の時を経て、水戸芸術館に帰ってくることになります。その響きには、ジャコーも吉野直子も深く尊敬していた小澤さんへの感謝の想いが溢れているはずです。


水戸芸術館音楽部門主任学芸員・関根哲也