チケット

【重要なお知らせ】

  • コラム
  • 音楽
  • 公演

2025-06-26 更新

【茨城新聞・ATM便り】6月26日付の記事を掲載しました~カルテット AT 水戸 第3回演奏会~

茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。6月26日掲載の記事を転載します。
今回は、7月19日(土)に開催する「カルテット AT 水戸 第3回演奏会」に関する記事です。

演奏会は、7月19日(土)、14時開演。
出演は、川﨑洋介さん、西野ゆかさん(ヴァイオリン)、柳瀬省太さん(ヴィオラ)、辻本玲さん(チェロ)です。
チケットは、全席指定一般4,500円、U-25(未就学児不可)1,500円。
皆さまのご来場をお待ちしております。


 

弦楽四重奏 名作で魅了

 小澤征爾前館長が絶大な信頼を寄せ、水戸室内管弦楽団のほかオタワ・ナショナル・アーツセンター管弦楽団などでもコンサートマスターを務めている川崎洋介氏を中心に、国内外で活躍する西野ゆか、柳瀬省太、辻本玲の各氏が集った水戸芸術館専属楽団「カルテット AT 水戸」。時代を越えて愛される弦楽四重奏の名作の魅力を広く伝えるとともに、まだ知られていない優れた作品を紹介することを活動の柱としています。来る7月19日の第3回演奏会でも、このコンセプトを軸としたプログラムをお楽しみいただけます。
ハイドンの弦楽四重奏曲作品33の2は、「ロシア四重奏曲」と呼ばれる全6曲からなる弦楽四重奏曲集のうちの1曲で、ニックネームは〈冗談〉。曲が終わりそうで終わらない…と見せかけて、本当の終わりは中途半端なところで突然に訪れるというユーモラスな曲です。古典派の祖・ハイドンの作品らしく明快な書法で、「何が〈冗談〉なのか」も一聴瞭然(?)でしょう。
 ロシアの現代作曲家レーラ・アウエルバッハの名前には、あまりなじみがないかもしれません。彼女の弦楽四重奏曲第3番〈セテラ・デサント〉は、作曲家の内なる思考をめぐるかのような作品です。「だから私はあなたなしでは生きていけない…」「平和を望むなら戦いに備えよ」などのラテン語による哲学的な8つのソネットが添えられた本作は、とても現代的なメッセージが込められた作品であり、今回取り上げられることになりました。
 ベートーヴェンの〈ラズモフスキー第1番〉は、彼自身が作曲の新しい方向性を見出すきっかけになったともいうべき創作中期の大作です。ハイドンやモーツァルトといった古典派の先輩たちの弦楽四重奏曲とは違うテイストを追求し、独自の作風を確立しようと模索するなかで生まれました。古典派の弦楽四重奏曲では、大体の型が懐石料理のように決まっていますが(たとえば、第1楽章にソナタ形式、第2楽章にアリア、第3楽章にメヌエット、第4楽章にロンドのように)、ベートーヴェンは本作の全楽章をソナタ形式で作曲しました。もはや4楽章というより、独立した4曲が合わさったかのように思える超弩級の作品ですから、聴くほうも弾くほうも武者震いすることでしょう。
水戸芸術館専属楽団・カルテットAT水戸の活躍をどうぞお聴き逃しなく!

水戸芸術館音楽部門学芸員・角増 柊