2015-07-11 更新
Mocky『KEY CHANGE』

水戸芸術館のミュージアム・ショップ「コントルポアン」では多彩な商品を扱っています。
美術展の関連グッズや書籍、食器、ガチャガチャ、香水、カレンダー……
「なんでもある!」という感じの雑貨屋さんとはひと味違っていて、
置いてある商品すべてに、キラリと光るセンスが感じられるお店です。
そんな中で僕がマメにチェックしているのがCDです。
館で演奏会を開催した方の作品はもちろん、
現代音楽やノイズ系、
エレクトロニカ、インディー・ポップ、レアなサントラ、
果ては水戸で活動しているバンドの作品まで、
トガったCDがたくさんあるのです。
こんなところ(失礼)にこんな作品が!ということもしばしば。
芸術館によく来る方なら、必ず覗いていただくことを自信を持ってオススメいたします!
実際今日も行ってみたら、大友良英さんの新作『Guitar Solo 2015 LEFT』が入荷されてました!
新作も頻繁に入荷しているんですね。
と、そのとき、店内ではいい感じのスローなジャズが流れていたので、
なにかな?と思い店員さんに聞いてみたところ、
なんとMocky(モッキー)の新作だそうじゃないですか!
驚き!
思わず買ってしまいました。
僕は彼の大ファンなのです。
モッキーはカナダ人のアーティストです。
(前はベルリン、今はロサンゼルスに住んでいるそうです)
元はエレクトロ・ファンクやヒップホップ寄りの音だったのですが、
6年前の前作『Saskamodie』からのんびりしたジャズに接近し、
ちょっと話題になりました。

Mocky『Saskamodie』
ちなみにこの作品も、コントルポアンで取り扱っています。
そんな前作から1曲、『Birds of a Feather』のライブ映像を発見したので、
ご覧ください。
どうです?
なかなか良い雰囲気でしょう。
これが出たときは、DJのジャイルス・ピーターソンがラジオでゴリ押しをしていました。
前作『Saskamodie』のすごかったところは、
こういった1960年代ジャズ風の曲を、モッキー自身が楽器を演奏し、
セルジュ・ゲンズブールらが使用していたFerber Studiosでレコーディングしたという、
ほぼ1人で作った本気のジャズアルバムだったところです。
(ゴンザレスやジェイミー・リデルらもサポートで参加はしていましたが)
ロンドンやウィーンのビート・メイカーで同じような制作スタイルを取る人たちは、
スモーキーでダビーでシリアスな雰囲気の音楽を作っていますが、
モッキーさんは違います。
なんていうのでしょう、
レコード好きが興じて、思い切って良いスタジオをレンタルして、
一生懸命いろんな楽器を演奏して作ったという、
孤独な画家のようなその制作スタイル。
そうして出来たものが「あぁ、この人は音楽が好きなんだろうなぁ」と思わせる、
ちょっと懐かしい、誰もが笑顔になってしまうようなサウンド。
僕のツボのど真ん中でした。
さて、肝心の新作『KEY CHANGE』を聴いてみました。
少し音がハイファイになったかな?という印象もありましたが、
全体的に、雰囲気は前作と同じです。
CDで聴いているのにアナログ盤を聴いているような気になります。
「進化してない」というと聞こえが悪いですが、この方の場合は違います。
傑作と呼ばれる前作と同じスコアを叩き出すことは、並大抵のことではないはずです。
6年も待った甲斐がありました。
ちなみに今回もファイストやゴンザレスら、仲良しカナダ人アーティストが参加しており、
クレジットを見るとどうやらロサンゼルスのアーティストもサポートで参加したみたいです。
進化が感じられたところと言えば、
パーカッションの音がより前に出てきたこと、
作曲技法がほんの少しだけ技巧的になったことでしょうか。
そうは言っても、そういう難しいことを考えずに聴くのが本作の醍醐味だとは思いますが。
また、国内CD盤に付いているボーナスCDが結構良いです!
こちらにはリミックス曲や未発表曲が含まれており、
少しだけノリが良いトラックが揃っています。
小粋なバーやクラブのラウンジでDJが流してそうな、
タイトなグルーブと洒落たボーカルを楽しむことができます。
これは嬉しい誤算でした。
この1枚でも立派なアルバムとして成立するのではないでしょうか。
本当はこの作品はレコードで聴きたいところですが、
CD盤にこのボーナスがあるとなると、
甲乙つけがたいところです。
§
聴きながら散歩するだけで、
いつもの街が海外のダウンタウンのように感じられるモッキーさんのCD。
水戸芸術館ミュージアム・ショップ コントルポアンで絶賛販売中です!