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2015-12-03 更新
クリスチャン・ツィメルマン氏の記者会見レポートin MITO

クリスチャン・ツィメルマン氏が、日本ツアーのスケジュールの合間を縫って、今回のオール・シューベルト・プログラムのコンセプトをお伝えしたいと、水戸芸術館に来館され、記者会見を開きました。そのエッセンスをレポートします。
水戸で記者会見を開くことについて
このたび水戸を訪れることができて、とても嬉しく思っています。最後にこちらの方面に来たのは、東日本大震災の時でした。今日は、ここまで東京から自動車で来たのですが、その車中で、震災から復興されて、皆さまが生活を立てなおしていらっしゃる様子を拝見できて、本当にうれしく思っています。東日本大震災の時は、私も東京におりました。その後も5週間、日本に滞在しましたので、福島での出来事などもよく知っております。その後、東北にも行きました。その時の日本の皆様の対応をつぶさに見させていただき、日本人に対する私の尊敬の念は、ますます高くなりました。
今回の演奏曲について
1970年代初めに〈7つの軽快な変奏曲〉の楽譜が再発見され、私は1971年に初演させてもらっているので、この作品にとても親しみを感じております。最初に楽譜が見つかったのは、エッシェンバッハの故郷でもあるポーランドのブレスラウという、古くから音楽の伝統のある街で、かの地では有名な音楽家達を次々に招いて、色々なコンサートが開かれてきました。そして、シューベルト(当時13歳)がお父さんに連れられてそこにやって来たわけです。このような若い才能が来ると、当地の出版社が譜面を印刷して紹介するという習わしがあり、その印刷物にこの〈変奏曲〉が掲載されています。この事から、〈変奏曲〉がシューベルト作品であることの信憑性は、かなり高いのではないかと思っています。
今回は、最後の3連作のソナタの中でも特に私の好きなイ長調〈第20番〉と変ロ長調〈第21番〉のソナタを取り上げ、そして最初にこの〈変奏曲〉をもってくることで、シューベルトの初期と最晩年の作品をトータルにご紹介できるプログラムにしようと思いました。〈変奏曲〉から最後のソナタ作品まで20年足らずしか隔たっていないのですが、この短期間のうちにシューベルトがどれほど成長したかということが窺い知れることと思います。
この〈変奏曲〉をプログラムに入れたもう1つの理由なのですが、ご承知のようにシューベルトはハイドンとベートーヴェンをたいへん尊敬していました。シューベルトは、亡くなる7週間前位(1828年)にハイドンの墓に花を捧げるために、片道70kmの道のりを徒歩で、アイゼンシュタットに赴いています。それだけハイドンのことを尊敬していました。この〈変奏曲〉は若き日のハイドンを彷彿とさせるような喜びに満ちた、そして古典的な様式を持つ作品なので、ある意味、ハイドンへのオマージュとして、今回プログラムに入れました。(編集者注:一方、ソナタ〈第20番〉は、作曲された前年に逝去したベートーヴェンへのオマージュと評されている作品です。)
2015年11月27日
水戸芸術館にて
協力:ジャパン・アーツ
クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル
1/11[月・祝]16:30開場・17:00開演
会場:水戸芸術館コンサートホールATM
全席指定 A席8,500円・B席7,000円/ユース(25歳以下)3,000円
曲目
シューベルト
7つの軽快な変奏曲 ト長調
ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D959
ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960