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2021-03-03 更新

オルガン・レクチャーコンサート Vol.2 関連コラムこうちゃんの藝大オルガン潜入ファイル

 
こんにちは、私は2020年10月の「オルガン・レクチャーコンサート Vol.1『オルガン潜入捜査』」で、コーディネーターの室住素子さんからオルガン潜入捜査員に任命されたこうちゃんです。

 2020年某日、「オルガン・レクチャーコンサート Vol.2」に講師としてお迎えする東京藝術大学オルガン科の廣江理枝教授と打合せをするため、室住さんと一緒に藝大におじゃましました。

 その時、廣江教授がオルガン科の校舎内にあるオルガンたちを見せてくださいました。大きなものから小さなものまで様々な形状、異なるスタイルや個性持つ複数のオルガンを一度に見ることができ、「オルガンは1つとして同じものはない」ということがよくわかりました。皆さんにもオルガンの多様性をお伝えしたいと思い、ここでご報告いたします。



Johannes Klais(ヨハネス・クライス社製) ドイツ
 1966年に設置されたこのオルガンは、校舎内にあるオルガンの中で唯一三段の鍵盤と、音量を調節することができるスウェル・ペダルが備わっています。音色を変えるストップは30あり、主にロマン派以降の作品の研究に活用されているそうです。
 


Bernard Aubertin(ベルナール・オーベルタン社製) フランス 
 伝統的な素材の使用や製造方法にこだわりをもつベルナール・オーベルタン社製(1993年設置)。フランス古典期の作品を中心に、バロック時代のレパートリーの研究に使用するとのこと。20ストップを持つこのオルガンは日本国内でも1,2を争う良質で繊細な鍵盤アクションを持つ楽器であり、美しいタッチの習得に役立っているそうです。
 

 一番下の鍵盤を奥にスライドすることで、中段の鍵盤も連動し、2つの鍵盤の音を同時に出すことができます。これを「カプラー」といって、他のオルガンでは内部のシステムでカプラーをしますが、このオルガンは古い時代のオルガンにならって鍵盤のスライドによるカプラーを採用しています。 

 



Garnier(ガルニエ社製) フランス ポジティフオルガン
  室住さんが弾いているのは、移動しやすいポジティフオルガン。身体は小さくてもパワフルな音がでます。
 


Walcker (ヴァルカー社製) ドイツ
 現在藝大の校舎にあるオルガンの中で最も早い1958年に設置されたこのオルガンは2段鍵盤、11ストップを有します。廣江教授も室住さんも、学生の頃このオルガンで練習していたそうですよ。
 
 
小型のオルガンが3台設置されているお部屋もありました。


手前 Flentrop (フレントロップ社製) オランダ
中央 草刈オルガン工房製 山梨県 
奥  Mason & Hamlin(メーソン&ハムリン社製) アメリカ
   ペダル付きリードオルガン



 フレントロップオルガンのストップは他のオルガンとは違って、鍵盤脇のノブ状のものを引くのではなく、本体脇についたレバーを引くことで音色を変えます。



 草刈オルガンは比較的新しく、2004年に東京藝術大学音楽学部付属高校に設置され、 2017年に大学に移動されました。



 ペダル付きのリードオルガンは、1899年(明治32年)に東京音楽学校(東京藝術大学の前身)が購入しました。アメリカのメーソン&ハムリン社はこのオルガンに、作曲家でオルガニストでもあったフランツ・リストの名を冠し、「リスト・オルガン」という商標で販売していたそうです。使われていない時期も長かったそうですが、2年半にわたる修復を経て、2018年には藝大のコンサートにもお目見えしました。
 

この他、藝大奏楽堂に76ストップ、5568本のパイプを有するガルニエ社製の大オルガンがあります。


Garnier (ガルニエ社製)フランス
東京藝術大学奏楽堂に設置




 全く異なる外見、違う音色のオルガンを一度にこれだけ見せていただいたことで、オルガンの多様性と奥深さを改めて感じた日でした。潜入の帰り道、上野公園内に移築された旧奏楽堂の前を通りました。ここには日本最古のコンサート用オルガンもあるそうで、いつの日か潜入してやる!と夕陽に誓いました。

みなさんも、各地のホールや教会でオルガンを見かけた際はよく観察し、聴き比べしてみてくださいね!

(オルガン潜入捜査員 こうちゃん)