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2016-01-23 更新
河村尚子メッセージ「プロジェクト第3回に寄せて」

新年明けましておめでとうございます。2016年もどうぞ宜しくお願い致します!
2月11日に迎えるショパン・プロジェクト第3回。約1年ぶりの水戸公演となり、すっかりお馴染みとなった水戸芸術館コンサートホールATM。今までは時間に余裕がありませんでしたが、今回こそ水戸という街を少しでも散策してみたいものです。
今回は「マヨルカ島からノアンへ」と題し、この時期(編集註:ショパンとジョルジュ・サンドがマヨルカ島に渡った1838年から、フランス中部ノアンにあるサンド邸に移る1839年頃まで)にショパンが手がけた作品にスポットライトを当てます。この頃のショパンは体調が優れなかったにも拘らず、作曲に関して大変意欲的、挑戦的で、あらゆる作品で画期的なユニークな実験をしています。例えば〈葬送行進曲〉を含むソナタ第2番。本来ならば最終楽章は華やかに効果的に終わるはずなのに、ユニゾン(オクターブ等の音程に拡がる同じ音を両手で弾くこと)という和声が聞き取り難い形を楽章を通して頑固に使用し、弱音で地味に保つ指示をすることで、反対に不気味な効果を得ています。その他、今回のメインとなる〈24の前奏曲〉では、16小節しかない短い曲、〈雨だれ〉のように景色を描写した曲、初心者でも演奏できるような簡単な曲からエチュードのように難易度の高い曲、又、それぞれ性格が異なる作品が次から次へと出てくることから、どこかショパンの日記を読むようでもあります。心が弾む日、劇的な変化があった日、いつもと変わらない平和な日。音楽を聴いて頂き、より一層情緒や情景を感じ、想像して頂ければ嬉しいです!
河村尚子(ピアニスト)