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2016-09-12 更新

二人の名手による珠玉のバロック・プログラム【その1】~イザベル・ファウスト(ヴァイオリン)&クリスティアン・ベザイデンホウト(チェンバロ)

雑誌『音楽の友』5月号の特集「絶対に聴くべきアーティスト」で、ドイツのヴァイオリニスト、イザベル・ファウストが堂々の第1位に選ばれました。「私のゴールはいつもただ単に美しい音楽を奏でるのみならず、実際に物語を伝えることです」と語るファウストの、知的探究心に溢れた演奏が、多くの聴衆の支持を得ている証拠でしょう。

“考える”ヴァイオリニスト、イザベル・ファウストの原点を探っていくと、父のすすめにより5歳で始めたヴァイオリンで、小さい頃から兄弟や友達とカルテットを組んでいたこと、しかも第2ヴァイオリンを受け持っていたという経歴が目にとまります。カルテットの内声を担当することで、旋律線やベース・ラインとどのようなバランスで弾くべきか、つねに考えながら演奏していたことでしょう。

元来、バリバリの“ソリスト・タイプ”ではないことも、ファウストに考える時間と余裕を与えました。15歳の時、カルテットの第2ヴァイオリンをやめ、腕試しのつもりで受けた第1回レオポルド・モーツァルト・コンクール(1987年)で優勝。これがきっかけで初めてオーケストラと共演、たくさんの刺激を受ける一方、あまり騒がれなかったことを幸いと次のように語っています。「おかげで時間をかけてレパートリーを拡げ、室内楽も引き続き楽しみつつ学業をしっかり修めることができました」。

その後、ファウストがじわじわと評価され、世界的なオーケストラ、指揮者から次々とオファーを受けるようになったことは、彼女のプロフィールに所狭しと綴られています。特に、イタリアの名指揮者、故クラウディオ・アバドからの信頼は厚く、彼の指揮するルツェルン祝祭管弦楽団やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と共演を重ねました。

レコーディングも活発に行っていますが、現代最高クラスのテクニックを誇るヴァイオリニストにしては、華やかな名人芸が発揮されるようなレパートリーにほとんど関心を示さないのもファウストらしいところです。彼女のレパートリーの中心は、バッハ、ベートーヴェン、ブラームスといったドイツもの。“ソロ”でスポットライトを浴びるより、“アンサンブル”で共演者と音楽を分かち合うことを好むファウストの姿勢も窺えます。

(vivo 10月号より)