チケット

【重要なお知らせ】

  • 音楽

2016-09-19 更新

水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン 吹奏楽でオーケストラの響きを

茨城県と水戸芸術館の連携で開催している「高校生のための水戸室内管弦楽団(MCO)メンバーによる公開レッスン&ミニコンサート」。
1010日に、偶然ですが、通算10回目のレッスンを行うことになりました。
受講生は水戸第三高等学校吹奏楽部の皆さん。総勢65名という大編成吹奏楽団です。

今回のレッスンではイタリアの作曲家オットリーノ・レスピーギの作品を特集します。
レスピーギはクラシック・ファンだけでなく、吹奏楽ファンにも親しまれている作曲家。代表作の交響詩《ローマの松》や《ローマの祭り》などは、オーケストラ原曲よりも吹奏楽版の方が、演奏される機会が多いのではないでしょうか。
今回は、とりわけ人気の高い《ローマの松》の終曲〈アッピア街道の松〉を取り上げ、また、レスピーギが弦楽合奏のために書いた《リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲》の吹奏楽編曲版から〈シチリアーナ〉と〈パッサカリア〉も併せて取り上げます。

講師を務めるのは、元読売日本交響楽団首席奏者の四戸世紀さん(クラリネット)とMCO楽団員代表の猶井正幸さん(ホルン)、NHK交響楽団団員で今年3月のMCO第95回定期演奏会にご出演された竹島悟史さん(打楽器)。さらに今回は、原曲の弦楽器のフレージングや音のニュアンスを理解していただこうと、NHK交響楽団団員でMCOにも数多くご参加くださっている猶井悠樹さん(ヴァイオリン)にも加わっていただきます。
弦楽器についての理解を深めることで、吹奏楽のサウンドがどのように変化するのか、ぜひご注目ください。
そして公開レッスンの後には、恒例の「講師によるミニコンサート」もございます(ミニコンサートの曲目も、もうすぐお知らせできそうです!)。こちらもどうぞお楽しみに。

『vivo』2016年10月号より。一部加筆)


講習曲の解説を掲載します。

レスピーギ(森田一浩 編曲):
《リュートのための古風な舞曲とアリア》第3組曲 より
〈シチリアーナ〉、〈パッサカリア〉
レスピーギ(デリア、ライゼン 編曲):
交響詩《ローマの松》 より 〈アッピア街道の松〉

イタリアの作曲家オットリーノ・レスピーギ(1879~1936)は、管弦楽法を駆使した華麗なオーケストラ作品で知られていますが、イタリアの古い音楽に多大な関心を寄せていた点も、彼の芸術を語るうえで忘れてはなりません。彼は1913年にサンタ・チェチリア音楽学校の教授に就任して以来、図書館で古い時代の音楽を調べることを楽しみにしていたと伝えられています。15、16世紀のリュートやギターの音楽をオーケストラに編曲した《リュートのための古風な舞曲とアリア》は、レスピーギの古い時代への憧れが作品に結実した例と言えるでしょう。その第3組曲(1931)は弦楽オーケストラまたは弦楽四重奏のために書かれていますが、森田一浩による吹奏楽版では、和音に厚みをつけ、原曲にはない打楽器パートも加えて、弦楽合奏とは一味違った響きに仕上がっています。4つの曲からなる第3組曲のなかで3曲目にあたる〈シチリアーナ〉(シチリア風の舞曲の意)は、もとは作者不詳のリュート曲でしたが、美しい旋律が有名です。旋律は2回繰り返され、最後にカノンが添えられて、静かな余韻を残します。組曲の最後にあたる〈パッサカリア〉は、短い定旋律(ここでは4小節の旋律)の繰り返しを土台にして音楽を展開する一種の変奏曲。原曲は17世紀後半のギター作品です。冒頭で主題が荘重に提示され、徐々に活力を増して快速なテンポに達したのち、再び静まり、最後にパッサカリアの短い主題をゆっくりと奏でて終わります。

レスピーギが抱いた古い時代への憧憬は、《リュートのための古風な舞曲とアリア》のような編曲作品にとどまらず、彼の創作活動に広く反映されています。彼の代表作である「ローマ三部作」(交響詩《ローマの噴水》、《ローマの松》、《ローマの祭》)には、長調や短調の音階ではない中世、ルネサンス期の教会旋法が取り入れられており、グレゴリオ聖歌の引用も見られます。第2作《ローマの松》(1924)のフィナーレとなる第4曲〈アッピア街道の松〉は、古代ローマ帝国が敷設した街道の風景から想を得て作曲されました。霧の中から古代ローマの軍隊がだんだんと近づいてくるように、勇壮な行進曲の旋律が楽器間で受け渡されながら徐々に輪郭をはっきりとさせ、勝利の凱歌となって、在りし日のローマの栄光を讃えます。

水戸芸術館音楽部門 篠田大基