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2019-06-24 更新
茨城新聞「ATM便り」今昔雅楽集 二、舞の絵巻
茨城新聞で水戸芸術館音楽部門が月1本のペースで連載しているコーナー「ATM便り」。6月20日掲載の記事を転載します。7月6日(月・祝)に開催する「今昔雅楽集 二、舞の絵巻」に因んだ読み物です。公演は水戸芸術館コンサートホールATMで、7月6日(月・祝)16:45プレトーク、17:00開演(終演予定19:00)。料金は一般3,500円、U-25(25歳以下)1,000円です。詳しくはこちらをご覧ください。おかげさまでお席が残り少なくなり、補助席の販売になっております。ご予約はお早めにどうぞ。
古代と現代の音楽調和

この序文は、九州の大宰府に赴任した大伴旅人(おおとものたびと)が彼の地で天平2年(730年)に催した観梅の宴の様子を伝えたもの。当時の大宰府は大陸との折衝の拠点で、異国の文物が通い来る地でした。大伴旅人らが歌に詠んだ梅も、元来は中国原産で、まさに奈良時代に日本にもたらされた植物でした。彼らにとって梅は、エキゾチックな花だったのです。
飛鳥・奈良の時代には、大陸から様々な物が日本に伝来しました。雅楽もその一つです。平安時代以降、雅楽は日本人の好みに合わせて国風化が進みますが、それでも、7月6日の公演「今昔雅楽集 二」で演じられる雅楽の古典〈蘭陵王(らんりょうおう)〉や〈落蹲(らくそん)〉の舞装束や仮面の意匠は、大陸からの“風”を感じさせてくれます。

今回の公演では雅楽の古典だけでなく、伎楽の復元演奏もお贈りします。さらに続けて、現代の雅楽作品である伊左治直(いさじ すなお)作曲〈紫御殿物語・鳥瞰絵巻〉をお聴きいただくと、古代の音楽と現代の音楽が不思議に調和することに、きっと驚かれることと思います。
ところで「紫御殿」とは、いかにも日本風の言葉ですが、じつは中米原産の花の名前です。私たちが熱帯の花を賞でるときのように、万葉の人々は梅の花に、あるいは雅楽や伎楽に、異国の香りを嗅いで楽しんだはずです。
(水戸芸術館音楽部門学芸員・篠田大基)