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2015-05-12 更新
【ATM便り】水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン

茨城新聞で毎月1回掲載していただいている「ATM便り」。5月11日付の記事は、5月16日(土)に開催する「高校生のための水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン」に因んだ話題です。
今回のレッスンの講習曲は、バッハの〈シャコンヌ〉の吹奏楽版です。それにしても、この曲、本当に沢山の編曲がありますね。
ATM便り 2015年5月11日号
バッハ 「多彩」に編曲
今回の「高校生のための水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン」では、講習曲にバッハの〈シャコンヌ〉を取り上げます。〈シャコンヌ〉と題された曲は数多くありますが、単に〈シャコンヌ〉と言えば、まずバッハのこの曲が連想される、というほど有名な作品です。今回演奏されるのはその吹奏楽編曲版ですが、原曲は〈無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番〉のなかの1曲。つまり、ヴァイオリン奏者が伴奏なしで、一人で演奏する曲です。
これは、実は特異な作品なのです。「シャコンヌ」は本来、決まった和声進行や旋律型を低音部に置いて、その繰り返しの上で高音部が旋律を奏でる音楽です。しかしバッハは旋律と伴奏の両方をたった1丁のヴァイオリンのなかに凝縮してしまいました。これがバッハのすごさです。
「それでも伴奏がほしい」と考えた人もいました。19世紀にバッハの再評価に尽力したメンデルスゾーンやシューマンは、〈シャコンヌ〉のためのピアノ伴奏を作っています。伴奏なしで成立する曲に伴奏を付けるのは、蛇足とも言えますが、水墨画のような無伴奏の世界に、後世の作曲家たちがどんな色彩を見出したのか、というように見方を変えてみると、なかなか興味深いものがあります。
この他にも〈シャコンヌ〉は様々に編曲されています。ブゾーニやブラームスはピアノ独奏用に編曲しました。名指揮者で編曲家のストコフスキーは壮麗な管弦楽曲に仕立てましたし、小澤征爾氏をはじめとする多くの日本人音楽家を育てた斎藤秀雄氏も素晴らしい管弦楽編曲を残しています。
今回の公開レッスンで高校生たちが演奏する吹奏楽版〈シャコンヌ〉は、吹奏楽に熟達した作曲家・森田一浩氏による編曲です。大編成での演奏を前提に作られているだけに使用される楽器の種類は豊富で、多彩な音色が鮮やかな印象を与えます。今回は、その豊かな音色を味わっていただけるだけでなく、レッスンを通して色彩感が変化してゆく過程もご覧いただけます。万華鏡をのぞきこむようなつもりで、〈シャコンヌ〉の響きをどうぞお楽しみください。
(水戸芸術館音楽部門学芸員・篠田大基)
今週末の水戸室内管弦楽団第93回定期演奏会はすでに完売しておりますが、16日に開催する「公開レッスン」は入場無料でお聴きいただけます(要整理券)。
しかも高校生のレッスンだけでなく、講師を務める水戸室内管弦楽団の管楽器奏者によるミニコンサートもございます。
こちらもどうぞお楽しみに!