チケット

【重要なお知らせ】

  • 音楽

2015-11-23 更新

クリスマス・プレゼント・コンサート 音楽とともに、この1年の締めくくり

年の瀬が近づいてきました。
12月の水戸芸術館のさまざまなイベントのなかで、2015年の最後を飾るコンサートが、12月23日(水・祝)の「クリスマス・プレゼント・コンサート」です。企画と司会は、水戸市出身で日本を代表する作曲家の一人、池辺晋一郎さん。テレビでもおなじみの軽妙なトークとともに、ジャンルを超えたヴァラエティ豊かな音楽をお贈りします。
今年のコンサートの4つのステージを順にご紹介しましょう。

1 幕開けにシェイクスピアの音楽を

『ハムレット』、『ロメオとジュリエット』、『夏の夜の夢』……あまたの傑作戯曲を残した劇作家ウィリアム・シェイクスピア(1564~1616)は、昨年が生誕450年、来年は没後400年にあたります。
水戸芸術館では今年2月にACM劇場で、シェイクスピアの『十二夜』を上演しましたが、これをご覧になった方は、この劇の最後が、遠島立夫(劇団ACM)扮する“道化のフェステ”の歌う歌で終わったことをご記憶かもしれません。日本語で歌われましたが、じつはあの旋律は、少なくとも18世紀にまでさかのぼり、しばしばシェイクスピア時代(音楽史で言うルネサンス末期からバロック初期)の演奏様式で歌われている古い歌なのです。
シェイクスピアは、劇の登場人物が歌う「劇中歌」を、演劇のなかに効果的に用いました。ですから、シェイクスピア演劇は、音楽の宝庫と言っても過言ではありません。

そんな劇中歌の数々を、今回のコンサートの幕開けにお贈りします。
出演は、日本の古楽界を代表するメゾソプラノ歌手の波多野睦美さんと、リュート奏者のつのだたかしさん。
『十二夜』のあの旋律も、英語の原詩で歌われますので、どうぞお楽しみに。

波多野睦美さんとつのだたかしさん 2010年開催「ちょっとお昼にクラシック」より

 

さらに今回は、池辺晋一郎さんがシェイクスピア演劇のために作曲した劇中歌も、池辺さんのピアノ伴奏で、波多野睦美さんによって歌われます。

池辺さんは、「からだ半分は演劇人」と語るほど、演劇と深いかかわりを持ち、これまでに500本近くの演劇の音楽を担当されています。シェイクスピア劇の音楽も数多く手がけており、そのいくつかは〈シェイクスピアの4つの恋唄〉のように、合唱にも編曲されて親しまれています。

シェイクスピア時代に歌われていた劇中歌、そして、同じ詩の日本語訳に池辺さんが曲を付けた劇中歌。その両方を聴き比べると、時代を超えて感動を呼ぶシェイクスピア演劇の普遍的な魅力が感じられることでしょう。

2 ギターは地球の音楽を奏でる

シェイクスピアの音楽のステージの後は、恒例の「プレゼント・コーナー」(座席番号でくじ引きを行う抽選会)を経て、コンサート後半に移ります。

クリスマス・プレゼント・コーナー 2014年公演の様子

 

後半最初のステージに登場するのは、ギタリストの木村大さん(土浦市出身)。クラシック・ギターの表現と可能性を極めようと、クラシックの枠を飛び出して、ロックやポップスに挑む木村さんの熱いプレイは、興奮すること間違いなし!
クラシック・ギターはスペインを中心に発展しましたが、スペインの香り漂うジプシー・キングスの〈インスピレーション〉や、チック・コリアの〈スペイン〉をクラシック・ギターで聴くと、複数のジャンルが地続きでつながるような「ギター音楽」の広がりが感じられることでしょう。
ステージの最後は、木村さんのオリジナル曲〈アース〉(木村さんのCD『HERO』所収)。地球上空へと飛翔してさまざまな土地を飛び回るような、まさに木村さんの音楽観を感じさせる、スケールの大きな組曲です。

3 サクソフォンの詩

続いては、新進気鋭のサクソフォン奏者・上野耕平さん(東海村出身)のステージ。昨年の第6回アドルフ・サックス国際コンクールで第2位に入賞し、デビューCD『アドルフに告ぐ』や、TV『題名のない音楽会』への出演でも話題を呼んでいます。水戸芸術館では、昨年の「茨城の名手・名歌手たち 第24回」に出演。そこでグラズノフの〈サクソフォン協奏曲〉を共演したピアニストの黒岩航紀さん(今年、日本音楽コンクールピアノ部門第1位受賞)とともに、今回、水戸芸術館再登場となります。

上野耕平さんと黒岩航紀さん 2014年「茨城の名手・名歌手たち 第24回」より

 

上野さんが選んだ演奏曲は、まず吹奏楽の分野で有名な作曲家、アルフレッド・リードがサクソフォンのために作曲した〈バラード〉。そして、ソプラノ、アルト、テナーの3本のサクソフォンを駆使して奏でられる、ジョージ・ガーシュウィンの名曲〈ラプソディ・イン・ブルー〉です。今まさに注目を集める若手演奏家2人のアンサンブルに期待が高まります。

4 キャロルの歌声は変わることなく

コンサートの最後は合唱のステージです。合唱が盛んな茨城県のなかでも特にハイレベルな実力を誇る水戸第二高等学校コーラス部。これまで「クリスマス・プレゼント・コンサート」にも、たびたび出演し、ベンジャミン・ブリテン作曲の〈キャロルの祭典〉を代々歌い継いできました。

今回は、コーラス部OG合唱団のひとつ「コール・ヴィステリー」がコンサートに出演。現代イギリスの作曲家ジョン・ラターの作品〈踊りの日(ダンシング・デイ)〉で、コンサートを清らかに締めくくります。

コール・ヴィステリー 2015年の「10周年記念演奏会」より

 

〈踊りの日〉は、いわば〈キャロルの祭典〉へのオマージュ。ブリテンの作品を踏襲して、古いイギリスのクリスマス・キャロルがハープの伴奏で歌われます。ハープは、「クリスマス・プレゼント・コンサート」で水戸第二高等学校コーラス部と共演を重ねている千田悦子さんです。

このように盛り沢山の内容ですが、さらに開場前と終演後には、エントランスホールでミニコンサートも開催します。上野耕平さんやコール・ヴィステリーの皆さんが、大木麻理さんのパイプオルガンと共演しますので、こちらもお聴き逃しなく! 聖夜を華やかに盛り上げる、水戸芸術館の「クリスマス・プレゼント・コンサート」。ご家族で、カップルで、楽しくてあたたかなひとときをお過ごしください。

『vivo』2015年12月号より。一部修正)