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2016-12-04 更新
クリスマス・プレゼント・コンサート2016 おなじみクリスマス・ソングも、クラシックの名曲も、珍しい楽器も、ビートルズも!

水戸芸術館で毎年12月23日に開催している「クリスマス・プレゼント・コンサート」は、開館以来続いている恒例のコンサート。今年も水戸出身で日本を代表する作曲家の池辺晋一郎さんによる企画と司会でお贈りいたします。
今年のコンサートの打ち合わせのなかで、池辺さんから最初にこんな提案がありました。
「クリスマスといえば誰もが知っているような聖歌を、聴き応えのある合唱編曲で演奏できないかな?」
クリスマス・ソングのなかには、何百年も教会で歌われてきた「キャロル」と呼ばれる聖歌でありながら、日本では聖歌と認識されていないくらいにポピュラーになって、多くの人に愛唱される曲が沢山あります。
〈ひいらぎ飾ろう Deck the Hall〉や〈おめでとうクリスマス We Wish You a Merry Christmas〉などは、キャロルのなかでも広く世界中で親しまれている歌でしょう。
今回はこれらの名曲を、キャロルの本場イギリスで長く聖歌隊に関わり続けた合唱音楽の作曲家たち――デイヴィッド・ウィルコックス、ジョン・ラター、ボブ・チルコット――が手掛けた美しい編曲でお聴きいただけます。

水戸第二高等学校コーラス部
「クリスマス・プレゼント・コンサート2013」より
歌うのは、合唱コンクールで優秀な成績を収め、ウィーンやローマなど海外公演も行っている茨城県立水戸第二高等学校コーラス部の皆さん。清澄な歌声はクリスマスの気分を盛り上げてくれることでしょう。
クリスマス・ソングはクリスマスのコンサートに欠かせませんが、水戸芸術館の「クリスマス・プレゼント・コンサート」の特色はそれだけではありません。クラシック界で日本を代表する豪華な出演者たちによる多彩なステージもご好評をいただいています。
今年も素晴らしい演奏家の方々がご出演くださいます!
今回のコンサートにいらっしゃるお客様は、最初にコンサートホールに入ったとき、ステージに置かれている楽器に、きっと目を奪われるはずです。

原田節(オンドマルトノ) photo by Yutaka Hamano
美しい形をしたその楽器は、「オンド・マルトノ」。20世紀前半にフランスの電気技師でチェロ奏者でもあったモーリス・マルトノが発明した電波楽器です。
今回のコンサートは、オンド・マルトノ演奏の第一人者である原田節さんのステージで幕を開けます。
オンド・マルトノは、電気式の楽器ではあっても、シンセサイザーや電子キーボードとは大きく違い、鍵盤を弾いて音を出すだけでなく、鍵盤の手前に張られた弦(リボン)に指を滑らせる奏法があったり、さまざまな音響効果を生み出すスピーカーを使い分けて音の表情を変えたりと、とてもユニークな特徴をもった楽器です。
今回は、バッハのヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタやシューベルトのアルペジオーネ・ソナタのように、現代ではチェロで演奏されることも多い作品を取り上げ、それをオンド・マルトノでお楽しみいただきます。
チェロを弾いていたモーリス・マルトノは、きっと電気を使ってこんな音を奏でたかったのではないか、と想像が膨らむ曲目です。
原田さんと共演してくださるのは、ピアニストの高橋アキさん。水戸芸術館では1995年に池辺さんの企画で開催した「現代音楽を楽しもうX」以来のコラボレーションとなります。

高橋アキ(ピアノ)
「音楽物語 ぞうのババール」公演(2015年9月12日)より
高橋アキさんは昨年9月に水戸芸術館で、落語家の柳家花緑さんの朗読とともにプーランクの〈ぞうのババール〉を上演してくださいました(来年3月に再演の予定ですのでお楽しみに!)。
このときは、朗読とピアノ演奏を組み合わせたコンサートでしたが、今回の「クリスマス・プレゼント・コンサート」では、高橋さんはソロ演奏もご披露くださることになりました。
まずは今年生誕150年を迎えたサティの人気作〈ジムノペディ 第1番〉と〈ジュ・トゥ・ヴ〉の2曲。
長年にわたってサティを深く探究してきた高橋さんの演奏は、シンプルな旋律線や和音から深遠な世界の広がりが見えてくるようで、感銘を覚えずにはいられません。
続いては、ビートルズのヒット曲が並びます。でも一味もふた味も違ったビートルズなのです。
高橋さんにとって、サティと並ぶライフワークとなっているのが、現代作曲家たちにビートルズ・ナンバーの編曲を委嘱するプロジェクト「ハイパー・ビートルズ」。
今回はこのプロジェクトから生まれた選りすぐりの作品をお贈りします。このコンサートの企画者である池辺さんによる〈ヘイ・ジュード〉の編曲をはじめとして、「あの曲がこんなふうに!?」と驚かされること請け合いです。
さて、「クリスマス・プレゼント・コンサート」で忘れてはいけないのが歌のステージです。
毎年、日本でトップクラスの歌手たちがご出演くださり、お客様のなかにも、歌のステージを楽しみにしていらっしゃる方も多いようです。

砂川涼子(ソプラノ)
今年は日本のオペラ界で人気、実力ともに指折りのソプラノ歌手、砂川涼子さんが、モーツァルトの古典歌曲から〈ユー・レイズ・ミー・アップ〉のようなポピュラー曲、そしてオペラ・アリアの名曲を歌い上げます。
クリスマスの街を舞台にした有名なオペラにプッチーニの《ラ・ボエーム》があります(「クリスマス・プレゼント・コンサート」でも過去に抜粋上演されたことがありました)。
このオペラのヒロインのミミは砂川さんの当たり役で、「理想のミミ」と絶賛を浴びてきました。今回の砂川さんのステージで歌われる《ラ・ボエーム》の有名なアリア〈私の名はミミ〉は、まさに注目の1曲です。
おなじみのクリスマス・ソングやクラシックの名曲から、たとえ知らなくても聴いたらきっと面白いと思っていただける曲まで、さまざまな音楽をお届けする「クリスマス・プレゼント・コンサート」。恒例のプレゼント・コーナーやエントランスホールで行うミニコンサートもございます。聖夜の楽しいひとときを、ぜひ水戸芸術館でお過ごしください。
(『vivo』2016年12月号より)