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2015-12-11 更新

【ATM便り】クリスマス・プレゼント・コンサート2015

茨城新聞で毎月1回掲載していただいている「ATM便り」。11月はお休みしたので、12月は2本掲載となりました。12月10日付の記事は、12月23日(水・祝)に開催する「クリスマス・プレゼント・コンサート2015」に因んだ話題です。
紙面では字数の関係でカットせざるをえなかった部分も含めまして、このブログに掲載させていただきます。
池辺晋一郎さんの企画と司会で毎年ご好評をいただいているこの「クリスマス・プレゼント・コンサート」、おかげさまで残席が少なくなってきております。ご予約はお早目にどうぞ!

 


ATM便り 2015年12月10日号

クリスマス――世界は舞台

 

明日は僕の踊りの日愛しい人はもしかして僕の踊りを見てくれるかな僕の踊りに誘えないかな歌ってよ、愛しい人僕はあなたのために歌ったんだよ (原詩:英語)

これはイギリスに伝わる古い歌で、現代イギリスの作曲家ジョン・ラターによる合唱組曲〈踊りの日〉のなかに収録された1曲。ダンス・パーティーを楽しみにする少年(あるいは青年?)の気持ちが伝わってくるようです。
この歌が、今年の「クリスマス・プレゼント・コンサート」の最後に歌われます。歌うのは、女声合唱団「コール・ヴィステリ―」。合唱コンクールで代々優秀な成績を収めてきた水戸第二高等学校コーラス部のOG合唱団のひとつです。今回は千田悦子さんのハープの伴奏で、明るく軽やかな歌声を、どうぞお楽しみください。

ところでこの歌は、面白いことに、曲が進むにつれて詩から別の意味が浮かんできます。この「僕」は、ただの恋する少年ではありません。詩の続きを読むと、「僕」は「そうして(踊りの日に)汚れなき乙女から生まれ出て」「飼葉桶に寝かされて」……と書かれています。これはイエス・キリストの誕生の逸話そのものです。

つまり、この歌の「僕」の正体は、まだ聖母マリアのお腹のなかにいるイエス・キリストなのです。「踊り」や「歌」はキリストの救済や伝道を、「愛しい人」は人類のことを指しているのでしょう。
それにしても、世界をダンス・パーティーに見立てて、これから生まれる赤ちゃんが「明日は僕の踊りの日」と歌うとは、奇抜な発想の詩です。
「世界は舞台、人はみな役者」というシェイクスピアの名言が連想されます。

「世界は舞台」。
クリスマス・シーズンに色とりどりに飾られた街は、まるで華やかな劇の舞台のようでもあります。この「舞台」の上で、私たちはそれぞれのクリスマスの物語をつむぐことでしょう。皆様の物語の一幕に、水戸芸術館の「クリスマス・プレゼント・コンサート」が加わりましたら幸いです。
今回のコンサートでは、シェイクスピアの演劇にまつわる音楽も、波多野睦美さんの歌と、つのだたかしさんのリュート、このコンサートの企画者である池辺晋一郎さんのピアノでお聴きいただきます。
年明けの2016年は、シェイクスピア没後400年の記念の年となります。

(水戸芸術館音楽部門学芸員・篠田大基)